読むべき本、見逃していない?

世の中、100年単位で見れば良くなっている

  • 書名 進歩
  • サブタイトル人類の未来が明るい10の理由
  • 監修・編集・著者名ヨハン・ノルベリ 著、 山形浩生 訳
  • 出版社名晶文社
  • 出版年月日2018年4月30日
  • 定価本体1850円+税
  • 判型・ページ数四六判・342ページ
  • ISBN9784794969972
BOOKウォッチ編集部コメント

 日曜(2018年5月20日)の夜に「NHKスペシャル 縮小ニッポンの衝撃 現役世代3500万人減」という番組を見てこの先、日本はどうなるのだろうかと暗然とした気分になった。ちょうど本書『進歩』(晶文社)を読んだばかりだったから、なおさら複雑な気持ちに。本書の副題は「人類の未来が明るい10の理由」だから、世界は明るくなるのに、日本だけが暗くなるのかと考え込んでしまったのだ。

 この本を手にしたのは、とても珍しい楽観論の立場の本だからだ。一時は北朝鮮の核ミサイルで戦争の危機にとか、地球温暖化で海面は上昇するとか、とにかく世界は問題だらけで、地球は破滅寸前だという悲観論ばかりが目につくが、本当だろうか?

 訳者の山形浩生さんは、本書の紹介を一言で片づけている。「世の中、百年単位で見ればあらゆる面でよくなっている、ということだ」

 著者のヨハン・ノルベリは、1973年生まれのスウェーデンの作家・歴史家。反グローバニズム運動を批判する著書がある。著者もかつては悲観論の立場で昔は良かったと考えたという。そして150年前のスウェーデンについて調べたら、貧しく、慢性的な栄養失調に苦しみ、寿命も短く、子供の死亡率も高かった。古きよき日々というのは実はひどいところだったというのだ。

 本書は10章からなる。食料、衛生、期待寿命、貧困、暴力、環境、識字能力、自由、平等、次世代というカテゴリーについて、さまざまなデータにもとづき、いかに昔が悲惨だったか、現在は進歩したかを説明している。

 たとえば、食料。スウェーデンでは17世紀末の不作で、15人に1人が餓死し、人肉食もあったという。フィンランドでも同時期に全人口の4分の1から3分の1が餓死した。昔は労働時間が短かったというのは、カロリー不足のため人々はあまり働けず、だから頑張って働けるだけの食べ物を生産できなかったという。200年前には英仏の住民の2割はまったく働けなかったというデータを紹介している。

 その後、20世紀になり人口が爆発的に増えたのに餓死者が増えなかったのは、農業生産がそれ以上に増えたからだ。化学肥料の開発、農業技術の発展、特に「緑の革命」と呼ばれる取り組みによって最貧国での収量が増大した。栄養失調の人口比は1970年頃の29パーセントから2015年は11%と低下している。

将来の進歩が保証されるわけではない

 著者は「民主主義は飢饉に対する最も強力な武器の一つなのだ」と説く。20世紀、最大の飢饉に苦しんだのは毛沢東が「大躍進」政策を行った1960年頃の中国で、推定で4000万人が餓死したと見られる。現在では北朝鮮の飢餓問題も深刻だ。

 平等という観点についても、かつてはとんでもない理不尽なことが通用していた。1960年代初期、同性愛はアメリカのすべての州で違法だった。郵便局は、同性愛を疑われた人々の郵便物に追跡マークをつけ、かれらを訴追するための証拠を集めようとしたという。

 人類が進歩したのは、科学と知識の成長、各国の協力と貿易の拡大、それに基づいて行動する自由だと著者は説明する。

 では、なぜ悲観的な世界観が蔓延しているのか、著者はメディアが流すネガティブな情報に囲まれているからだという。確かにメディアは、問題の所在を提起するのが仕事であり商売だ。長年メディアにかかわってきた評者もこの点は認めざるをえない。

 最後に著者は、物事が圧倒的に改善されたという事実があっても、将来の進歩が保証されるわけではない、と警告する。進歩が依存する自由とオープン性が損なわれれば、人類の未来はわからないと。そして新しいアイデアを持った科学者、イノベータ―、起業家たち、新しいことを新しいやり方でやる自由を求めて戦った、勇敢な個人たちが進歩を勝ち取ってきた、そのたいまつを受け継いで、と呼びかける。

 冒頭、日本の将来について暗く思ったのは、日本にそうしたものを損なう雰囲気があるからだろうか。以前紹介した落合陽一『日本再興戦略』などを読んで、若い人に頑張ってもらいたいと思った。   

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