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キューバ危機の舞台裏を描いた映画「クーリエ:最高機密の運び屋」は、実話だった

   Netflixで興味がありそうな映画を探していると、「クーリエ:最高機密の運び屋」という2020年のイギリス・アメリカ合作映画に出会いました。

   監督は、ドミニク・クック、主演はベネディクト・カンバーバッチです。1962年のアメリカとソ連の核武装競争が頂点に達したキューバ危機の舞台裏で起きた実話をもとにしたサスペンス・スパイ映画です。(この原稿はネタバレを含みます)

   核戦争を回避するために、アメリカ中央情報局CIAとイギリス秘密情報部MI6がソ連にスパイとして送り込んだのが、工業製品を卸す会社の販路拡大のため足繁く東欧諸国に出張していたグレヴィル・ウィン(ベネディクト・カンバーバッチ)です。

   しかし、ウィンはスパイ経験のない素人。最初は躊躇しましたが、計画の全貌は知らされることなく「ソ連で顧客開拓したくないか?ソ連で人に会ってくればいいだけ」と説得され、恐る恐るモスクワに向かいます。

  • 「クーリエ:最高機密の運び屋」DVDパッケージ(Happinet)より
    「クーリエ:最高機密の運び屋」DVDパッケージ(Happinet)より
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命がけの機密情報とは知らずに、素人スパイが運ぶ!

   クーリエとは、「情報の運び屋」の意味で、素人スパイがモスクワで会ったのは、ソ連軍の情報総局大佐オレグ・ペンコフスキー(メラーブ・ニニッゼ)でした。彼は、核戦争を回避するため政府の機密を漏洩する覚悟を決めていました。その条件として、妻子を伴ったソ連脱出と、亡命先での厚遇を求めます。

   何度も接触を重ねるうちに、ウィン(ベネディクト・カンバーバッチ)とペンコフスキー(メラーブ・ニコッゼ)との間に、友情が生まれるのです。

   しかし、2人は、結局逮捕され、監獄で対面することになりました。ペンコフスキー(メラーブ・ニコッゼ)は、家族を守るためにKGB(ソ連国家保安委員会)に全てを告白したことを、ウィン(ベネディクト・カンバーバッチ)に詫びます。

   ペンコフスキー(メラーブ・ニコッゼ)が、ウィン(ベネディクト・カンバーバッチ)に渡した情報から、アメリカはキューバに、ソ連のミサイル基地を発見しました。ペンコフスキーは、ウィンは、受け取った荷物の中身を知らなかったと言います。盗聴されていることを知った2人は無言で、友情を確認しあったのでした。

   ウィン(ベネディクト・カンバーバッチ)は、ペンコフスキー(メラーブ・ニコッゼ)に「君は偉業を成し遂げた」と讃えます。実際、核戦争を回避できたのです。ただ、ペンコフスキーは処刑され、ウィンは、何年か後にようやく、イギリスに帰国します。

   冷徹な東西の緊張関係を背景に、2人の間に友情が生まれたことがにわかに信じられませんでしたが、次第に重みを持って納得できるのです。

   デビッド・カンバーバッチもメラーブ・ニコッゼも、複雑な人間の葛藤をよく演じていて、心に残る映画でした。

渡辺弘(わたなべ ひろし)
渡辺 弘(わたなべ ひろし)
1952年生まれ。東京大経済学部卒業。1976年に日本テレビに入社し、制作局CP、ドラマ制作部長として番組づくりの現場で活躍。編成局長、制作局長、取締役報道局長、常務・専務を歴任した。「マジカル頭脳パワー!!」「THE夜もヒッパレ」「「スーパーJOCKEY」「24時間テレビ」などヒット番組をプロデュースした。 現在は「情報経営イノベーション専門職大学」客員教授。映像会社「2501」顧問。