鉄道が移動の手段として以外の役割をほとんど期待されていなかった時代に、鉄道ファンの筆者が国鉄(現JR)全線の完全乗車を果たし、その行程をつづった紀行文。1978年に刊行され、シンプルながら臨場感ある風景の描写などで、鉄道の枠を超えて読者を獲得し、同年の日本ノンフィクション賞を受賞した。
タイトルの「2万キロ」は、当時の国鉄の旅客営業距離が約2万キロだったことから。国鉄はこのあと分割・民営化が実施されJRに。旅客6社を合わせた営業距離は廃線などによる合理化でいまは2万キロを割っている。
宮脇さんは、子どものころから時刻表マニアで、大学に入ってからはローカル線に乗ることを趣味して学生生活を送る。帰宅後に、地図で乗車した路線を赤ペンで塗りつぶすのが楽しみだったという。出版社に就職してからも週末ごとに出かけた。
全路線乗車を目指すルールの一つとして宮脇さんは、廃線が予定されている路線の未乗車区間を優先して出かけていた。刊行後40年以上を経た今、鉄道ファンの間では、国鉄時代の当時の路線、列車、駅などの状況を示す貴重な記録であり、旅のガイドになっているという。終点駅が他の路線と接続していない、いわゆる「盲腸線」のうち、本書に登場する路線の半数以上が廃止されている。
本書がベストセラーになったことで「鉄道に乗る」ことが目的の旅が趣味として認知されるようになり、宮脇さんは「乗り鉄」の草分けといえる。本書をきかけに国鉄は80年から、全路線乗車を促すキャンペーン「いい旅チャレンジ20,000キロ」をスタート。JRになった90年まで10年間続いた。
夏休み、本書片手に鉄道版"古地図の旅"などいかが?
角川文庫版もあり。1984年11月14日発売、定価=本体620円+税、304ページ、ISBN コード=9784041598016。
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