読むべき本、見逃していない?

101歳の女性が思い出す、駅で見た「黒い集団」の正体とは

  • 書名 戦中・戦後の暮しの記録
  • サブタイトル君と、これから生まれてくる君へ
  • 監修・編集・著者名暮しの手帖編集部 編
  • 出版社名暮しの手帖社
  • 出版年月日2018年7月25日
  • 定価本体2500円+税
  • 判型・ページ数B5判・312ページ
  • ISBN9784766002096

 新聞広告で「新刊」と出ていたのを見て意外に思った。本書『戦中・戦後の暮しの記録』(暮しの手帖社)は、ずっと前からあるんじゃないのと。

 確かにそれはある部分、間違ってはいなかった。すでに半世紀前に同社から『戦争中の暮しの記録』という本が出ている。よく似たタイトル。夏になるたびに増刷される超ロングセラーだという。本書はテーマを「戦後編」まで広げて、新たに作り直したものだとわかった。

「引き揚げ」の記録も

 ともに雑誌「暮しの手帖」の企画だ。まず古い方の本から順に説明しよう。

 『戦争中の暮しの記録』は1967年、当時の花森安治編集長の音頭取りで企画された。高度成長が軌道に乗り、日々戦争の記憶が薄れるなかで戦時中の庶民の生活を記録として残そうとしたものだ。読者の投稿を募ったところ、1736編が集まり、そのうち139編を選んだ。68年8月号の同誌は「戦争中の暮しの記録」で埋まった。90万部を売り尽くし、翌年書籍化され、今に至っている。

 新しい方の本書『戦中・戦後の暮しの記録--君と、これから生まれてくる君へ』は昨年、同誌の70周年記念企画として原稿募集を告知、2390編の応募があった。そこから157編の原稿や思い出の写真、絵などを選んでまとめた。「空から恐怖がふってくる」「何と戦っていたのだろう」「ふるさとが戦場に」「弱きものは守られたか」「遠き丘から」などの項目に分けて掲載している。

 新旧2冊の違いは何か。なるほどと思ったことの一つに「被爆体験」がある。原爆投下から20年以上が過ぎていたのに、『戦争中の暮しの記録』ではあんがい投稿が集まらなかった。なぜか。まだ「放射能」「被爆」への偏見があり、読者が積極的に語りにくかったから、と聞くと納得できる。今回は多数の原爆体験が寄せられた。

 前回は、「引き揚げ」の項目を設けることもできなかった。「戦時中」ということに限っていたからだ。投稿の中にはあったが、ボツになっていた。

投稿者の3分の1は80代

 今回、編集部にとっての最大の驚きは、前回よりも投稿が増えたことだという。400~500通を予想していたのだが、数倍になった。

 最高齢はなんと101歳。兵庫県の大社幸子さん。長距離列車の出発を待つ駅での体験を記している。薄暗い待合室で持参の弁当を取り出したところ、急に黒い集団が近寄ってきた。その動きにびっくりして、反射的に弁当をしまいこんだ。すると、その集団はスーッと水が引くように消えていった。すすけた顔が一瞬、目に入った。戦災孤児たちの集団だった。

 90歳で他界した父親が、晩年に書き残した軍隊時代の回想記を送ってきた人もいた。中表紙には「憲法がどう変わろうとも、戦争には反対である」と記されていた。

 前回の投稿者は戦争中に20~40代の人が多かった。今回は戦争中に10代で現在は80代の人が一番多く3分1を占めた。次が70代、その次が90代。自筆の人が81%だが、19%は「聞き書き」。10歳の孫が祖父に聞いた話を送ってきたケースもあった。中には前回も投稿し、今回また投稿してきた人もいた。入居者有志20人がいっしょに投稿してきた老人ホームもある。

 評者の実家では母親が「暮しの手帖」を定期購読していたから、『戦争中の暮しの記録』を読んだ記憶がある。「引揚者」だった母親はすでに亡くなったが、今回は「引き揚げ」の項目もあると聞いて、『戦中・戦後の暮しの記録』も読みたいと、あちら側で呟いているような気がする。

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