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笹子トンネル事故から8年 NHK作成・全国の橋とトンネル「インフラハザードマップ」6割以上が「未着手」

   9人が犠牲になった8年前の中央自動車道・笹子トンネル事故は、老朽化で天井板が崩落したのが原因だったが、危険性の高いインフラの早期修繕は進んでいない。NHKが全国の橋とトンネルの「インフラハザードマップ」を作成したところ、約7万3000か所のうち6割以上が「未着手」だった。

   武田真一キャスター「身の回りで(インフラの老朽化が原因の)重大な事故が相次いでいます。なぜ対策が進まないのか、その処方箋を探っていきます」

   富山市では200以上の橋の修繕が必要とわかったが、着手できているのは3割ほどだ。森雅志市長は「正直にいうと、すべてを更新するのは不可能だと思います」という。理由は予算の大幅な不足だ。インフラ修繕に富山市が今年度必要な予算は20億円ほどだが、国の補助を受けても6億円足りない。植野芳彦・政策参与は「橋梁を守るために市が破綻するか、市を残すために橋梁を減らすかです」と頭を抱える。

   小山径アナ「NHKが行ったアンケートでは、自治体の77・7%がインフラを減らしていく必要があると答えています。実は、日本は公共インフラの総資産がGDPを上回る、世界でも飛び抜けて公共インフラが多い国なんです」

業者が工事を引き受けたがらない

   自治体は負担が大きすぎて、もはや維持・管理ができなくなっているのだが、修繕が進まないもう一つの理由が、業者が工事を引き受けたがらないというのがある。修繕のための積算基準は大型重機を想定した工事で、地方の中小業者は重機を持っていないため、工事日数も作業員もかかり、儲けが出ないのだ。結局、修繕は中途半端なため再劣化が起こって、「最終的には崩落します」(植野参与)

   武田「恐怖すら感じますね」

   インフラの維持・管理に詳しい東京工業大の岩波光保教授はこう解説した。「インフラが足りていない地域はありますし、防災などの重要性から、まだまだインフラの新規建設は必要です。ただ、維持・菅理重視に変えていく必要はありますね」

   武田「(修繕は)だれが責任を持ってやるのでしょうか」

   この問題を取材したNHK社会部の清木まりあ記者(国土交通省担当)は「国、自治体、高速道路会社が、自分の管理部分に責任をもつことになります。ただ、インフラ全体の9割以上が自治体の管理で、実情は(修繕・維持は)かなり厳しいといわざるを得ません」

   富山市は「橋梁トリアージ」を作成して、住民の必要性、代替通行路の有無などを総合的に判断して、あえて修繕せず取り壊すことも選択している。群馬・太田市は橋を減らす代わりに、川沿いの道を整備して、隣の橋に行きやすくするようにした。

   武田「インフラを維持できなければ、(地域や暮らしの)安全を確保することもできなります。国も自治体も、そして私たちも考えていかねばなりません」

   なぜ日本は公共インフラが多いか。地元政治家、建設業者の選挙がらみで計画され、作りっぱなしになっていることにも触れるべきではないか。

NHKクローズアップ現代+(2020年12月2日「老朽化インフラ 教訓はなぜ生かされていないのか~笹子トンネル事故8年~」)