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新型コロナ感染後の「後遺症」が深刻だ。倦怠感や脱毛、微熱、嗅覚・味覚障害...120日以上も。重症化や長期化の恐れに、実態把握が急がれる

   新型コロナウイルス感染後に陰性となり「治った」と思ったら、後遺症が長期にわたって続く可能性があることがわかってきた。感染者が9万人を超えるなか、コロナ治療後の暮らしをどう支えるのか、を考えた。

   「コロナ後遺症」に苦しむ声がいま、次々とSNSに投稿されている。「また熱が。味覚嗅覚まったくなし。わたし退院したよね」「陰性が出てからも症状がまったく治らず。頭痛、倦怠感、湿疹といった症状が続いています。20歳で持病もないのに」「軽い息苦しさと鼻腔の鈍痛がしつこい」。

   東京・渋谷区の平畑クリニックは、こうした後遺症に悩む患者を積極的に受け入れてきた。この半年で237人に上る。9月に感染が確認された30代男性は、「(退院して)外出するようになって、少し歩いただけでだるさを感じたり、熱が出たりもした」。平畑光一医師は、患者の中には、寝たきりになったり、夜も眠れなかったり、深刻なケースもあるという。「ものすごくつらい思い、想像を絶するつらさを抱えている」。後遺症が長期に及ぶ人も。今年春に感染した40代男性は、40度近い熱とせきがあり1カ月余り入院した。その後回復し陰性も確認、職場に復帰した。ところがその後、微熱や呼吸の苦しさが。半年以上も続いている。やむを得ず休職。いまは1日のほとんどを寝て過ごしている。

  • 後遺症が長期化する場合も(『NHKクローズアップ現代+』公式サイトより)
    後遺症が長期化する場合も(『NHKクローズアップ現代+』公式サイトより)
  • 後遺症が長期化する場合も(『NHKクローズアップ現代+』公式サイトより)

第1波の時にPCR検査を受けられなかった人が後遺症に悩んでいる

   国立国際医療研究センターは今月、後遺症に関して63人に聞き取りした調査結果をまとめた。もっとも多かったのは息切れ(11.1%)。これに嗅覚の異常(9.7%)、倦怠感(9.5%)が続く。こうした症状が120日以上続くことも分かってきた。厚生労働省も後遺症の実態について8月から3月末まで研究、どんな人に後遺症が出やすいか、調べることにしている。

   平畑クリニックではさらに、「今年の春にPCR検査を受けられなかった」(後遺症)患者が相次いだ。患者の1人は「一番ジレンマに感じるのは、検査が陽性だったら治療もしてくれるけど、陽性が出ていない。ずっと時が止まっていて、夏とか全然生きていた覚えがなくて、いつまで続くんだろう」。平畑医師は、後遺症は予想以上に広がっているのではと懸念している。「37度5分以上の熱が4日以上続かないとPCR検査が受けられない時期があって、まじめに守った方々が、その後、後遺症で苦しむことになっている。これを放置するのはかなりよくないことだと思う。非常にそういう方が多い」。孤立を深めた人も多い。

未知のウィルスに政府・自治体も手探り状態

   最新の研究によると、後遺症の症状としては、倦怠感や脱毛、微熱、肺の障害、せき、たん、手足のしびれがある。このほか、聴覚異常や嗅覚・味覚障害、うつ不安、全身の筋力低下、とくに重症者には計算・記憶など脳の機能低下も見られるという。自治医科大学の讃井將満氏は、「はっきりした原因が特定されていない部分があるが、肺の炎症が残っていたり、血栓症が手足のしびれなどに関係するのでは、とも考えられる」という。さらに、「長期化のおそれがあり、少なくとも2年は経過を見る必要がある」という。

   PCR検査が受けられなかった人の後遺症について、ニッセイ基礎研究所の三原岳・主任研究員は、「未知のウイルスなので、政府も自治体も手探りでやってきているのが実態だ。後遺症についても、不確実な意思決定を強いられている点で難しい問題だ。一方で、放置もできない。データもエビデンス(証拠)も少ないなかでどう政策を作れば良いのか。実態把握が急がれる」という。

退院後は医療費自己負担、休職や退職も...経済的な不安は深刻だ

   後遺症が患者に及ぼす経済不安も深刻化している。

   2カ月前に退院した50代の会社員は、今も酸素吸入器を手放せない。感染が確認された4月から休職している。いつ仕事に復帰できるのか。医療費も重くのしかかる。指定感染症は入院費が公費負担だが、入院までと退院後は自己負担が発生する。生活を支えているのは給料の3分の2を補償される「傷病手当金」だ。受けられるのはあと1年余り。大学生の娘は退学も検討した。

   国は傷病手当金の支給を国民健康保険の対象者にも拡大したが、支援がなお届かない人もいる。フリーカメラマンのAさんは、7月に広告会社と業務委託契約した直後に感染がわかった。退院した後も、倦怠感や指が震える症状に悩んでいる。入院中に契約を打ち切られたが、被用者でなかったため傷病手当金は受けられなかった。別の仕事を探すことも考えているが、指の震えが治る見通しが立たないうちは、就職活動に踏み切ることができない。

   深刻化する生活不安にどう対応するのか。三原・研究員は「働き方の多様化に合わせて、そういった支援も広げる必要があったが、そうなっていないことが一気に顕在化した。一部制度が改正されて部分的な手当は広がったが、なお給付が少ない実態がある」という。

   未知のウイルス!その後遺症に対する、医療や社会保障の制度対応を急がなくてはならない。

NHKクローズアップ現代+(2020年10月27日放送「後遺症が苦しい...新型コロナ "治療後"の悩み」)