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ロシアの主張と「デジタルハンター」の検証 橋本五郎が指摘した「3つのポイント」

   「病院で負傷した妊婦の写真は『フェイク』だった」と在英ロシア大使館が主張した。ロシア側が「モデルの演技」と発表して、自軍の病院攻撃を正当化した主張を、民間の調査機関が証拠を挙げてウソと断定した。14日(2022年3月)の「スッキリ」が伝えた。

   今回のウクライナ侵攻では、当初の「ウクライナの大量虐殺を防ぐための侵攻」や、最近の「生物化学兵器をウクライナが開発している」まで、ロシア側の主張は、首をかしげざるを得ないものが少なくない。オランダに本部を置き、6カ国に28人の調査員がいる「べリングキャット」は、ネットなどで公開されている映像や画像を分析して、事実を断定する。「デジタルハンター」とも呼ばれている。

  • ウクライナ侵攻をめぐる情報戦が活発化している
    ウクライナ侵攻をめぐる情報戦が活発化している
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国連安保理めぐっても

   上級調査官のジャンカルロ・フィオレッリ氏は、「ロシアによるウソとニセ情報は特にひどいと思います」。2014年にウクライナ上空でミサイルによってマレーシア航空機が撃墜され298人が死んだ事件では、ロシアの元軍人ら4人が起訴された。ロシア側は関与を否定したが、ベリングキャットが独自に調査。ミサイル発射装置がロシア国内からウクライナへ移動したルートを解明した実績がある。

   病院が攻撃され、階段を駆け下りて逃げるお腹の大きな女性の写真について、ロシア側は「モデルが妊婦を演じていた」とした事案についても、ベリングキャットは「ロシア側のウソ」と結論づけた証拠として、この女性が、近くに避難したり、大きなお腹が映っている別の写真をSNSで探し出した。

   「軍事施設しか攻撃していない」「民間人は狙っていない」とするロシアの主張については、映像とグーグルマップのストリートビューを比較。爆撃を受けた建物の緑と黄色の壁から、現場は住宅地だと特定。ロシア側のウソを見破った。ウクライナ軍が公開した爆弾の残骸の映像を分析、過去10年の映像と比較して広範囲を無差別に爆撃するクラスター弾だと断定、「民間人は狙っていない」とのロシアの主張を退けた。

   ウクライナのキスリツア国連大使は、一連のロシアの主張を「偽旗作戦」と呼ぶ。自分たちの軍事攻撃の正当化のため、偽った情報を広める作戦、のことだ。ロシア側は11日、国連安保理の緊急会合を要請、ネベンジャ国連大使が、「ウクライナの国内には少なくとも30の生物実験室があり、ペストや炭そ菌などの病原性を強化する危険な研究が行われている。研究にはアメリカが資金を提供していた」と主張した。これに対し、アメリカの国連大使は、「ロシアが緊急会合を要請したのは、?をつき、ニセ情報を流すためである」。

   読売新聞の橋本五郎・特別編集委員は、「これはロシアの常套手段だ。だます、否定する、ニセ情報流す。この3つがポイント。だまされてはいけない」

(栄)