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東京オリンピック後の「大不況」に備える

荻原博子のグレート老後

 貯蓄、マネー系の著作を重ね、コメンテーターとしてテレビ出演も多い経済ジャーナリストの荻原博子さん。「人生100年時代」が喧伝されるようになった陰でさらに増幅している老後に対する不安解消のためにと仕上げたのが本書『荻原博子のグレート老後』(毎日新聞出版)だ。株価、不動産動向など先行き不安が大きく、2020年の東京オリンピック後に「大不況」が到来する可能性を指摘。流れに任せているばかりではリスクが膨らむばかりと警戒を促している。

デフレ脱却はむり

 荻原さんは一貫して安倍政権の経済政策、黒田総裁の日銀による金融緩和策に批判的で、本書でもそれが貫かれている。ただ、2年後の東京オリンピック・パラリンピックという国を挙げての一大イベントまでの景気については「政府がメンツにかけて力業で一定水準を維持する」ので、株価ともどもほぼ横ばいで推移するとみている。

 「グレート老後」のために問題となるのは、オリンピック後。大会を終えた後のどの国も、公共投資や雇用が途絶えて不況に見舞われている。大盤振る舞いのツケが回ってくるのは「日本も例外ではなく、五輪後はズドンと景気が落ち込んで『家計崩壊』が起きかねない」という。

 老後をめぐる「不安」はいまに始まったことではなく、かねてより多くの人が依存できるものを手探りしており、そこに手を差し伸べるように「投資」の誘いが聞こえてきたりする。著者はそれはおやめなさいと警告する。「確かに、投資をすれば元金を大きく増やすこともできるでしょう。けれど一方で、減るリスクもあるのが投資です」

 著者は、安倍政権・黒田日銀がタッグを組んだデフレ脱却に懐疑的であり、デフレ時にはわれわれは投資より先にやることがあると述べる。「デフレの時に、投資よりも貯金よりも真っ先に手をつけなければいけないのは、借金の返済。これが何より有効な資産保持の対策」なのだ。

借金を減らして現金増やせ

 著者は、政治や経済の国内外の動向を見まわしたうえで、18年中にも世界的な不況に突入する可能性があることを指摘。また、日銀が金融緩和策によるデフレ脱却を19年まえ先延ばしした状況を踏まえ、その先までデフレが続くとみる。「デフレの中の大鉄則は、『借金を減らして現金増やせ』。これは私がここ20年ほど、ずっと言い続けていること」と著者。それを実践しているのが日本の企業で、現金や預金の内部留保を増やし続けている。

 「人生100年時代」を迎えてやるべきことは、著者によれば、借金返済と節約。本書ではほかに、スマホなどの通信費、光熱費の節約術や、生命保険料、不動産活用の見直しなどについても具体的に触れている。

 読み進めていくと、前向きなタイトルのトーンが後退するように政策批判が繰り返され、投資や個人年金などに対するダメ出しが続き、だんだんとうなだれる。しかし、多くの人にとっては将来に向かってバラ色といえる感覚はないのも真ではなかろうか。著者は「老化現象を治療で何とかしようなどとは考えず、自然に受け止め、どうなるか想定して、最悪の覚悟を決めていくことが大切」と述べている。

  • 書名 荻原博子のグレート老後
  • 監修・編集・著者名荻原博子 著
  • 出版社名毎日新聞出版
  • 出版年月日2018年3月17日
  • 定価本体1100円+税
  • 判型・ページ数B40判・208ページ
  • ISBN9784620325071
 

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