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東京オリ・パラ閉会直後に解散・総選挙?コロナ対策の失敗なんてすぐ忘れる!国民ナメ切った菅首相――ほか5編

   予想されていたことだが、菅義偉首相がついに東京五輪・パラリンピック開催へと舵を切った。ワクチン接種もまだ途上で、東京のコロナ感染者も激減しているわけではないのに、沖縄を除いて、6月21日(2021年)から緊急事態宣言を解除すると"独断"した。

   NHKが6月14日に発表した世論調査で、東京五輪を無観客か中止すべきだが6割にもなるのに、耳を貸そうともしない。一部の報道では、菅首相は東京五輪・パラが終わったすぐ後に解散・総選挙をする腹積もりだといわれる。国民の安全・安心などそっちのけで、首相としての延命を第一に考えていることが見え見えである。

   ニューズウイーク日本版で民主党や自民党の代議士の秘書を務め、現在は社会情報大学院大学の特任教授・北島純が、菅の考え方には「時間軸の発想」があり、「たとえ短期的に支持率が落ちてもいずれ回復する、あるいは広く知られた不祥事であっても時間がたてば忘却される。一喜一憂しない独特の時間間隔がある」と指摘している。イギリスの歴史家カーライルは、「民衆は老いた女である。ぶつぶつもぐもぐいわせておくがいい」といった。彼は「この国民にしてこの政府あり」といったことでも有名である。

   目的のためには手段を選ばず、人命を犠牲にしても東京五輪をやり抜くというのだから、安倍前首相よりも質が悪い。そんな人間にもエールを送るメディアはあるのだ。週刊新潮がそれである。

   今週の新潮は、「いまの状況で(東京五輪を=筆者注)やるというのは、普通はない」といった尾身茂分科会会長の言葉を、<「世間の目が五輪に厳しく、なにも発言しないままでは立場がなくなると恐れ、問題が起きたときに、"事前にこう言ったじゃないか"と言い訳できるように準備したとしか思えません」(元JOC参事でスポーツコンサルタントの春日良一)>と、自己保身だと切り捨てる。

   さらに、仲田泰祐・東京大大学院経済学研究科准教授たちのグループが5月下旬に出したシミュレーションを持ち出してくる。五輪の期間中に海外から10万5000人が入国すると仮定し、彼らのワクチン接種率を50%として試算しても、増える都内の1日の新規感染は平均15人程度しかない、影響は限定的だとする「結論」を錦の御旗にする。

   私には、なぜ、経済学のセンセイが出したものが正しくて、<「尾身さんの発言が、科学に基づいていると信じている人が多数でしょうが、実は、彼の感覚に基づいていることが非常に多い。(中略)科学の話をせず、感性に訴えるのが尾身さんのやり方です」(東京大・唐木英明名誉教授)>と批判されるのか理解できない。

   私が危惧するのは、強引に東京五輪を開催して多数の感染者が出ても、五輪特有の熱狂にかき消され、スポンサーになっている新聞・テレビも小さくしか扱わないまま、記憶から抜け落ちてしまうことである。それこそが菅の狙いなのだが、民意を蔑ろにして、「普通ではやらない東京五輪」を無理やり開催したことを忘れてはいけない。

医師会「ワクチン打ち代」でウハウハ!?1週間で140万円―自衛隊医官は1日3000円なのに

   本来なら東京五輪の主催者として表に出て発言するべき小池都知事が沈黙しているのはなぜか。サンデー毎日は、7月4日(2021年)に投開票される東京都議選で、彼女が立ち上げた都民ファーストの会が大きく議席を減らすと見られているから、辞任という切り札を切るのではないかと、自民党側が見ていると報じている。

   東京五輪が閉会してパラリンピックが開会した時点で、コロナ感染が拡大していれば、パラ中止を宣言し、責任をとって辞任することで注目を集め、秋に行われる衆院選挙に打って出て、初の女性宰相を目指すのではないかというのである。そんなバカな。

   コロナ禍で泣く人は多いが、笑っている人もいるとアサヒ芸能と週刊文春が報じている。アサ芸は、休業や時短に応じた飲食店に支払われる「協力金」は、規模の小さい対象業者から「濡れ手で粟、笑いが止まらない」という声が上がっていると報じている。取材に応じたオーナーママが1人で切り盛りする家賃10万円のカラオケスナックは、休業を選択したという。神奈川県を例にとると、今年6月までの半年間で888万円の協力金を受け取り、これからの半年と合わせると1年間で総額は1332万円にもなるというのだから、コロナ成金とでもいえるかもしれない。

   だが、浮かれているととんでもないことになるという。罠が仕掛けられていて、協力金や持続化給付金もすべて来年の確定申告の際には所得として計上しなければいけないのだ。差し引くことのできる経費はわずかで、所得税は33%だから、納付額は200万円を優に超える。さらに住民税と国民健康保険料も跳ね上がるそうだ。「菅総理も財務省も、バブリー協力金の3分の1ぐらいは国庫に取り戻せることを知っていた」(自民党の反主流の有力議員)

   その上、コロナ復興税として消費税を上げてくるに違いない。一難去ってまた......である。

   本当に笑いが止まらないのは、日本医師会に所属する開業医たちだと週刊文春が報じる。日頃の政治献金が功を奏して、医師会会員だけにワクチンが分配されていることは前に紹介したが、ワクチン接種の数をこなせば、1週間で約40万円、多くこなす医師では約140万円にもなるというのだ。

   しかし、同じことを大規模接種会場でしている自衛隊医官は、週に1日しか休みが取れなくても、1日の手当ては3000円ぽっきりというのだから、ひどい話である。

平井卓也デジタル相「官製談合」疑惑!顔認証システム発注先に業界トップのNECでなく知人が顧問の会社推し

   週刊文春のトップ記事へいこう。朝日新聞が6月11日付で音声データと共に報じた、平井卓也デジタル相の「暴言」の後追いだが、こちらのほうがはるかに問題だと思うのだが、なぜ朝日はこれを報じなかったのだろう。

   平井の「デジタル庁はNECには死んでも発注しない」「場合によっては出入り禁止にしないとな」という問題発言は、4月上旬に行われた内閣官房IT総合戦略室の会議で出たものだった。文春によれば、五輪で来日する観光客や大会関係者の体調管理のためのアプリを、今年1月にNECなど5社が約73億円で受注したが、海外客の受け入れ断念などがあり、各社はコストカットを迫られ、NECが難色を示した。そこで平井が「完全に干す」と発言、NECの顔認証機能は開発を終えていたが、契約解除になってしまったそうだ。

   この音声がスクープされると、平井は、幹部たちだけの仲間内だったのでラフな表現になったといい訳したが、実はそうではなかったというのである。この会議は、同席したのは幹部2人だったが、密を避けるために戦略室のメンバー数十人がオンラインで視聴していたのだ。さらに問題は、NECに発注しないという発言の前に、平井と親しい東京大大学院工学系研究科の松尾豊教授の教え子で、松尾も顧問として参画している「ACES(エーシーズ)」というベンチャー企業を、「はっきり言ってNECより全然いい部分がある」とべた褒めしていたのである。顔認証はNECにやらせないでACESにしろと、発注機関の責任者がいったのだから、素人が考えても、法に反していることはすぐ分かる。

   元会計検査院局長で日本大学客員教授の有川博がこういう。「平井氏の発言は、いわゆる官製談合防止法に違反する疑いがある。(中略)まして、大臣は発注機関の責任者。同法に違反した場合、(中略)大臣に刑罰が及ぶ可能性もあります」

   私もNECと付き合っていた時期があるが、同社の指紋認証から始まり、顔認証の技術には世界的な定評があることは、ITに少し詳しい人間なら周知の事実である。電通出身というだけでITに詳しいと平井を任命した菅首相は、即刻、処分を下すべきであるこというまでもない。

やっぱり新型コロナは中国・武漢研究所からの流出だった?アマチュア探偵が突き止めた!習近平は説明しろ!

   さて、これが事実なら、21世紀最大の大スクープになるだろう。新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行は、中国にある武漢ウィルス研究所から手違いでウィルスが流出して引き起こされたものだった「証拠」を、世界各地のアマチュアの「探偵」たちが探り当てたと、ニューズウイーク日本版が報じている。

    これをいい出したのは大統領だった時代のトランプだったため、中国を敵視する右派の陰謀論だと打ち捨てられてきたが、その説に興味を持った20数人が独自に調査をし、集めてきた断片的な情報をツイッターで発信し合い、まとまったストーリーになっていったというのである。

   彼らは「DRASTIC」と名乗る。明らかになってきた重要な事柄は、武漢研究所が長年、コウモリの住む洞窟で何種類ものコロナウィルスを収集してきたこと。その多くが2012年に鉱山労働者3人がSARS(重症急性呼吸器症候群)のような症状で亡くなった銅鉱山で見つかったもので、新型コロナともっとも近縁なウィルスも含まれていると見られているそうである。

   武漢研究所はこれまでもさまざまなウィルス実験を行ってきたが、安全管理はお粗末で、曝露や流出の危険性があったことも明らかになり、中国政府はこうした活動を外部に知られないように、ひた隠しにしてきた。

   「DRASTIC」の1人は「シーカー(探索者)」と名乗る20代後半のインド人男性だという。彼も以前は、主要メディアが伝えているように、武漢の海鮮市場で売られていた野生動物から感染が広がったと信じていたが、カナダの起業家のオンラインメディアへの投稿をきっかけに、あることに気付いたという。投稿は、武漢研究所に所属しているコウモリのウィルス研究の第一人者である石正麗が、科学誌『ネイチャー』の論文で書いた「RaTG13」について考察したところ、これが中国南部の雲南省に生息するコウモリから以前に検出されたと述べているのに、いつどこでと具体的なことを書いていなかったと指摘していた。これに疑念を抱き、RaTG13またはその類似ウィルスの研究過程で、「遺伝子をいじるうちに新型コロナウイルスが生まれたのではないか」と考えるとしていた。

   シーカーはこれに興味を持ち、RaTG13が「答え」の一部を解明するカギを握っているのではないかと確信し、それに賛同する参加者たちがインターネットや武漢ウィルス研究所の過去の論文をくまなく調べたそうである。そしてついに、武漢研究所は長年危険な複数のコロナウイルスを収集していたが、公表してこなかった。おそらくワクチン製造のために実験を行っているうちに、ウイルスが変異し、流出してしまったという結論に至ったというのである。

   多くの学者や政治家、主要メディアまでがこの情報を真剣に受け止め始め、ついに5月26日にバイデン大統領が情報機関に対して、「情報の収集・分析に励め」と命じたのである。

   米中関係が緊張を増すなか、中国側が進んで協力するとは考えにくいが、100年に1度の大パンデミックがなぜ起こったのか、その真相を知ることを世界中が求めている。それに背を向ければ、中国は国際社会の中で孤立すること間違いない。さあ、どうする中国、どうする習近平。(文中敬称略)

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。