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「盛り土」業者の元社員「責任感じている」 「スッキリ」に語った「一番大事なこと」

   大雨による土石流で28人の死者・不明者を出した静岡県熱海市伊豆山の災害で、土石流の起点になった地区の「盛り土」をした小田原市の不動産業者が、過去に別の2カ所の工事でも周辺住民などとトラブルを起こし、市議会でも指摘されていたことがわかった。12日(2021年7月)のスッキリが取り上げた。

  • 番組公式ツイッターより
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過去に別トラブルも

   土石流の最上部に盛り土をした小田原市の不動産業者は、1999年に設立されたが、その後倒産。当時の代表者は、現在のところスッキリの取材スタッフと連絡がとれていない。熱海市は土地を差し押さえたが、2011年2月に現所有者が「盛り土」を知らぬまま購入した。

   最初のトラブルは、今回の現場から約7キロ南に離れた上多賀地区。2012年5月に大雨で土砂崩れが発生。人的被害はなかったが、約300メートルにわたり土砂が流出、住宅地に流れ込んだ。被害にあった寺の住職は、「業者さんが開発した土地を削って垂れ流し、落とし込んでいたものが流れてきた」。寺近くの工事現場の斜面で土砂崩れが発生、この工事をしていたのが、今回盛り土をした小田原の不動産業者だった。

   2007年に工事が始まり、ミカン畑だった土地を宅地造成していたが、問題が発生。地元の稲村千尋・熱海市議によると、「本来なら残土は外に運ぶが、申請に外れている敷地の斜面の木を伐採して、その残土を落とし込んだ。本来この場所は風致地区で、伐採には市への届け出(許可)が必要だった」。

   同市議は、この事案を市議会本会議で取り上げ、「乱開発をしている業者がいる。雨が降った場合、斜面の土が流れ出して大変危険ですから、強く指導してください」と訴えたという。2008年と10年に宅地造成工事を中断、その後業者とは連絡が取れず、土地は放置されたままだった。12年の土砂崩れにつながる。その後、土砂崩れを防ぐため、高さ2メートルの壁が設置されたが、その費用950万円は市が負担した。

「徹底的な検証」求める声

   今回の災害現場から南西に1キロ離れた同市日金町では、08年から09年にかけて同じ業者が工事をした。もともとホテルの従業員用の寮があったが、これを解体し宅地造成を始めた。解体時の騒音や振動、重機で周辺道路を傷つけたり、周辺住民とトラブルが絶えず、説明会も行われた。解体後に8区画を整備する予定だったが工事は中断されたままだ。

   番組は、不動産会社の代表者とは連絡がとれなかったが、元社員に話を聞いた。「プラスチックの破片とか木くず、タイヤ。うわさによるとトラックも埋めてあると。そういうものが露出していました。これが下まで崩れたらたいへんな問題だと感じた」と元社員はいう。さらに今回の土石流災害についても「責任を感じている。今回の犠牲になった人に(会社の代表が)素直に出てきて謝罪することが、一番大事なことじゃないですか」。

   橋本五郎・読売新聞特別編集委員は、「市は何度も行政指導してきたが業者が従わなかった。連絡が取れなくなった。どうしたらいいのか。業者として認められるのか。今でも危険な状態が続いている。市は何をしたのか。徹底的に検証しなければ」。

(栄)