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写真家・植田正治生誕100年 軽やかで、センチメンタルで、ユーモラスな作品たち。

 広大な鳥取砂丘に人物を点々と配して、まるで一幅の絵画のような写真を見たことがあるだろうか。絵のなかに吸い込まれていきそうな感覚を味わったり、あるいは、何か祝祭の場に突然出くわしたような華やかな気分にさせられたり、はたまた無機質な空間になんとも非現実的に人物がおかれた違和感に戸惑わされる人もいるだろう。そんな見る人の感情を波立たせる写真を撮っていた人物、それが植田正治。今年の3月27日でちょうど生誕100年になる。

植田正治は、地元山陰の空、地平線、砂丘などを背景に、被写体をオブジェのように配置するという演出写真を撮る写真家として世界的に有名である。その写真は、「植田調」とも呼ばれ、世界から高い評価を得ている。かのシンガーソングライターで俳優の福山雅治は、写真の師と仰いでいる。

さて、本書は、「小さい伝記」と題し、被写体の人たちの撮影のある一瞬、あるひとときの記録、そしてそこに立ち会う撮影者、植田正治のあるひとときの記録、つまりお互い小さい、とても小さい時間をそれぞれにつむぎ、記録している「小さい伝記」の集成になっている。とても粋なタイトルだ。もとは『カメラ毎日』に不定期で掲載された作品とエッセイ。それに新たに作品数点を追加して、この本は構成された。

これらモノトーンの作品は、プリンティング・ディレクターの厳しい目によって、美しい印刷物として再現された。植田正治の軽やかで、センチメンタルで、ユーモラスな作品群、その世界をぜひ堪能してほしい。

【植田正治プロフィール】
1913年鳥取県西伯郡境町(現境港市)に生まれる。中学時代より写真に熱中。32年上京。オリエンタル写真学校に入学。卒業後帰郷し、19歳で営業写真館を開業。以後精力的に作品を発表。54年第2回二科賞、78年文化庁創設10周年記念功労者表彰、89年日本写真協会功労賞など受賞多数。58年のニューヨーク近代美術館をはじめ海外への出品も多い。95年地元鳥取に植田正治写真美術館開館。96年フランスの芸術文化勲章シュヴァリエ受章。2000年没
 
 
 
 

書名:植田正治 小さい伝記
写真・文:植田正治
発売日:2008/1
定価:2,100円(税込)

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