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スクープが何もない各誌「新年合併号」にため息 遺産や遺言状の特集では酒が不味くなる! 「菅・二階政権」が今や「二階・菅政権」に逆転か? 東京地検特捜部が安倍前首相を事情聴取も不起訴の見通し、どうなる?国会での118回の嘘答弁

   「これが新年合併号か」、出そろった週刊誌を見てため息をついた。コロナ感染が広がっている中だからということを考慮しても、スクープと呼べるものが何もない。

   昔の話で恐縮だが、新年合併号は、各誌がスクープを競い合い、人気女優を表紙に起用し、華やかだった。

   だが、現代の巻頭特集は「残り10年、人生をどううまくまとめるか」、ポストは「親子で、夫婦で、兄弟で年末年始に決めておくこと」である。

   たしかに年末年始には兄弟親戚が集まる機会が多くなる(今年は微妙だが)。だが、せっかく久しぶりに会うというのに、遺産の話や遺言状の相談などしたいと思うのかね。

   大事なことではあるが、兄弟の諍いの原因になる親の遺産の話、親の介護は誰が見るかなどが話題では、酒がまずくなる。

   このところ華々しいスクープが影を潜めている文春と新潮だが、今号もスクープどころか、右トップが小室圭、左トップが三浦春馬と同じで、内容はというと「何を今さら」という話である。

   新潮の「年末年始テレビ番組表」が唯一の合併号らしい企画というのではいかにも寂しい。

過熱する小室母子のプライバシー報道

   気を取り直して、文春の小室圭が中学高校で「イジメをしていた」という特集からいこう。

   小室は中高を品川区にあるカナディアン・インターナショナルスクールに通っていた。ここで小室は英語のスキルを磨いたようだ。成績が特にいいというわけではないが、授業中に積極的に発言したり、授業後に個人的に質問をしに行ったりする「優等生」だったという。

   小室とクラスのボス的存在のAを含めた5人は仲がよかったそうだ。中学生の時、内藤悠(仮名)という女性生徒がいた。彼女が5人組の前を通り過ぎたとき、小室が、「ブタが通った」と囃し立てたという。その後も、小室を含めた5人組のイジメは高校になるとさらにエスカレートし、内藤の心を確実に蝕んでいったそうだ。

   高校1年が終わる頃、内藤はひっそりと学校を辞めていったという。文春によれば、彼女はその後2年間にわたるひきこもり生活を送った後、一念発起して大検を取得し、海外の大学に入学。今は伴侶と出逢い幸福な家庭を築いているそうである。

   彼女にとって嫌な思い出である中高のイジメを思い出させたのは、2017年9月に行われた秋篠宮眞子さんと小室の「婚約内定会見」だった。何やら、小室の婚約を知って、母親との金銭問題を女性週刊誌に売り込んだ元婚約者を彷彿とさせるようではないか。

   秋篠宮の「結婚と婚約は別」、西村宮内庁長官の「小室側に説明責任」発言以来、再び堰を切ったように、小室母子のプライバシー報道が過熱してきた。

   この「イジメ報道」も、内藤という女性だけのいい分で、他にこのことを裏付ける証言などはない。

   私は、この報道が嘘だといえる根拠は何も持っていない。だが、5人組の1人だったBが文春に対してこう語っていることは記しておきたい。Bは「事実と違う」といい、

   「こんなくだらないことで(イジメが)ある、ないと世間に出すのは頭おかしいと思う。小室さんってすっごい良い方なんですよ、優しくて。それなのに、悪いことを取り上げて、お金が儲かるような記事にしようって、おかしくないですか? 眞子さまが結婚したいと思えるくらいの人だってこと、もう少し考えたほうがいいんじゃないですか」

   痛烈なメディア批判である。こうした発言も、小室側が手を回していわせたのではないかと、勘ぐるのだろうか。

   新潮のほうは、先週号で「『小室圭・佳代さん』に『美智子さま』からの最後通牒」と報じたことに対して、宮内庁がHPで、「上皇上皇后陛下が首尾一貫して(眞子さまの結婚報道に関し)一切の発言を慎まれている」と厳しく批判したことを取り上げているだけで、後は、以前から報じられている元婚約者の小室母子への繰り言を掲載しているだけ。失礼だが、新味はない。

   これでは、「報道の新潮」といわれていたかどうかはさておき、名が廃る。

「GoToトラベル」一時停止で菅・二階に不協和音

   お次は「菅"孤立の官邸"」(文春)と「『二階俊博』面妖なるドンの正体」(新潮)とタイトルはやや違うが内容は同工異曲。

   文春は、菅首相は人心が離れ、孤立を深めていると報じる。止めないと意地を張っていた「GoToトラベル」を一時停止したことで、"観光業界のドン"二階幹事長が「勝手なことをしやがって」と不満を漏らしたそうだ。

   パイプが太いことを自慢していた公明党も、赤羽一嘉国交相がGoTo停止を勝手に決めたと愚痴をこぼした。西村康稔経済再生相も、菅が嫌っている「尾身茂さんと国民の命を守っていく」と菅離れ。コロナの担当官庁である厚労相の田村憲久も不満を募らせているという。

   落ちる一方の支持率に悩む菅首相が、起死回生と頼むのがコロナワクチンだ。2月からワクチン接種が始まれば世論が変わり、五輪を開催して解散・総選挙を断行して勝利し、無投票で再選を果たすという戦略だといわれる。

   だが、免疫学の権威である宮坂昌之大阪大名誉教授は、副反応とマイナス70度の超低温で保存しなくてはいけないので、「そう簡単に二月接種が実現できるでしょうか」と疑問を投げかける。

   新潮によれば、発足当時は「菅・二階政権」といわれたが、今は「二階・菅政権」と立場が逆転したと報じる。批判された12月14日の、みのもんたまで出席していた「8人ステーキ会食」も、二階が呼びかけたもので、「そこに顔を出さない道を選ぶことは、菅にはできなかった」(新潮)。

   その二階も81歳。昨今は認知症ではないかとも思われる素振りも見え始めたというが、自派閥の勢力を伸ばし、早くも菅の次を考え始めているようだ。「ガースー」から「ガス欠」になるのもそう遠いことではないと思う。

テレビ朝日の「事情聴取」フライング報道に激怒した安倍前首相

   安倍前首相が東京地検特捜部に事情聴取されていた。これをいち早く報じたのはテレビ朝日だったが、聴取前だったため誤報となってしまった。

   安倍はこの報道に怒り、テレビ朝日の記者に向かって、「バカじゃないのか! あんな誤報を出したらさ、(テレ朝は)局長が責任を取らないとダメじゃないのか」と、凄まじい勢いで迫ったと、文春が報じている。

   実際に聴取されたのは21日だったから、その時点では誤報だっただけだが、安倍が怒り狂ったのは、聴取が迫り相当ピリピリしていたからだろう。

   政治資金規正法の不記載の罪で、公設第一秘書を略式起訴して、安倍は不起訴となるようだが、安倍がこのことを知らなかったはずはない。起訴はされずとも、政治責任は重大であり、議員辞職を求める声は安倍の地元からも聞こえてくる。

   朝日新聞の調べによると、国会で安倍は「桜を見る会」について118回も事実と異なる答弁をしていた。これでは、国会は何のためにあるのかといわれても仕方あるまい。

   安倍前首相は晩節を大きく汚すことになった。晩節といえば、"無頼派"といわれた作家・伊集院静の昨今の言動も、いささか気になっている。今週の現代の連載「それがどうした」でこう書いている。

   安倍前首相が「桜を見る会」疑惑で東京地検特捜部に事情聴取されるというニュースがあるが、これは首相官邸から話が出たのではないかと推測している。

   そんなことをやっているから今の政治家はダメなのであるとして、

   「『これほど長きに渡って、首相としての責務をきちんとした首相が戦後何人いるのか?』

   こう書くと安倍の味方かという輩がいるが、

   『引退した途端、批判を受けるほど、不誠実な首相であったのか、と言いたいだけの話である』」

   この考えに同調できる"輩"は果たして何人いるだろう。

   菅首相が自分のことを「ガースー」と口にしたと家人が怒っているので、見てみたら本当だった。この男が梶山静六の弟子だったのかと疑ったという。

   「もしかして、相当にレベルの低い男ではないのか? 最初に誉めた、私の目がおかしいのか?」

   伊集院は菅の総裁選出馬表明を聞いて、こう書いていた。

   「会見を聞いていて、もしこの人が宰相ならば、今、目の前にある諸問題への対処、対応に漏れも、穴もないのだろうと思った。おそらく今後、日々起きる諸問題に対しても、あざやかにこなすだろう」

   見る目のないのを反省しているのかと思えば、こう続ける。

   「私は安倍氏の後継は、甘利明氏だと思っている。どう考えても、これほど優秀な政治家は、日本には見つからない」

   私は、作家というものは石原慎太郎のような上から目線ではなく、地べたから虫の目で世の中を見るものだという「偏見」がある。多少袖すり合った作家であるだけに、この発言は哀しい。

三浦春馬の自死の謎

   三浦春馬も両誌が取り上げている。まだ観てはいないが、三浦の遺作映画『天外者(てんがらもん)』はなかなか好評のようである。

   三浦が亡くなって5カ月が経つが、彼の死を惜しむ声がやまない。それは、なぜ彼が自死したのかという理由がいまだにわからないからだろう。

   芸能界で成功するにつれ、息子に金銭を無心する母親や義父に対して、「結局はお金。両親には二度と会いたくない」と、亡くなる3年前に、親友にこぼしていたと伝えられる。

   実母の戸籍から抜けて、幼い頃に生き別れた実父の姓の「三浦」にしたが、その実父も、入退院を繰り返し、三浦が金銭の支援を相談され、「結局はお金なんだ」と追い込まれていったと文春は報じている。

   何やら、息子の三浦を死に追いやった元凶ではないかとまで報じられている実母に、文春がインタビューしているのはさすがである。

   彼女は、「うら寂しさが漂う茨城県内の小さな町。スナックやコンビニが連なる飲み屋街の一角で、その女性はひっそりと暮らしている」という。

   一部の報道では、たしか、三浦春馬が母親のためにマンションを購入してあげたというのがあったが、どうやらそうではないようだ。

   三浦の遺産は、彼の所属していたアミューズが、三浦に関する同社のすべての利益は「三浦春馬支援」を設立して、慈善事業に寄付するという。それ以外の彼のマンションやBMWなどの遺産は、実母と実父の間で、弁護士を立てて話し合いをしているそうだ。

   実母は、自分も仕事を続けていて、息子の資産管理会社の役員として報酬を得たり、クルマを買って貰ったりしたことはあるが、「生活の基盤を完全に息子頼みにするようなことはありませんでした」と、金をせびっていたという報道を否定した。

   さらに実母は、三浦の遺品は自分の所にあるという。

   「自宅で毎日、春馬が生前使っていた財布、携帯電話、手帳を写真と共に、遺骨を供えて手を合わせています。とはいえ、『供養したい』という気持ちと『戻ってきて欲しい』という気持ちがない交ぜで......。(中略)息子の遺物は今後、一切処分するつもりはありません。後生大事に保管していくつもりです」

   実母も、息子がなぜ死を選んでしまったのか、自分には分からない不信感をもたれてしまったのか、三浦春馬という人間の心の奥を知ろうと葛藤しているのかもしれない。(文中一部敬称略)

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。