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山里亮太×高英起【米朝首脳会談】(特別編) 「世紀の会談」は成功だったのか?

   こんにちは。「ネットニュースの明日」編集部です。

   世紀の会談といわれる米朝首脳会談が、2018年6月12日、シンガポールで行われました。

トランプ米大統領(右)と金正恩朝鮮労働党委員長(写真はポンペオ国務長官のツイッターから)
トランプ米大統領(右)と金正恩朝鮮労働党委員長(写真はポンペオ国務長官のツイッターから)

   「ネットニュースの明日」では、これまで4回にわたり、山里亮太名誉編集長が、北朝鮮情勢に詳しいデイリーNKの編集長、高英起(コウ・ヨンギ)さんに話を聞いてきました。読者の皆様からも、さまざまなコメントもいただきました。ありがとうございます!

   まずは山里編集長から一言。

「今回ここで話を聞いていたおかげで、米朝会談のニュースの見方が分かったのはよかったですよね。読んでいた方々も『今回の会談が何点なのか?』を採点しやすかったのではないかなと思います。会談の結果、具体策が出ないという低めの結果にがっかりすることもできたし、高さんの言う通り『最悪の戦争が遠のいたということだけでもいい』考える選択肢も持てました。いずれにしても、これからも米朝、日朝の動きをよりクリアに見えるようになりました」

   山里編集長が言うように、今回の会談の評価としては、"具体策なし"が目立っています。実際のところトランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長は何を決めて、何を決めなかったのでしょうか。これまでの4回の取材を踏まえながら、米朝首脳会談のポイントをおさらいしましょう。

   高さんは、現地・シンガポールで「米朝首脳会談」を取材されていました。その様子もお伝えします!

◆米朝首脳会談 ここがポイント!
・北朝鮮の体制保証と「朝鮮半島の完全な非核化」を合意。
・米国が求めた「完全かつ検証可能で不可逆的な方式の非核化(CVID)」は合意文書には盛り込まれず、今後の協議に委ねられることに。
・日本人拉致問題は合意文書には盛り込まれなかったものの、トランプ大統領が会見で「提起した」と明言。

高英起氏の予想通りに!

   今回の首脳会談では、北朝鮮の「非核化」が最大のテーマでした。山里編集長の取材に高さんは「非核化というゴールを設定するための会談」になるだろうと予測(参考:北朝鮮は「核」を使えない)していましたが、まさにそのとおりの展開に。朝鮮半島の完全な非核化を目指すことで合意、米政府は北朝鮮に体制保証を確約しました。

   ただ、米国が再三主張してきた「完全かつ検証可能で不可逆的な方式の非核化(CVID)」は盛り込まれず、「非核化」の具体的内容は、今後の交渉に委ねられることになりました。

   山里編集長と高さんとの間では、制裁が機能していないことも話題になりました。(参考:経済制裁で北朝鮮は追い詰められない)トランプ氏は記者会見で「制裁は当面は継続」と発言しましたが、北朝鮮の国営朝鮮中央通信は、トランプ氏が「対話と協商を通じた関係改善が進むことに合わせて対(北)朝鮮制裁を解除することができるとの意向」を示したと報じています。この北朝鮮側の報道が正しければ、実はトランプ氏が大幅譲歩した可能性もありそうです。

   安倍政権が最重要課題と位置付ける拉致問題(参考:拉致問題の「決着」はどこに?)は合意文書には盛り込まれませんでしたが、トランプ氏が記者会見で「間違いなく提起した」と発言しています。安倍政権は北朝鮮との直接交渉で局面の打開を目指します。

   首脳会談では両者の握手こそあったものの、ハグはありませんでした。トランプ氏が終始饒舌だったのに対して、正恩氏は硬い表情が目立ちました。 トランプ氏は署名の際、正恩氏をホワイトハウスに招待する意向を示し、記者会見では平壌に「適切な時期に行くことになるだろう」と発言しています。

   対談では「似たものどうし」(参考:「金正恩委員長は進化するポケモン」)だと指摘された両首脳ですが、今後の協議の進展によっては、「平壌会談」や「ワシントン会談」では意気投合する可能性もありそうです。

歴史が動く瞬間を見た

金正恩氏、シンガポールにて(労働新聞より)
金正恩氏、シンガポールにて(労働新聞より)

   高さんは、現地・シンガポールで「米朝首脳会談」を取材されていました。最後に感想を教えてください。

「歴史的な米朝会談を取材するために11日からシンガポールを訪れて現地取材してきました。70年にわたって対立してきた米国と北朝鮮の双方の指導者が握手をするというシーンを見た時には、素直に歴史が動く瞬間を見ているという感想は持ちました」

   今回の会談、率直にどう評価しましたか?

「『ない』と見られていた会談の合意文に、トランプ氏と金正恩氏がサインしたということにも驚きを感じました。一方で、すでに指摘されている合意文の中身が大雑把過ぎるという点についてはその通りだと思います。ただし今回の会談は米朝両国が問題を解決するためのスタート地点に立つための合意に過ぎず、そもそも過度に期待するようなものでもありません。いずれにせよ、米朝両国は新たなステージで問題解決を模索していくわけであり、日本の立場としても冷静に見極めながら、この問題にコミットしていくことが求められると思います」
デイリーNK編集長 高英起氏
デイリーNK編集長 高英起氏