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客が中指立て暴言...店主「さすがにキレた」 ガンプラ当面販売中止決めた悪質マナーとバンダイへの不満

   ガンプラと呼ばれる人気アニメ「機動戦士ガンダム」シリーズのプラモデルについて、静岡県浜松市内にある老舗のプラモデル店が、当分の間販売を中止するとツイッターで告知した。

   その理由については、「諸般の事情」からとしている。どんなトラブルがあったのか、店主に取材して話を聞いた。

  • ガンプラの当面販売中止を告知した貼り紙(「ホビーメイト おおかはら」のツイッターから)
    ガンプラの当面販売中止を告知した貼り紙(「ホビーメイト おおかはら」のツイッターから)
  • ガンプラの当面販売中止を告知した貼り紙(「ホビーメイト おおかはら」のツイッターから)
  • 今年1月も客のマナーに苦言を呈していた(「ホビーメイト おおかはら」のツイッターから)

プラモ店「『やっぱり個人店は駄目だ』とも言われた」

「色々と事情がありまして当分の間ガンプラの取り扱いをやめます。どうしても欲しい方はガンダムベースへ行ってください」

   このプラモデル店「ホビーメイト おおかはら」は2022年2月22日、ツイッターで突然こんな告知を出した。

   ガンダムベースとは、ガンプラ販売元のバンダイスピリッツ事業部運営の施設を指す。この施設では、エントリーグレードのモデルなどが販売されている。

   店の投稿では、ガンプラ販売でストレスを受けることがあったといい、店主は、「持病が悪化した」とも打ち明けた。

   店のツイッターでは、21年9月ごろからガンプラなどを巡る客とのトラブルを度々書き込んでいる。開店前に客が並んで困惑したことや転売対策のため常連客以外はスマホの使用を禁止したことなどの投稿があった。同年12月18日には、バンダイ商品については常連客を当分の間優先するとも明言した。

   今回のツイートは、大きな反響を集め、1000件以上もリツイートされている。

   店では、2月24日になって当面販売中止にした理由を説明し、ガンプラをめぐって来店者に中指を立てられたのと「やっぱり個人店は駄目だ」と言われたこともあったからだとした。前出のツイートと同じ内容の貼り紙の写真も投稿した。

   「ホビーメイト おおかはら」店主の大河原修さん(72)は24日、客のマナーについてJ-CASTニュースの取材にこう苦言を呈した。

「量販店や通販でも買えないと、客がガンプラを探しまくっています。店にないと、『個人店じゃダメだ。やっぱ量販店で探す』などと悪態をついてきますね。22日は、新品しか店にはないのに、『汚れているので中古じゃないか』とケチをつける人がいて、帰りに、中指を立てて『死ね』と言ったので、さすがにキレました」

「客の一部でマナーが悪くなり、我慢できなくなった」

   ガンプラだけが目当ての客のほか、転売目的の客も目立つという。

「バーコードにスマホをかざすと、いくらで転売されているか分かるアプリもあるようです。こうした客は、古めのガンプラを漁っており、転売目的の客とケンカ状態になったことも2度ぐらいありますよ」

   ガンプラは、コロナ禍で巣ごもり需要が増えた20年夏ごろから供給が減ったといい、21年10月ごろから客の一部でマナーが悪くなってきたとした。

「どんどんエスカレートしていますね。段ボールに入った荷物を勝手に開けたり、配送車の中をのぞき込んだりする人もいます。ガンプラは、入って来ても1個か2個と困っていて、店が悪いと言われるのにずっと我慢していました。しかし、持病を悪化させるのでストレスをためないよう医者に言われ、我慢することはないと思いました。店に当たるのはお門違いで、バンダイに言ってほしいと思います」

   当面販売中止の貼り紙は、23日に店頭に貼り出したそうだ。客のマナーに苦言を呈した貼り紙は、3度目だとしている。

   店主の大河原さんは、バンダイの対応についても不満を漏らした。

「6か月前に発注したにもかかわらず、物が来ません。これでは、何のために発注するのか意味が分からず、できないなら注文を取るなと言いたくなります。店を52年間やっていて、ガンダムの第1次ブームのときは物が来ていました。何でもコロナのせいにせず、信用を大事にしてほしい。客にこれ以上、迷惑をかけられません。バンダイには、客に頭を下げる苦労を分かってほしいと思っています」

   ガンプラ発注についての店主の訴えについて、バンダイスピリッツの広報担当者は25日、取材にこう答えた。

「急激な需要増加および近年取扱い店舗様からの仕入れ希望も増加」

「6か月前にご注文された商品でも、急激な需要増加および近年取扱い店舗様からの仕入れ希望も増加していることで、満足した数を確保できない小売店様がいらっしゃることは大変申し訳なく思っております。小売店様への対応も含め、少しでも多くのお客様に商品をお届けできるよう今後も努力して参ります。弊社直営のガンダムベースやプレミアムバンダイにおきましても購入数量制限や抽選販売、最近では抽選入場も実施するなど、お客様へは大変ご迷惑をおかけしており併せて更なる対策を講じて参ります」

   ガンプラの生産状況については、同社の広報担当者は20年9月8日の取材に対し、限定版などを除きガンプラ2500種類を当時すべて販売しており、同年内に静岡工場の増築で1.4倍に生産が増えるといった内容を説明していた(参照:ガンプラ「せどり」にバンダイも困惑 コロナ禍も影響?「今までこういう問題は起きてなかった」)。

   その後も、需要に供給が追い付かない事情があるのかなどについては今回、こう説明した。

「弊社では昨年より生産体制の強化などの改善を行っており、現在もフル稼働をしておりますが、それを上回る急激な需要増加および近年取扱い店舗様からの仕入れ希望も増加している状況がございます。より多くのお客さまに商品をお届けできるよう、今後も生産体制を構築し、引き続きさらなる努力をして参りまして、生産効率を上げるために関係者全員で取り組み、完成品を1個でも多く作れるように日々検討してまいります」

   国内供給が滞っている背景には、海外への輸出に力を入れていることもあると一部で指摘されていることについては、こう強調した。

「海外市場も需要が急激に高まっている状況で日本同様に品薄状態が続いております。しかしながら海外向けの販売については、数年前から日本と海外がおおよそ1対1の状況であり、日本国内市場分をそれ以上に海外に優先的に配荷しているという事実はございません」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)