J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

菅義偉は疲労の極に達している。主な要因はコロナ対策と経済回復を同時にやろうとする菅を忖度しない尾身茂分科会会長だ。官邸スタッフは「政府の組織なのだからこっちの意向に沿って発言しろ、と。ところが尾身さんは無視して危機を訴える。総理は怒っていますが、下手に圧力をかければ学術会議の二の舞になるのでイライラが募っている」という

   コロナ対策と経済対策、どちらを優先すべきかで菅政権が揺れ、文春と新潮も見解が分かれている。文春は、菅がGoToに固執し過ぎて、コロナ対策がおざなりになっていると批判する。同誌によれば、11月23日、東京・赤坂にある「国際医療福祉大学赤坂キャンパス」のビルに、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら中枢メンバーが次々に入っていったという。

   そこで出席者から飛び出した言葉は、「首相には危機感がない」というものだったそうだ。11月に入り、北海道などで急速な感染拡大が起こり、危機感を強めた分科会は、まず、11月8日に中枢メンバーで極秘会談を開いた。翌日、尾身会長は政府に対して異例の緊急提言をし、会見でも「(状況が悪化すれば)GoToキャンペーンは当然停止だ。今が最後のチャンスだ」と警鐘を鳴らした。

   だが菅首相は「GoToは絶対に止めない」とし、「GoToトラベルは延べ4千万人の方が利用している。その中で現時点での感染者数は約180人だ」と、「誤解を招きかねないデータを出すことも厭わなくなっていました」(政治部デスク)

   だがこの数字は、宿泊施設などからの報告を受けている範囲での数字で、保健所は「基本的に、感染者がトラベルを利用したか否かは確認していない」(厚労省関係者)のだ。文春が厚労省などの資料を基に集計してみると、トラベルに東京が追加され、イーストが全国でスタートした時期を境に発症者が増えていて、「GoToが感染拡大の一つの要因なのは間違いありません」(東京都医師会の尾崎治夫会長)

   しかし、菅首相は「静かなマスク会食」などといい出し、GoToを止める気持ちはまったくないようだった。尾身会長から「医療崩壊が差し迫っている」と告げられた西村康稔経済再生相、見直しはあり得ないといっていた加藤勝信官房長官も考えを変え、11月20日の昼、2人で菅にGoTo見直しを訴えたが、なかなか首を立に振らなかったという。

  • 菅義偉首相
    菅義偉首相
  • 菅義偉首相

結局菅は、トラベル停止の判断は知事に委ねると丸投げしたため、小池百合子都知事から「国が判断すること」と痛烈に批判された。

   世論調査でも見直しを求める声が5割を超え、「GoTo継続に拘泥することは、政治的に得策ではないと判断したのでしょう」(首相周辺)、翌21日に、ようやく見直しを決めた。だが、トラベル停止から東京を外すなど中途半端な対応で、判断は都道府県知事に委ねると丸投げしたため、小池百合子都知事から「あくまでも国が判断すること」だと痛烈に批判されてしまった。

   一方新潮は、外国はいざ知らず、日本はコロナをさほど恐れることはない、GoToを止める必要などない、「せっかく動き出した経済に進んで水を差すとは、目を覆わんばかりに愚かしい」と、菅の肩を持つ。

   コロナ怖い派は、このままでは医療崩壊するというが、インフルエンザを見てみるがいい。年間1000万人程度が感染して、関連死を含めれば1万人ほどの死者が出るが、医療崩壊しないではないか。インフルでも病院で集団感染することはままあるのに、新型コロナだと医療崩壊するとパニックになるのは、指定感染症2類相当とされているためだと、いつもの持論を持ち出す。

   感染者を全数報告し、医療従事者も防御を徹底して、保健所も検査や感染者の行動追跡に人出と労力を奪われてしまうから、「政府がいま一番にやるべきことは、この感染症の法的扱いを、インフルと同じ5類相当に変えることです」(唐木英明東大名誉教授)

   私はこうした考えについて判断する材料は何もないが、欧米はどうなっているのだろう。日本だけが、インフルと同レベルに引き下げ、経済最優先政策をとり始めたら、昔のように、コロナ禍でも儲けようとする国、自分さえよければ他の国はどうなってもいいのか、「エコノミック・アニマル」といわれるのではないか。今は、安心安全なワクチンができるまで、何とかコロナを抑え込む対策を優先すべきだと、私は思う。

小池百合子都知事
小池百合子都知事

現代の「二階俊博劇場」が面白い。この古狸、菅を全力で支える気など毛頭なく、菅がダメなら石破でも安倍でも誰でも担ぐというのだ。

   現代が連載している「二階俊博劇場」がなかなか面白い。このところ、最高権力者ガースーこと菅義偉首相は、疲労の極に達しているという。その主な要因は、コロナ対策と経済回復を同時にやろうとしている菅を忖度しない、尾身茂感染症対策分科会会長だそうだ。官邸のスタッフはこういう。

   「尾身氏を憎んでいるかのようなレベルです。総理にしてみれば、政府の管轄下にあるオブザーバー組織に過ぎないのだから、こっちの意向に沿って発言しろ、と。ところが尾身さんはそれを無視して危機を訴える。総理は非常に怒っていますが、下手に圧力をかければ学術会議問題の二の舞になりかねないので、怒鳴りつけるわけにもいかず、イライラが募っているのです」

   さらにその菅をイライラさせている要因が、前総理の安倍晋三の復活劇であるという。

   「安倍さんは最近、すっかり元気を取り戻して、かつての政権奪取前夜を思わせるような活発ぶりですよ。各界の知識人に自ら声をかけて会合を繰り返し、その場に後輩議員も呼んで識者と引き合わせている。食事も脂っこい中華料理をペロリと平らげるし、アルコールも普通に嗜む。絶好調と言ってもいいのでは」(ある政界関係者)

   菅は、安倍待望論が沸き上がるのは、菅不要論が広がるのと同義だと考えているようだ。その菅が頼るのは二階俊博幹事長だが、この古狸、菅を全力で支えようという気は毛頭なく、菅がダメなら石破でも、安倍でも誰でも担ぐというのである。自民党閣僚経験者はこう話す。

   「二階の論理はシンプルで、『選挙に勝てる総理総裁なら誰でもいい』ということ。9月時点では菅なら選挙に勝てると思ったから担いだが、負けそうなら即座に次に乗り換えることが前提だ。(中略)

   石破が復活するならそれでもいいし、岸田が覚醒して最前線に復帰するなら、それも構わない。誰がどう動いてどんな流れになっても、自分はうまくそこに乗る。二階はそれだけを考える。当然、安倍が復活するなら、それもまた良し」

   しかし、菅もここへきて秘策を考えているという。

   「菅総理は、『衆院選の選挙区で敗れ、2回以上連続で比例復活した議員の重複立候補は認めない』という党の規定を、今後は厳格に適用することを決めた。該当する議員は党内に25人ほどいるが、彼らは次回衆院選では、小選挙区を勝ち上がるしか道がなくなる。

   25人の中には菅シンパや二階派の議員もいる。しかし、この25人の比例復活がなくなれば、当然、比例単独で当選する新人が代わりに増える。その新人らが『菅チルドレン』となり、元の菅グループと合わせれば50人近い規模の『菅派』が誕生する。党内に基盤がないという総理の弱点が、一気に解消されることになる」(自民党ベテラン議員)

   だが、そのためには解散に打って出なくてはいけない。今の菅に、それだけの力も能力もないことは、首相就任わずかにして広く知られてしまったから、二階に「選挙の顔にあらず」と首をはねられるかもしれない。どうする、菅首相。

二階俊博幹事長
二階俊博幹事長

秋篠宮は会見で「結婚と婚約は違う」と、素直に喜べないことを言ったという。はて、この言葉の意味はなんなのか?

   さて、秋篠宮眞子さんが結婚宣言をしたため、父親・秋篠宮が11月30日の誕生日会見で何をいうかに関心が集まっていた。だが、11月20日、赤坂東邸で行われた会見で、居並ぶ皇室担当記者たちを前に、秋篠宮は意を決したかのように、こういったという。

   「結婚することを認める、ということです」

   これは文春からの引用だが、新潮でも、「そして『2人がそういう意志なのであれば、親として尊重するしかありません』『時期に関しては、これから本人たちが考えるでしょう』とも述べられていたというのです」(宮内庁関係者)

   この発言が解禁されて、新聞などで報じられるのは30日だが、見出しには「秋篠宮、眞子さまの結婚を容認」と出るはずだ。眞子さんと小室圭にとっては待ちに待った吉報だが、その後を読むと、素直に喜べないことを、秋篠宮が言ったというのである。

   「結婚と婚約は違う。結婚については、しっかりした意思があれば、それを尊重するべきです」

   はて、面妖な。新潮では、こういう発言もあったと報じている。

   「私としては現在、多くの人が(2人の結婚を=筆者注)喜んでくれる状況にあるとは認識しておりません」

   小室圭の母親・佳代と元婚約者の男性との金銭トラブルがまだ解決していないことを指すのだろうが、それではなぜ、結婚を許すのだろう。文春によれば、「あえて秋篠宮さまが婚約に触れられたのは、『結婚は自由だが、皇族として、納采の儀は行えない』という"最後の抵抗"でしょう。(中略)どうしても結婚したいなら縁を切る、と"勘当"するようなお気持ちで、結婚容認を表明されたのです」(宮内庁関係者)

秋篠宮
秋篠宮

親が結婚する娘に「嫌になったら出戻って来てもいいよ」というだろうか?各誌ともなぜ眞子さんの結婚を素直に喜んでやれないのか。

   新潮はもっと深読みをする。

   「殿下は、あえて眞子さまを突き放して世間へ送り出し、"一般社会で小室さんと暮らして現実を直視し、目を覚まして戻ってきてほしい"と、そんな深謀遠慮がおありなのかもしれません」(秋篠宮家の事情を知る人物)

   親が結婚する娘に、「嫌になったら出戻って来てもいいよ」というだろうか。 両誌の特集を読むと、秋篠宮の会見での片言隻句を都合よく解釈して、2人の結婚に難癖をつけたいという意図が見え見えである。なぜもっと素直に喜んでやれないのだろう。

   文春は、結婚は来年の東京五輪が終わった後になるのではないかと見ているが、もし彼女が一時金(約1億5000万円)を断れば、厳しい現実が待っていると脅す。また新潮は、眞子さんが結婚を強行すれば、「それを認めてしまわれたご夫妻にも囂々(ごうごう)たる批判が向けられ、ひいては国民が抱く皇室への親しみの感情も、歪められてしまうおそれがあります」(皇室ジャーナリスト)というのである。

   女性セブンに至っては、眞子さんが発表した「お気持ち」の文章は、事前に天皇皇后両陛下と上皇ご夫妻に伝えていたものを、小室圭と一緒に「改ざん」したものだとまで報じている。「他人の不幸は蜜の味」という考えが染みついたこの国のメディアには、若い2人の前途を素直に祝福するという心が失われてしまったようだ。(文中一部敬称略)

「結婚の意思」の文書を発表した眞子さんと小室圭(フジテレビより)
「結婚の意思」の文書を発表した眞子さんと小室圭(フジテレビより)

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。