読むべき本、見逃していない?

日本テレビがフジに勝つためにやったことを明かす

  • 書名 全部やれ。
  • サブタイトル日本テレビ えげつない勝ち方
  • 監修・編集・著者名戸部田誠 著
  • 出版社名文藝春秋
  • 出版年月日2018年5月10日
  • 定価本体1550円+税
  • 判型・ページ数四六判・261ページ
  • ISBN9784163908441
BOOKウォッチ編集部コメント

 副題になっている日本テレビの「えげつない勝ち方」とは何か。その記述に入る前に、現況をおさらいしよう。日本テレビはこのところ、視聴率三冠王を7年連続達成している。テレビ朝日が2012年に1年だけプライムタイム(午後7時~11時)で首位となり、日本テレビの三冠の座を脅かしたが、その前、10年は日本テレビが占めていた。

 だが、なんと言っても印象に残っているのは80年代のフジテレビの圧倒的な強さだ。フジは「オモシロ路線」を掲げ絶好調で、1982年から93年まで12年間、連続して三冠王だった。

 ところで、先月ある週の(2018年5月7日~13日)の視聴率ランキングを見てみよう。今のテレビ界の実情がわかる。(朝日新聞TVランキング、5月17日付より)

1 世界の果てまでイッテQ 日本テレビ 22.4
2 ザ!鉄腕!DASH 日本テレビ 20.8
3 半分、青い。 NHK 20.7
4 行列のできる法律相談所 日本テレビ 17.5
5 林修の今でしょ!講座SP テレビ朝日 15.9
5 笑点 日本テレビ 15.9
7 大相撲夏場所・初日 NHK 14.8
8 サンデーモーニング TBS 14.6
9 しゃべくり007 日本テレビ 14.5
10 西郷どん NHK 14.4

 引用はベスト10までとしたが、ベスト20に日本テレビが8本入り上位を占めている。特にバラエティでは圧倒的な強さを発揮している。NHK4本、TBS4本、テレビ朝日3本と続き、かつての王者フジテレビは20位の「サザエさん」1本のみ。フジは遺産を食い潰し、新しい魅力的なコンテンツを生みだせていない惨状が浮かび上がる。

フジテレビの収録現場に潜入した日テレマン

 日本テレビがフジを逆転したのは94年。そこに至る苦難の道を本書はこれまでかとばかりに描写している。タイトルの「全部やれ。」はウソではない。フジを倒すために、考えられることは全部やったのだ。ほとんど業界以外には名前を知られていない制作マンや編成マンが登場する一種の群像劇の趣がある。

 その中で比較的よく名前が知られているのは土屋敏男さんだろう。一橋大学を卒業し、日テレに入社した土屋さんはお笑いタレントへの張り付きを命じられる。当時はフジが彼らを独占していたのだ。土屋さんは夕方、フジテレビの収録現場に潜り込み(今ならセキュリティーチェックでありえないが)、早朝に帰宅した。しだいにタレントに食い込み、番組出演を交渉する。そうやってダウンタウンの松本人志、浜田雅功、とんねるず石橋貴明らの信頼を勝ち取った。

 やがて土屋さんはプロデューサーとして、猿岩石を起用した「進め!電波少年」などのバラエティを大成功させ、頭角を現す。

トップの決断から始まった

 面白いエピソードに事欠かないが、通読して思うのは、トップの決断の力だ。読売新聞から日本テレビに送り込まれ、さまざまな蹉跌もあったが、トップに返り咲いた氏家齋一郎氏の存在抜きに今の日テレ帝国は語ることができない。「ナベツネ」こと渡辺恒雄・読売新聞グループ本社代表取締役主筆の盟友でもある氏家氏が打ったさまざまな手は、業種業態が違う企業でもきっと参考になるだろう。

 著者の戸部田誠さんは1978年生まれのライター。本当は「あまり日本テレビのバラエティが好きではなかった」と本音を明かしている。宿敵のフジの社員にも取材し、叙述に厚みを出している。週刊文春連載中から注目されていたが、大幅に加筆・修正され刊行された。今後、日本のテレビについて語る時に欠かせない一冊になるだろう。評者もテレビ業界とは縁が深い人間だが、蒙を啓かれた思いがする。脱帽。  

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