J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「愛ですね」 伝説の都知事候補・後藤輝樹を直撃したら...えらいインタビューになってしまった!

   2020年7月5日に行われた東京都知事選挙。結果は2位とは大差をつけて現職の小池百合子氏が2期目の当選を果たした。ただ、その一方で、選挙戦で小池氏に勝るとも劣らないインパクトを、有権者である東京都民はもちろん、日本中に与えた候補がいたことを覚えているだろうか......そう、後藤輝樹さんである。

   後藤さんは都知事選に2回目のチャレンジを行い、2万1997票(得票率0.36%)で落選。しかし、選挙期間中に放送された政見放送ではオムツ姿で机に寝そべるなど奇抜なパフォーマンスによって大きな注目を集め、ネット上では「おれも都民なら選挙行くかも知れん」といった声が上がるなど、残した爪痕は実に深いものであった。

   その後藤さんは、今どうしてるのだろう。そこで、J-CASTニュース編集部は現在の後藤さんに直撃取材を敢行。都知事選の感想も含め、その後の過ごし方について本人から話を聞いた。

(聞き手・構成/J-CASTニュース編集部 坂下朋永)

  • 寝そべりながらインタビューに答える後藤輝樹さん
    寝そべりながらインタビューに答える後藤輝樹さん
  • 寝そべりながらインタビューに答える後藤輝樹さん

前代未聞の「寝そべった状態」でインタビューを受ける後藤さん

   J-CASTニュース編集部記者が後藤さんを訪ねたのは、都知事選から約5カ月半がたった12月のある日。後藤さんが指定した場所は東京・九段にある靖国神社だ。この日、後藤さんはここでフリーマーケットの出店を開くのだという。

   多数の出店が展開する中、麦わら帽子をかぶっているのが目印と告げられていた記者は後藤さんを発見。本人の店にたどり着くと名刺交換を行うべく名刺を差し出したが、それに対し、後藤さんは「僕の名刺はこれです」と明かしながら、黄色く紅葉したイチョウの葉を記者に差し出してニッコリ。政見放送よろしく相変わらずの奇抜さを見せつけたのだった。

   さらに、「名刺交換」が終わると後藤さんは、前述の政見放送のワンシーンではないが、出店のビニールシート上にゴロンと寝そべってしまい、インタビューをこの体勢で受けると「宣言」。さあ、いよいよ、ここから「後藤輝樹独演会」が始まるのである――。

「僕は元来、人前に出たり、人に物を勧めたりするのが苦手で......」

――インタビューには全く影響はないので問題ないのですが......「寝そべり宣言」には驚きました。

後藤:そりゃそうでしょう。こんなん「異常」ですよ! でも、あえて「異常」なことをしているのです。というのも、僕は元来、人前に出たり、人に物を勧めたりするのが苦手で......フリーマーケットをやるのすら、つらいぐらいなんです。なので、今日はこの体勢でお願いします!

――承知しました。それでは、都知事選は今後も立候補なさる感じでしょうか?

後藤:頑張りたいなとは思っています。

――ただ、次は衆議院選挙で、菅義偉首相の選挙区ではないかとの報道もありましたが、

後藤:あー、それはないですね。というのも、本当は出たいんですけど、衆議院選挙は都知事選挙に比べると供託金の面でコスパが悪い(※注1)ので。

――なるほど。ところで、後藤さんといえば政見放送が有名ですが、あのネタは立候補を決意してから考えるんでしょうか? それとも、普段から考えていらっしゃるんでしょうか。

後藤:普段から考えてますね。

――で、その、政見放送を見ていると、漫画やアニメのネタがふんだんにちりばめられていますが(※注2)、やはり、漫画やアニメはお好きなのでしょうか?

後藤:漫画の方が好きですね。読むことでインスピレーションがあるんで。

――ところで、後藤さんは2020年から各メディアで「選挙系YouTuber」と評されることが急に増えたと思うんですけど、ご自身が「選挙系YouTuber」と呼ばれることをどう感じてらっしゃいますか?

後藤:僕自身は自分をYouTuberを名乗ったことは一度もありません。ちょっと心外ですね。僕の職業は『テルキ・ゴトウ』なので、肩書を付けつつ自己紹介すると、『テルキ・ゴトウ 後藤輝樹』なんですよ。あと、『お笑い芸人ですか?』と言われることも多いですが、これも違います。これら、『YouTuber』や『お笑い芸人』は、これ自体がプロフェッショナルな職業ですから、『後藤輝樹はYouTuber、もしくはお笑い芸人である』という認識を持ってしまっているとしたら、それは、これらの職業の人々に対して失礼なことなんです。僕のYouTubeチャンネルを見ていただければわかると思うんですが、ただ動画を上げているだけなんで......。なので、そのような声が出てしまっているのであれば、それは実に申し訳ないことです。僕の肩書はあくまで『テルキ・ゴトウ』なので。

(※注1)東京都知事選挙の供託金と衆議院議員選挙の小選挙区の供託金は共に300万円。しかし、東京都知事選挙の政見放送は無所属や政党要件を満たさない政党(政治団体)所属であっても出演できるのに対し、小選挙区は無所属や政党要件を満たさない政党所属では出演できず、情報発信手段が選挙公報などに限られるため。

(※注2)後藤輝樹さんの政見放送では、毎度、「ドラゴンボールZ」や「笑ゥせぇるすまん」といった往年のアニメのネタが登場する。

「ゴミ拾い」をYouTubeで配信する理由

   寝そべりながらのインタビューとは思えない、実に丁寧な回答を続ける後藤さん。その後藤さんのYouTubeチャンネルを見ると、これまでの政見放送が多数アップされていることに気付く。そのうちのいくつかでは、後藤さんは子供たちへの性教育の重要さを訴えており、その力の入れようは相当なものだ。

インタビューは続くが、やはり後藤さんは寝そべったまま......
インタビューは続くが、やはり後藤さんは寝そべったまま......

――2016年の都知事選のNHKの政見放送での発言ですが、「私たちは放送を禁止しなければいけないような所から生まれてきたのでしょうか?」と、性教育をタブー視する風潮を批判していらっしゃいますが、確かに、おっしゃる通りです。

後藤:ただ、僕の政治的主張や公約は全方位的にアピールしているので、性教育、そして、命と性というテーマがそこまで大きな扱いと言うわけではありません。というか、一般的な政治家さんはどうにもこれらのテーマには言及したがらない。そこでというわけでアピールしているんです。なので、決して、そこだけをやっているわけではないんです。

――なるほど。それでは、もう少し後藤さんのYouTubeについてのお話をお聞きします。後藤さんのYouTubeチャンネルである「後藤輝樹」を見ると、時折、「今晩のゴミ拾い。」といったタイトルで、深夜、後藤さんがゴミ拾い活動をする姿を収めた動画がアップされることがありますが、ボランティア活動もなさってるんですね。

後藤:そうなんです。ただ、それはあくまで『帰り道の路上にあったゴミを拾っているだけ』で、『積極的にゴミを拾い集めている』というわけではありません。というのも、仮に積極的にゴミ拾いを行った場合、すぐに、『何で、俺はわざわざ頼まれもせずにゴミ拾いをしてるんだ?』といった思いが浮かんでしまい、続かないからです。あくまで、『帰り道の道すがら』なんです。ただ、『帰り道のついでのゴミ拾い』という行為を自分が発信することによって、『ポイ捨てをしようかと思ったけど、やめておこう』とか、『あたしもゴミ拾いをしよう』とか思う人が1人でも増えるならば、と思って配信しているんです。

――まさに、「出来る人が出来る時に」というわけですね。

ポスターで話題になったルルーシュの衣装が...

   献身的なゴミ拾いも、あくまで、「出来る人が出来る時に」という精神で行っていると明かすなど、ボランティア活動を行っている人がついつい出しがちな「押しつけがましいオーラ」とは無縁の、実に低姿勢な態度で質問に答える後藤さん。ちなみに、その姿勢は前述の通り寝そべったままだ。なるほど、そのあまりの腰の低さゆえの「超低姿勢」なのか......といった冗談はさておき、記者は質問を続ける。

   聞いてみたのは、特に2020年の都知事選の際に上がった、女性からとみられる、後藤さんを支持するネット上の声だ。それらの声を見てみると、「政見放送で見たけど、お肌がキレイ」「筋肉美を感じる」といった、後藤さんの容姿についてのものが多いのが特徴だ。

――ご自身に何らかの「アイドル性」が宿り始めているのではないかと思う瞬間はありますか?

後藤:全くないですね。

――ただ、後藤さんは8月25日にツイッターで(現在は非公開アカウント)、ご自身が顔にパックをした写真をアップされました。これって、世の女性芸能人がよくやるパック写真を意識したのではないですか? ちなみに、2020年1月には、女優の橋本環奈さんが池田エライザさんと2ショットで、お互いがパックをしている姿の写真をツイッターにアップするなど、パック写真は女性芸能人の美容系の情報発信手段として定番となった感はあります。

後藤:そうなんですか! 全然知らなかったです(笑)! 橋本さんや池田さんがパック姿を披露していたなんて。あれはたまたま、ただ単にパックをしていただけなので(笑)。基本、僕はパックはしないんです。なので、お2人のことは全然意識してないです。

――2020年の都知事選なんですけど、「ルルーシュ」の格好をされてましたよね。

後藤:はい......あ、そうだ! ルルーシュの衣装は今、このフリマにあります! もらって行かれます?

――ありがとうございます!

「この地球は人類だけのものではありませんからね」

   なお、この「ルルーシュの衣装」に関しては、フリーマーケットの来客との公平性を考え、やはり、代金を払うこととした。また、このやり取りの最中には、筆者が録音のためにビニールシート上に置いていたICレコーダーを来客が商品と勘違いするというハプニングが発生し、出店全体が大きな笑いに包まれる一幕もあった。

当日は後藤さんの出店を含め、多数の店舗が展開していた
当日は後藤さんの出店を含め、多数の店舗が展開していた

――現在の小池百合子都知事に何か言いたいことは?

後藤:百合子、愛してるぜ!

――そういえば、後藤さんのYouTubeアカウントには、ビートたけしさんの「表彰状」のフォーマットに倣ったと思われる、小池さんへのメッセージもありますね。

後藤:あれは、百合子へのラブレターです。

――あと、後藤さんの政見放送を見ていると、「お笑い芸人の影響を受けたのかな?」と思う言い回しがあったりするんですが、好きなお笑い芸人はいらっしゃいますか?

後藤:とんねるずさんとダウンタウンさん、あとは、くりぃむしちゅーさんですかね。

――ということは......一つお聞きして良いでしょうか? 2016年の都知事選のNHKの政見放送を見ていると、「二度と来ないでちょうだい!」と叫ぶシーンで政見放送が終わっていますが、あのワンシーン、どこかで見たような......。

後藤:あれはそうですね、『ダウンタウンのごっつええ感じ』の『キャシィ塚本』先生です。子どもの頃、僕は、ダウンタウンさんのコピー漫才をやってたくらいですから......なので、普通に生活してても、たまに、『ぽいですね』と言われることはありますね。

――そうだったんですね! ちなみに、松本人志さんと浜田雅功さんのどちらがよりお好きなんでしょうか?

後藤:あー、いやー、選ぶなんておこがましいです。

――確かに。それでは、大詰めの質問となりますが、今後、立候補したい選挙をお教えください。

後藤:来年で言うなら......葛飾区議選とか、出られたら出たいですね。

――では、最後にお聞きします。後藤さんの今後の目標、もしくは夢をお教えください。

後藤:愛ですね。愛ある世界にしたいですね。

――それは人類愛ですか?

後藤:「宇宙愛ですね。何せ、この地球は人類だけのものではありませんからね。人類は『この世を支配している』というような、ついつい、自らを『万物の霊長』と勘違いしてしまいやすいですが、私たちはあくまで『生かされている存在』ですから、それを自覚して、その上で、曲がりなりにも『万物の霊長』を自称するのであれば、その責任を意識しつつ日々邁進しなければならないんですよ」

後藤輝樹さん プロフィール

ごとう・てるき 1982年12月8日生まれ。東京都出身。2011年実施の神奈川県議会選挙への立候補を皮切りに、さまざまな選挙に挑む。2016年実施の東京都知事選挙の際に放送された政見放送が、その個性的な内容から大きな話題を集めて一躍有名に。4年後の2020年の都知事選にも立候補し、10連続落選となる。