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世界中で広まる「コロナデマ」87カ国で2000種類以上のデマが拡散中

   千葉県銚子市の銚子漁港近くの老舗居酒屋「大衆酒場ドリーム」の自慢は新鮮な魚料理。しかしコロナ禍の現在、観光客が大勢来ると店内が密になるため、土日にはメニューを減らして営業している。

   感染防止を常に心がけ、7月に銚子市内で3カ月ぶりに新型コロナ感染者が出た際には、大事をとって休業した。ところが、営業を自粛したのがドリームだけだったため、感染者が出たのがドリームの従業員だったというデマが広がった。

   店の責任者は「良かれと思って自粛したのに、うちの従業員から陽性者が出たというデマが広がった」と話す。

良かれと思って自粛したら、従業員が感染とデマ

   銚子市が発表した感染者情報では、30代の女性アルバイトが感染というものだったが、それに該当する従業員はいない。店ではSNSを通じてデマを否定した。しかし、その直後、今度はSNSで「コロナの女の子はドリームに飲みに行ったそうです」という新たなデマが広がっていった。店は「悪意がある。特に2回目のデマはショックでした」と話す。再びSNSでデマを否定したが、「口コミで広がっていくのが怖いと思った。デマを罰するような条例を作り、制限してほしい」と店はコメントした。

   海外でもコロナをめぐるデマは拡散している。イランで広まったデマは、高濃度アルコールの接種でウイルスを予防できるというもので、約800人が死亡、約5800人が病院に搬送された。犠牲者の多くがデマを信じてメタノールなどを飲んでいた。

   このようなデマが広まることを「インフォデミック」という。インフォメーション(情報)とエピデミック(感染症の急速な流行)を合わせた造語だ。世界の研究機関が分析したところ、世界87カ国・地域で2311種類のデマがSNSなどで広まったという。

   新潟青陵大学大学院の碓井真史教授によると「感染症が流行すると人は怖い情報と希望になる情報を求め、自分が欲しいと思う情報を信じてしまう傾向がある」という。

   社会学者の古市憲寿「デマを広める人は愚かだとは思わない。なぜなら、何が正しい情報なのか個人では判断できないから。メディアも説明を端折り、専門家に言わせているほど。10年後には『なんでコロナなんかを怖がっていたのか』なんていうことになる可能性だってある」

   教育評論家の尾木直樹「社会的な不安があるとデマが増える。熊本地震でもライオンが檻から逃げたというデマが広まった。ツイッター時代の宿命かもしれない。スマホリテラシーを進め、同時にデマの取り締まりもする両面作戦が必要」