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米国のヌード写真流出「グーグルは画像を削除せよ」 被害女優代理人「1億ドル損害賠償訴訟」の構え

   今夏、米国で有名女優や歌手のヌード写真が不正アクセスによりインターネット上に流出した。検索すれば今も閲覧できる状態にある。被害者側は「有効な対策をとらず放置している」と検索サービスを非難する。

   最大手の米グーグルは、1億ドルの損害賠償訴訟を起こされるかもしれない。

検索すると流出画像が今も表示される

不正な情報流出は許せないが、検索結果として表示されるのも困りものだ(写真はイメージ)
不正な情報流出は許せないが、検索結果として表示されるのも困りものだ(写真はイメージ)

   2014年8月、米ハリウッド女優のジェニファー・ローレンスさんやモデルのケイト・アプトンさんをはじめ数多くの有名人のプライベート画像が流出し、米ネット掲示板に不正に公開された。被害者たちが私的に撮影したヌード写真が数多く含まれていたことから、事態は深刻化した。

   ローレンスさんは事件後コメントを発表、「画像の流出は性犯罪だ」と怒りをあらわにした。プライバシーが侵害され、極めて個人的な写真がネットを介して世界中にばらまかれたのだから、無理もない。

   矛先は、ヌード画像が検索結果として表示されるグーグルにも向けられた。被害を受けた女優らの代理人を務める米弁護士、マーチン・シンガー氏はグーグルに対して1億ドル(約117億円)の損害賠償を求める訴訟を起こす構えを見せている。10月2日付の米ウォールストリートジャーナルや英ガーディアン(いずれも電子版)は、シンガー弁護士がグーグルに書簡を送り、迅速かつ責任を持って画像を削除すべきなのに対処を怠っていると批判したと報じた。不正な手段で取得、流出したとグーグル側は知っているはずなのに、適切に対応せず放置したままだというのだ。グーグルが提供する動画配信サービス「ユーチューブ」やブログサービス「ブロガー」でも「野放し」になっていると指摘。また弁護士は、事件発覚後すぐにグーグルに画像削除を要請したそうだが、4週間ほど経過した時点でもグーグルのサイト上で閲覧できる状態だったと明かした。

   グーグルは両紙の取材に、不法な画像の削除やアカウントの閉鎖を進めていると回答した。だが対策が追いつかないのか、今もグーグルで検索するとこうした流出画像が結果表示されてしまうのは問題だろう。

「忘れられる権利」認める判断が増加

   自分のプライベート写真が意に反して漏えいし、見知らぬ誰かが検索すればいつでも表示される――。本人にとっては極めて不愉快な事態であり、グーグルに削除を求めるのはうなずけよう。

   既に解決済みの過去のトラブルや、場合によっては事実無根の悪評がネット上を漂い、不利益を受けている人がいわゆる「忘れられる権利」を主張するケースも増えている。検索最大手のグーグルへの風当たりは強まっている。

   日本でも2014年10月9日、「忘れられる権利」を一部認める判断が東京地裁で下された。ある男性が自分の名前を検索すると、犯罪行為をしたかのような記事が表示されるのは人格権の侵害と主張したことに対して同地裁は、男性が削除を求めた237件の検索結果のうち122件について、グーグルに削除を命じる仮処分を決定したのだ。

   欧州ではさらに踏み込んでいる。11月26日、欧州連合(EU)のプライバシー保護当局は「忘れられる権利」の適用範囲の拡大をグーグルなどに求める指針をまとめた。同じグーグルを利用した場合でも、EU域内では表示されなくなった内容が、米国で使われる「Google.com」のドメインの下では従来どおり検索結果として出てくることがあるため、これも対象に含めるべきだとEU側は主張する。

   検索結果の処置に関して思わぬ影響が出ていると報じたのは、11月16日付の朝日新聞朝刊。英大手メディアがグーグルに対して、5月にEU司法裁判所が下した「忘れられる権利」を認める判断について「あまりにも早急に実行に移しすぎだ」と抗議したという。グーグルはサイト上に「削除要請フォーム」を開設しているが、削除の判断基準ははっきりとは分からない。これでは本来は残されるべきニュースなのに、要請さえすれば何でも削除されてしまう可能性も否定できない。英メディアからは「グーグルによる検閲」という意見も出たそうだ。「忘れられる権利」と「知る権利」のはざまで、グーグルも難しい判断を迫られている。