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「巨人」人気低迷に歯止めかからず 上原大リーグ入りでさらに危機?

   巨人の開幕戦が史上最低の視聴率となり、人気低迷に歯止めがかからない事態になっている。その背景には、開幕戦を日本でも同時期に行った大リーグに人気が奪われていることもあるようだ。こうした事態に、今シーズンから中継を減らしたり、若手登用を要望したりするテレビ局も出てきた。

過去最低視聴率は大リーグに人気取られたせい

巨人軍の公式ホームページ
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   巨人の対ヤクルト開幕戦は、それからの4連敗もさることながら、視聴率でも手痛い結果になった。ビデオリサーチ社の調べでは、フジテレビ系で2008年3月28日に放送されたナイター中継の視聴率は、関東地区で11.0%。これは、07年シーズンの13.1%を下回り、巨人の開幕戦として過去最低を記録したという。

   開幕戦では、ヤクルトから移籍したラミレスの本塁打で先制したものの、初の開幕先発に選ばれた高橋尚成投手が5失点でKOされた。視聴率低迷は、こうした内容もあるようだが、スポーツジャーナリストの岡田忠さんは、テレビ中継の変化にも原因があるとみる。「放送時間を早く打ち切るテレビ局も出てきて、観戦に嫌気が差し、興味が半減したのではないでしょうか。そうだと試合の一番おいしいところが見えなくなってしまいますから」

   さらに、巨人の選手補強についても問題点を指摘する。「4番のラミレスなど、金にまかせた補強をファンはよしとしていないのでは。常勝という変なプライドに実情が伴っておらず、選手を十分育てていません」。そして、ライバル阪神の開幕戦が関西地区で17.1%の視聴率になったことについて、「巨人に比べて地に足が着いているから」と分析した。

   岡田さんは、大リーグに現ヤンキースの松井ら人気選手が取られていることも大きいとする。「大リーグの開幕戦を同時期に日本でしたのも、ちょっと変です。お金になるからというなら、日本の球界が衰退します。やり過ぎると、人材流出に拍車がかかりますし」

   開幕戦日本開催については、球界内部からも不満が噴出した。J-CASTニュース2月8日付記事で報じたように、阪神オーナー付シニアディレクターの星野仙一氏が批判。また、巨人の上原浩治投手も3月21日、「パ・リーグも開幕しているのに、何で来んねんって感じ」と記者団に不満を口にしていた。

日本テレビが巨人へ異例とも言える注文

   視聴率が低迷すれば、まず影響が出るのがテレビ局だ。

   巨人戦中継に力を入れてきた日本テレビは、07年シーズンに、当初予定していた63試合から40試合の中継に削減した。表向きの理由はBSデジタル放送強化だが、1ケタ台の視聴率も影響したとされる。そして、08年シーズンは1つ増やして41試合の中継にしたものの、新聞各紙によると、同社の久保伸太郎社長は、巨人へ異例とも言える注文を付けた。

   松井以来の10代開幕スタメンになった坂本勇人内野手(19)を積極起用するよう、原監督らに要望。3月24日の定例会見では、「皆、若い人の活躍を見たいわけでしょう」「視聴率にいい影響?もちろんでしょ」と本音を明かしたのだ。

   日本テレビでは、ゴールデンタイムなどにおける「視聴率1けた追放」を進めており、何とか巨人にも協力してほしかったわけだ。ちなみに、昨シーズンの巨人戦の視聴率は、平均9.8%だった。

   テレビ局の中には、中継数を減らすところも出ている。テレビ朝日は、08年シーズンの巨人戦中継は、昨シーズンに比べ1つ減らして、12試合にした。「視聴率低迷が関係している度合いは多いです」と広報部。「ケースバイケースで試合の内容による」としながらも、中継時間を短縮するかどうか検討中だという。

   一方、TBSでは、巨人戦中継について、「従来に比べ、大きな違いはありませんが、横浜ベイスターズ主催ゲームについては、全試合CSニュースバードで放送するなど、力を入れています」(広報部)とコメントしている。

   今後の巨人は、坂本内野手らの若手が育たず、4月4日にもフリーエージェント資格を得る上原投手が大リーグ入りすることになれば、さらに危機的な状況になる。

   前出の岡田さんは、「(テレビですべて見られるために)試合時間の短縮が必要との声もありますが、ただ早く終わればいいわけではありません。内容のある試合なら、長くても退屈しないのですから。今は、日本の野球をいかに面白くしてファンの目を向けさせるか、しっかり考えないといけません」と話している。