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空き家が増えて、スズメバチに襲われる

未来の年表2

 昨年(2017年)出た本の新書部門で売り上げ3位(日販調べ)となった『未来の年表』(講談社現代新書)は、日本の人口減少と高齢化が進むさまに警鐘を鳴らし、ベストセラーとなった。産経新聞論説委員の河合雅司さんが、時系列に体系的に解き明かし、硬い内容にもかかわらず、多くの読者に支持された。

 本書『未来の年表2』は、その続篇にあたるが、二番煎じではない。前著が日本全体、国全体で起きることを書いたのに対し、今回は、「これからあなたに起きることを、お中元やお歳暮のギフトカタログのように一覧にしてみよう」という試みだ。

 ギフトカタログなら、もらってうれしいものが満載だが、本書の表紙を開くといきなりショッキングなカラーページが飛び出す。題して「人口減少カタログ」だ。

 「これからあなたに起きること」が列挙してある。要言すればこんな感じだ。「伴侶を亡くすと、自宅が凶器と化す。空き家が増えて、スズメバチが巣を作り襲われる。東京や大阪の繁華街に『幽霊屋敷』出現。食卓から野菜が消える。中小企業が黒字でも倒産。ヤル気のない万年ヒラ社員続出。親が亡くなると、地方銀行が消滅。東京で遅刻者が続出。刑務所が介護施設と化す」など、起こってほしくないことだらけだ。

 第1部はこれらがなぜ起きるかを解説した部分。第2部は「今からあなたにできること」としていくつか提言している。個人ができることのその1は、働けるうちは働くことだ。その2は、1人で2つ以上の仕事をこなすこと。その3は、家の中をコンパクト化すること。60代の評者にはどれも参考になるアドバイスだ。

企業は全国転勤をなくせ

 企業ができることとして挙げているのが、「全国転勤をなくす」ことだ。単身赴任が少子化を加速させているからだ。またテレワークの拡大も提唱している。通勤が機会損失となっており、「テレワークによって、大都市郊外のサテライトオフィスや地方に住む人が増えれば地方創生につながる」としている。

 評者はつい最近、人口減少率日本一がずっと続いている秋田県を見てきて、あらゆる面で活力がないことに驚かされたが、住民も行政の人口対策にはあきらめを感じているようだ。同じことが日本全体でも言えないだろうか。今の政府自民党の人口対策にはやる気が感じられない。だから、個人レベルで、家族単位でなんとかしようとみんなが考え、行動しようとしているのではないだろうか。

 前著に続く本書の展開が、まさに著者がそうした読者の変化をとらえ、個人向けに書き下ろしたと言っていいだろう。  

  • 書名 未来の年表2
  • サブタイトル人口減少日本であなたに起きること
  • 監修・編集・著者名河合雅司 著
  • 出版社名講談社
  • 出版年月日2018年5月20日
  • 定価本体840円+税
  • 判型・ページ数新書判・238ページ
  • ISBN9784065117682
 

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