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山里亮太編集長、富樫勇樹選手インタビュー 「東京五輪でプレーする姿をファンに見てもらいたい」

富樫勇樹選手(右)と、J-CASTニュース名誉編集長の山里亮太(南海キャンディーズ)(左)
富樫勇樹選手(右)と、J-CASTニュース名誉編集長の山里亮太(南海キャンディーズ)(左)

   こんにちは。J-CASTニュース名誉編集長の山里亮太です。

   今回の取材テーマは、2015年4月に発足した日本プロバスケットリーグ「B.LEAGUE(Bリーグ)」です。

   千葉ジェッツvs.新潟アルビレックスBBの一戦を初めて観て、1秒だって退屈させない演出と、会場が一体となった応援、人間業とは思えない選手のプレーに夢中になった僕。この会場の"熱"を選手はどう受け止めているのか知るために、試合後、千葉ジェッツの富樫勇樹選手の元へ向かいました。

   前回:山里亮太編集長「Bリーグ」観戦レポ 「アイドルのライブ前の高揚感とそっくりだ」

   富樫選手は現在25歳。新潟県の新発田市立本丸中学校を卒業後、アメリカのモントロス・クリスチャン高校に留学し、2012-13シーズンから当時bjリーグだった秋田ノーザンハピネッツに加入し、bjリーグ新人王になりました。その後、栃木ブレックスの田臥勇太選手以来、日本人2人目となるNBA選手契約をダラス・マーベリックスと締結。千葉ジェッツには2015年から所属しており、今は、日本代表の司令塔としても活躍しています。

   NBAからの移籍、チームでの活躍、そしてBリーグのこと――。聞きたいことは山ほどあります。

「山里いいか、絶対ボール触るなよ」

山里: 富樫選手、今日はおめでとうございます! お疲れのところすみません。

富樫: いえいえ! 山里さん、バスケやってらっしゃったんですね。

山里: そうなんです。一応、中・高・大学生とやっていたんですけど、異様にセンスがなくて。中高の6年間は、ほとんど練習も休まずにやっていたんですよ? でも全然うまくならない。
高校は3年間試合出られなくて、やっと出られたのが、最後の引退試合の時で。後輩が残り16秒でケガしたんですけど、そこで交代して初めて出られました。

富樫: 最後16秒で?

山里: そう、最後16秒です。そのときに監督が『山里いいか、絶対ボール触るなよ』って(笑)。それくらいのバスケレベルなんです。

富樫: えー(笑)。

山里: でも今日のゲームを拝見していたら、『うわー、俺あんなかっこいいスポーツやってたっけ』って思いました。本当に、むちゃくちゃかっこよくて。何より、ブースター(ファン)の方々の層が厚くて。老若男女、いろんな世代の方がたくさんいますよね。
僕がやっていた時は、バスケが好きな人ばかりで、もっと淡々と見るスポーツだったから驚きました。

富樫: そうですね。昔はそういう感じでしたよね。

山里: 僕、今日、Bリーグ初めて観たんです。デビューなんですよ。もう、むちゃくちゃ面白いなと思って。楽しくてまた来ようって気持ちになりました。「バスケットボールってこんなにエンターテインメント性あふれるスポーツだよ。別にバスケット経験者じゃなくても楽しめるんだよ」って、言いたいですもん。今日の試合だって、そういう魅力を伝えられるいい"名刺代わり"じゃないかなって。

富樫: やっぱりルールが難しいところがちょっとあるので、そこがあれかもしれないですけれど。でも、そんなこと分からなくても、派手な部分もあるし、観ていて楽しいと思います。

山里: その派手な演出なんですが、観ている方はむちゃくちゃ楽しいんですよ。でも選手からしたら、こういう演出だとやりにくいなとか、集中力欠けるな、っていうのはないんですか?

富樫: ないですね。Bリーグが始まってからは、もう全く気にならないですね。特に千葉はそういうところも力を入れて、たくさんの方に観てもらいたいっていうことでこの2年間頑張っていますし。

山里: 千葉ジェッツのブースターの方々って、ものすごく熱狂的じゃないですか。ほかのチームとやっぱり違うなって感じるところとかありますか。

富樫: あります。地方の試合に行った時は、応援に来ていただける人数も、声量や熱量も演出も含めて、やっぱり千葉がひとつ先を行っているな、と感じることはあります。

山里: 今日の試合を観ても、そういうブースターの方々に、プレーで応えようとしているなと感じたんです。富樫選手が、取りに行けるところでも、あえてひと盛り上がりあるようなプレーを選んでいるのかな、と。

富樫: ダンクは同じ2点でもやっぱり盛り上がりますよね。出来るだけやっぱりそこは(やれるようにします)。ただ、そこまで余裕があるときと、ないときはあるんです(笑)。逆にそういう余裕があるときっていうのは自分の中ですごくいいプレーができているときなので、常にそういう状態で試合したいですよね。

山里: 今日も思ったんですけど、富樫選手が交代で出てきた時の"ラスボス感"すごいですよね。新潟アルビレックスBB側からすると「ああ富樫きたわ」っていう(笑)。あの会場のザワッとする空気は、やっぱり快感ですか?

富樫: どうですかね。ただ、アウェーの試合で、途中で出たときとかに、ちょっと歓声とかもらえるのは嬉しいですね。
どこどこのチームの選手だからという理由で応援してくれるのも嬉しいですけど、単純にこの選手のバスケット面白いなとか、観に行きたいな、と思ってもらえるような選手を目指してやっているので。

財布を落としたのがきっかけ

山里: 僕、千葉出身なのであえて「千葉に来てくれた」って言っちゃうんですけど、いろんな選択肢がある中で、千葉ジェッツを選んで「来てくれた」理由ってなんですか?

富樫: そうですね。千葉ジェッツふなばしの島田慎二社長と同じ新潟出身っていうつながりもありましたし。あとは......、事件じゃないですけど、ちょっと財布を落としたことがありまして。もちろん千葉ジェッツに入る全然前です。

山里: 富樫選手が?

富樫: はい。その前にもらっていた島田社長の名刺が、僕の財布の中に入っていたんですね。で、拾ってくれた人が、持ち主が分からないから、島田社長に連絡してくれたんですよ。
ちょうど日本に帰ってくるタイミングだったので、お礼する機会や、話す機会もあって。で色々島田社長と話すうちに、お世話になろうかなと。まあ色々なご縁ですね。

山里: すごいですね。もし富樫選手が何かしらのタイミングで漫画化されるときは、そこ結構厚めに書かれますね。運命な感じありますもんね。

富樫: そうですね。まあでもそこが、チームとしても個人としても、すごくいい選択というか出会いというかだったかなとは思います。

山里: Bリーグ、今ものすごく盛り上がっていると思うんですけれど、もっともっと広がっていってほしいですよね。今日もブースターの方が「もっとでかいアリーナに俺たち行きたいんだよね」みたいなことを仰っていて。もう一発バーンとはじけて、Bリーグ全体が大きくなりそうな空気あるじゃないですか。
そのために富樫選手ご自身、何が必要で、日本バスケ界において何をしていきたいというのはありますか?

富樫: 自分が今フォーカスしているのは、2020年の東京五輪です。
今、バスケットボール男子日本代表は、出場が確定していません。やっぱり、それに出る、出ないでは大きく変わってくると思うんです。サッカーもワールドカップに出る、出ないでは取り巻く環境ってだいぶ変わりますよね。
そういった面では、もう何十年も男子日本代表は出場できていない状況(最後の出場は1976年モントリオール大会)なので、なんとか次は出たいと思っています。

編注:バスケットボール男子日本代表の世界ランキングは現在49位。国際バスケットボール連盟(FIBA)は当初、19年のワールドカップの結果を受けて、日本に開催国枠を与えるかどうかを決めるとみられていたが、国際オリンピック委員会(IOC)の要請で2018年12月に前倒しして協議する。オリンピックの開催国枠獲得は、世界で戦える実力を示すことが条件だが、2018年6月のW杯アジア予選で世界ランク10位のオーストラリア、9月には同25位のイランに勝利していることから、強化が進んでいることを示した。

山里: オリンピックで勝負したい、ということですか?

富樫: アメリカとかスター軍団が来ると思うんですよ。そことどういう勝負ができるかは別として、やっぱり1回そういう場所でプレーする姿をファンの方に観てもらいたいんですよね。
そうすることで、人気というか知名度も含め、また観たいと思ってくれる人が多くなるんじゃないかなと思うので。

山里: いやー、今日はありがとうございました。試合も素晴らしかったです。おかげさまで、自分の中にまた好きなものが一つ増えました。実家が千葉なので、また来ます!

富樫: ですよね。是非本当いつでも来てください!

山里: ありがとうございました。楽しかったです!

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   試合後で疲れているにもかかわらず、笑顔で応じてくれた富樫選手。会場の派手な演出もブースターの声援も、プレーのパワーになっていることがわかりました。

   さて、次は、このブームを作った張本人、富樫選手の財布に名刺が入っていたあの人、千葉ジェッツふなばしの島田慎二代表に、Bリーグのこれから、を聞きにいきます。

   次回は、11月14日(水)公開予定。お楽しみに。

(続く)