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新型コロナ直撃!暮らし崩壊「収入マイナス」「ローン破産」「5人に1人退学」

   東京都内に住むタクシー運転手の30代男性は、会社が新型コロナウイルス対策で4月(2020年)から休業したため、収入が激減した。月40万円あった歩合制給料の手取りが、4月は社会保険料や住民税を引かれマイナス5672円。12年前に2700万円で買ったマンションのローン毎月8万円の返済が滞り、3か月分の返済猶予を金融機関と交渉して認められた。当面の生活費にも事欠き、地域の社会福祉協議会から20万円の緊急融資を受けてしのぐが、「もう収入は見込めない」という状態だ。

   千葉県のアパレルショップに勤める男性は、手取り20万円台だった収入が減り、自宅を売ることにした。しかし、「コロナウイルスの影響で物件が売れない」と不動産会社にいわれ、1、2年前に1400万円だった価格は1000万円と下がっていた。手放しても借金500万円が残る。

   あとは自己破産しかないのかと思う。不動産会社からは「消費者金融から高利のカネを借りてローンにあてることは絶対にしないで」とアドバイスされた。金融機関に返済の一時猶予や返済期間を延ばして毎月の返済額を減らす相談をするようにというのだ。

給付金10万円が間に合わない

   コロナウイルスは学生も直撃している。学生団体が全国1200人にアンケートしたところ、親からの仕送りやアルバイトの激減で5人に1人が退学を検討するという結果が出た。

   大学4年の狩野慎太朗さん(21)は、両親が共働きで、自分で学費と生活費をまかなってきた。毎月の収入は、貸与の奨学金6万円とアルバイトで12万円、支出は家賃5万円、食費3万円などで12万円かかる。黒字分6万円を学費に充てるが、5月はアルバイト収入がゼロ。父親が働く飲食店は4月から休業したため、親には頼れない。大学からは修学支援制度の活用を勧められたが、両親の年収が380万円を超し対象外と知った。「いますごい不安。しんどい」という。

   国や自治体の支援を待っていては間に合わない事態が増えている。このゴールデンウイーク中の5月2日と3日にNGOや弁護士が開いた電話相談会には、国からの特別定額給付金10万円を待つ声が多く寄せられたが、届くのは5月下旬から6月で、7月という自治体もある。待っていられない人には生活保護で当面しのぐように、主催団体はアドバイスした。

   所持金が「いま300円」「500何十円」と切羽詰まった人もいた。2週間前には数人だったのが、3人に1人に増えたそうだ。猪股正弁護士は「新型コロナウイルスの影響はあらゆる世代、職種に広がっています。追い詰められた人たちに、制度が追いついていない」「生活保護を積極的に使い、窓口で誤った対応をされたら躊躇なく声をあげて」と強調した。

尾木直樹さん「学力格差の固定化」

   学校休校の影響も広がっている。児童・生徒の学習格差やストレスだ。ステイホームの家庭学習というが、学校から教材を受けとっても、「自分が習っていないことを教えられるか」と戸惑う親もいる。

   愛知県北名古屋市の小学5年の主任教諭は、「子どもたちがわかったか、わからなかったかの反応が見えません。理解しているか不安です」と話す。オンライン授業も、4月の文部科学省調査では、同時双方向のオンライン学習を行っている自治体は5%と出た。

   教育評論家の尾木直樹さんは「学力格差の固定化が怖い」と語る。とくに、いまの高校生に「コロナ世代」という言い方がされ始めた。「愛されていないのではという思いから、自分を肯定せず、挑戦心や忍耐力が弱まることが心配です」

   国主導によるオンライン学習の早期実現を尾木さんは訴える。「ニューヨークは10日でやった。新しい学び様式が必要です」というのである。

NHKクローズアップ現代+2020年5月7日放送「新型コロナ どうする?"暮らしの危機"~"長期戦"の中で~」)