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石原さとみ「アンサング・シンデレラ」に薬剤師が賛否激論!「仕事を温かく取り上げてくれて嬉しい!」「出しゃばり過ぎであり得ない」「医師・助産師をバカにしている」

   「薬剤師が主人公の初の医療ドラマ」と銘打った石原さとみ主演の「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」(フジテレビ系)の第1話が16日(2020年7月)に放送され、平均視聴率が10.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好スタートを切った。

   ただ、ヒロインの病院薬剤師・葵みどり(石原さとみ)が、医師や助産師、看護師顔負けの大活躍で患者を救う「スーパー薬剤師」として描かれており、当の薬剤師をはじめとする医療関係者から「薬剤師の仕事を温かく取り上げてくれて嬉しい」と称賛の声が上がる一方、「医師や助産師が無能すぎて、あり得ない展開だ」と怒りの声があがるなど、激しい賛否両論が起こっている。

  • 「アンサング・シンデレラ」(フジテレビの番組ホームページより)
    「アンサング・シンデレラ」(フジテレビの番組ホームページより)
  • 「アンサング・シンデレラ」(フジテレビの番組ホームページより)

「薬剤師が病気を見つけるって...医師と助産師が無能すぎる」

   主人公の葵みどりは、人手不足の萬津(よろづ)総合病院薬剤部に勤務する薬剤師。内科・小児科・産婦人科など複数の診療科を持ち、入院患者、外来患者や急患にも対応する業務に追われている。それでもみどりは調剤室にこもることなく、積極的に病棟へ足を運び、患者と触れ合う。新薬が出れば、必ず味見をする薬オタクの勉強家という熱血薬剤師だ。

   第1話は、みどりと副部長の瀬野(田中圭)が救急搬送された患者への投薬をサポート。そんな中、患者が心肺停止に。みどりが心臓マッサージ(心マ)を手伝う一方、患者が持っていた薬に気付いたのがきっかけで心拍が回復。その様子を新人薬剤師の相原くるみ(西野七瀬)が見ていた。薬剤師が患者を救うことにくるみは感動するが、患者の家族は医師にしか感謝をしない。くるみは、みどりにそのことを聞くと「感謝されたいなら薬剤師は向いてない」と言われる。「アンサング」とは「褒められない」という意味なのだ......という展開だった。

   そんな「褒められない薬剤師」の大活躍を描く展開に、ネット上では現役の薬剤師や医療関係者からたくさんの意見が寄せられた。まずは、薬剤師以外の人々からの批判の声を紹介すると――。

   「いくらなんでも、血圧を測ったりするのはやりすぎ。禁忌とか処方ミスを見つけるのはわかるけど、薬剤師が病気を見つけるって、一番患者と長く接しているのは看護師でしょ。医師も看護師も助産師もみんなボンクラ扱いなの?薬剤師は服薬指導の時くらいしか患者と接しないのに、無理ありすぎ!」

   「医療関係者が見たら腹が立つドラマ。現実離れしすぎ。調剤で忙しい時に患者さんを探し回るとか、普通ありえない。越権行為も甚だしいでしょ。薬剤師がここまでする訳がない、ってか、しちゃいけない!そりゃ医師も怒るわ。こんなデタラメをテレビで流していいわけ?」

   「私助産師ですが、妊娠高血圧でHELLP(ヘルプ」症候群に気付かないとしたら、助産師辞めた方がいいと思います。胃痛がある時点で『ん?』って思って医師に言います。担当が聞く耳を持たないなら、上の医師に言います。頭痛までほっとくのは助産師失格だと思います。妊婦にロキソニン処方になった時点で、薬剤部に取りに行く前に看護師、助産師が気付きますよ。スーパー薬剤師というよりヘボ助産師の回でしたね。あんまり現場を分からず描いて欲しくないなぁ」

「薬剤師の仕事は最初の15分、あとは看護師のドラマになった」

   「ワタクシ一応医療従事者ですが、つまらないというか、ありえない。看護師や医師を馬鹿にしていますし。ラジハやグッドドクターみたいな異色スーパー職員にはもう辟易です。糖尿の方の悩みや、妊婦さんの病気に医師も看護師も気づかなかったというストーリーには違和感ありすぎだし、腹が立ちます。いなくなった患者さんを探して自分の仕事を放りだすかな? 病院薬剤師のお仕事をもっとリサーチするべきでは」

   「石原さとみの薬剤師は出しゃばりすぎ。患者に寄り添うのは医師と看護師のはず。しかも薬剤師が救急で心臓マッサージまでやるのはありえない。患者のプライバシーに入り込みすぎだし、本来の薬剤師の仕事をほったらかしにして、当直中に病院内で患者を探し回るなんて、何かあったら誰が対応するの? 大問題だよ。あと医師にあそこまで意見する薬剤師は確実に排除されます。医師は医療現場の頂点、その次が看護師、そのだいぶ下が薬剤師」

   当の薬剤師からもこんな厳しい意見が。

   「薬剤師なんてドラマになるのかなと期待していましたが、薬剤師の仕事は最初の15分くらいでしたね。無理やり活躍させてドラマにしている感じ。あれはほぼ看護師の役割です。すごく残念なドラマとしか思えないです」

   「期待していただけになんとも残念でした。薬剤師を取り上げるのはやはり難しいのでは?面白くしようとするとああなる。医師、看護師を差し置いてあれはありません。妊婦さんの症状に病名が気づかないなんてありえない。実際のドクター、ナースさんも見ていらしたなら苦笑しかないでしょうね。毎回ああやって病院内を駆けずり回るのかな?見ていてこっちが疲れる」

   「調剤薬局の薬剤師です。薬剤師が主人公ということで、とても楽しみにしていたのですが...。薬剤師の仕事について説明的で薄っぺらな感じがしました。『何で病院薬剤師なの?ドラッグストアや調剤薬局が気楽そうなのに?』というセリフにはガッカリしました。忙しいなら魔術師の手品のぞいている暇があったら調剤しろよ!と思いました。原作の漫画ではもっと薬剤師の仕事が丁寧に描かれていますよ」

「私も病院薬剤師ですが、葵さんのように自信を持って仕事をしたい」

   一方、「面白かった」「よかった」「薬剤師の仕事がしっかり描かれている」と喜ぶ薬剤師も多かった。

    「はーい、薬剤師ですよ。見ましたよ。そうですね。刑事が刑事ドラマを見る、って感じかな。現実は...なんて言ってもね」

   「みんなありえないとか言っているけど、カンファにも立ち会うし、病棟も行くし、時には医師に提案したり相談したり、結構いろんな業務をするよ。そうしない薬剤師もたくさんいるけど。薬剤師の業務を少しでも理解してからこのドラマを観ると、また捉え方が違ってくるかも。それでもあそこまで1人の患者さんには介入しないし、人手不足なのに持ち場を離れたりはしないけどね!笑」

   「薬剤師が救急で心マなんてあり得ないって言う方がいますが、病院では応急に関する講習を受け、資格を取得している薬剤師含め医療従事者はいます。医師に薬を提案?という点に疑問を持つ方がいますが、薬の知識に関しては薬剤師の方が詳しい場合も多いです。薬剤師が患者さんにとって最後の砦というのは、患者さんが間違った薬を飲んでしまわないように最終確認をするのが薬剤師だからです。なので、薬剤師はしっかりと医師の処方に間違いがないか注意しながら業務をしています。よく誰でも出来る楽な仕事だなんて言われていますが、中々シンドイ仕事ですよ。」

   「現役病院薬剤師です。酷評されまくっているアンサング・シンデレラを見ました。葵さんがジェットコースターばりに動き、薬剤部の他スタッフの出る幕なく、ドクターと同等くらいに業務をこなしていく様は小気味よく、うらやましい限りでした。異次元ながら、ああいう薬剤師もいいジャン! 救急車が来ると薬剤師が行くことがあり、心マを手伝うシーンはありだと思います。心電図も読みたいし、自分も葵さんみたいに色んなことを知り、自信を持って仕事の幅を広げていきたい。突っ込みたいところは多々ありますが、せっかく薬剤師の主人公のドラマなので力を抜いて温かく見守って、楽しみましょう」

「大学病院の実態をついた、あるあるドラマだ。今後が楽しみ」

   「あるあるドラマです。大学病院現役薬剤師です。医師が誤って(名前が似ている)筋弛緩剤・毒薬(手術に使用、誤って使えば死亡)を処方され、誤りに気が付いた薬剤師が疑義紹介をかけ、STOPした事例など多々あります。そのために『リスク管理』『チーム医療』の考え方があります。また病棟薬剤師は確かに処方提案もするし、患者に寄り添っています。医師から信頼されている場合も多々ありますよ。私も30年の勤務の間、患者さんからも頼りにされ嬉しかったですね。最初の描かれ方としてはセンセーショナルかもしれませんが、最後は病院として理想的なチーム医療の方向に向かっていくのだと思います。中々現実をついたドラマと思いました」(テレビウォッチ編集部)