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宮城の保育園でパワハラ訴え保育士17人が退職 町議会も問題視、でも県は「介入できない」

   宮城・涌谷町の認可保育園で、11月30日(2020年)に保育士ら17人が理事長のパワハラを理由に一斉退職していた。退職した元副園長は「人格を否定するような注意の仕方を数々受けた」と話し、保護者は「子供にも影響が出ている」と話しているが、理事長は「すべて噂」と説明するだけだ。

   元副園長によると、この保育園は社会福祉法人が運営しており、0歳から就学前までの園児約110人を預かり、保育士約20人が勤務していた。理事長は5年前に園に赴任し、社会福祉法人の理事長と園長を兼任し敷地内の教会の牧師も務めている。副園長は「牧師として赴任すると自動的に園長、理事長になる。赴任して2年目以降、パワハラが強くなり、無視したり、"黙れ黙れ黙れ"などと人格を否定したりするような注意の仕方をする」という。この5年間で辞めた保育士は約20人に上る。

理事長が「怖い」という声も

   理事長については、夕方5時頃、コンビニエンスストアの前で缶ビールを断ち飲みする姿が目撃されている。ある時は竹刀を持って歩いており、保護者からは「怖い」という声もあるという。理事長のこうした毎日の飲酒は町議会でも問題になっていた。涌谷町議会議員の杉浦謙一氏は「5時半ごろから理事長が近くの店で毎日のように飲酒をしている。小学校の父兄もみており恐怖を感じるとの声があがっている」と9月の定例会で報告したところ、遠藤釈雄町長は「民間といえども町としても最大の関心事として注意を払いながら今後の推移を見守っていく」と発言している。

   今年3月には、園長(現理事長)に園から退くよう要求したところ、園長が突然辞任を表明。しかし1か月後に、園の施設管理者として再び保育の現場に戻ってきたという。理事長は、保育士らの訴えに対し「保育士らが3月に園長から退くように訴えたことが犯罪行為。ハラスメントをしていると犯罪的なことを頒布したことで1000万円の被害が出ているので損害賠償せざるを得ない。刑事事件としても罪になることをした」と主張したという。

「子供にも影響」と保護者

   元副園長は「夢を持って入ってきた保育士に、もうこういう思いをさせたくない」と訴えている。子供にも影響が出ており、11月20日に開催された緊急保護者会では、保護者から「子供が怒りっぽくなり、夜も私にくっついていないと眠れなくなった」「子供が人形を相手に怒り出した」と訴えた。保護者は、これまでの経緯や今後の運営について園に説明会の開催を要求したが、理事長は電話にも出ないという。

   現在、同保育園には園児113人が在籍しているが、保育士は新たに入った人も含めて12人。保育士不足に対して園は保護者に「園児を休ませるよう促す」メールを送信した。宮城県の担当者によると「認可保育園の基準を満たすには最低でも14人の保育士が必要」として、「このまま保育士不足の状態が続けば認可取り消しの可能性あり」とするが、「保護者からも相談を受けているが保育園を運営しているのは民間法人のため労使関係には介入できない」という。

   羽鳥慎一キャスターは「この町には、この保育園を含めて保育園は3つのみ」と説明。

   作家の吉永みち子は「労使の問題だけでなく、教育・育児の問題でもある。介入できないという県の対応はどこかおかしい。一番ワリを食うのは子供たちや働いている親。対応するのが県の役割だと思う」と指摘。

   スポーツキャスターの長嶋一茂は「大人のいざこざで子供に影響が出ているのはよくない。退職した17人は相当悩まれた末の決断だったのだろう。この理事長は牧師でもあるのに、酒飲んで何をやっているのか」とコメント。

   テレビ朝日コメンテーターの玉川徹は「この理事長は牧師として協会とも対立していると聞いている。県としても今ある法律で介入しにくいので、保育士たちは逃げるしかなかった。大きな町ではなく、他の園にも空きはないだろう。退職した17人の方は勇気を出して裁判を起こして戦っていく必要があるかもしれない」と提案した。