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「職場でいじめられた女の子を救おうとした」少女2人誘拐男の「正義感」の正体とは?

   17日(2019年11月)から行方が分からなくなっていた大阪市住吉区の小学6年の女児(12)が23日、1週間ぶりに保護された。女児が助けを求めて駆け込んだのは、自宅から400キロも離れた栃木県小山市内の交番だった。

   未成年者誘拐の疑いで逮捕された自称派遣社員、伊藤仁士容疑者(35)の自宅からは、ほかに今年(2019年)6月に茨城県で行方不明になっていた中学3年の少女(15)もいた。

   実は茨城県警の捜査員は、少女が行方不明になった後の7月、伊藤容疑者の自宅を訪ねていた。少女の部屋に伊藤容疑者の携帯電話番号が書かれたメモが残されていたからだ。しかしその時、自宅に少女の姿や所持品はなかった。少女は「警察や自分の家族に見つからないように外出を控えていた」と話しているという。

「もう一人の少女の話し相手になってほしい」と誘い出す

   12歳女児と、伊藤容疑者の接点は何だったのか。2人は今月(11月)10日ごろ、SNSを通じて知り合った。伊藤容疑者は「半年くらい前に来た女の子のしゃべり相手になってほしい」とメッセージを送り、17日、女児と大阪市内の女児の自宅近くの公園で待ち合わせた。その後在来線を乗り継いで小山市まで移動したという。

   伊藤容疑者の自宅で、女児は携帯と靴を取り上げられ、食事は1日に1食、入浴も2日に1度ほどに制限されていたという。女児は伊藤容疑者が寝ている間に逃げだし、靴下で1キロほど離れた交番まで行ったそうだ。

   伊藤容疑者とはどのような人物なのか。20年前から近所に住む人によると、伊藤容疑者は祖母、両親、弟、妹の6人家族だったが、父親は他界し、30代の弟と妹はすでに自宅を離れている。3年ほど前に祖母が老人ホームに入ると、伊藤容疑者は2階建ての一軒家に一人で住み、母親はすぐ近くの平屋建ての家に住むようになった。

   中学時代の伊藤容疑者は、すこぶる評判がいい。成績優秀で強豪の剣道部に所属、模範生徒として表彰されるほど真面目な生徒だった。「誰とでも話せるタイプの人だった」と同級生は話す。しかしその後、第一志望の高校受験に失敗。そのころから家の中に引きこもりがちになっていったようだ。

バイト先「非常にまじめで正社員になってほしかった」

   伊藤容疑者は高校卒業後、様々なアルバイトをして生活をしていた。20代のころ、半年ほど働いていた教習所で上司だった男性は、「勤務態度は非常にまじめで、正社員になってもらいたいと思っていた。でも彼の意向とは違ったのでしょう。残念ながら辞めてしまいました」と当時を振り返る。

   この上司に伊藤容疑者の印象を聞くと、「正義感が強い。いじめられていた女の子を助けようとして、その女の子から『余計なことして』と見られたこともあったようです」と話した。また、日本社会に対し不満を漏らす姿も印象的だったという。「よく本を読み、『だから日本はダメなんだ』と。自分が置かれている現実にギャップがあったのかもしれない」

   中学時代の同級生の母親が9年ほど前に体を壊した時には、お茶やキノコを届けてくれた。「卒業してしばらく会っていないのに、自分の意思で、効能まで調べて持ってきてくれた。そんな優しい子です」と同級生の母親は話す。

   阿部リポーター「容疑者をよく知る人からは、『正義感』という言葉がよく出てきました。正義感というものが、彼の人生の中で脈々と続いていたという感はあります。今回の供述でも、『誘拐しようと思ったわけではない』と言っている。自身が悪いことをしたという認識がないかもしれません」

   司会の加藤浩次「誘拐、さらには監禁の罪には問われるわけですが、自分が良いことしているって感覚になっている可能性があります。ここが一番怖い」