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あなたが食べているのはバーベキューではない!

  • 書名 バーベキューの歴史
  • 監修・編集・著者名ジョナサン・ドイッチュ、ミーガン・J・イライアス 著 伊藤はるみ訳
  • 出版社名原書房
  • 出版年月日2018年6月26日
  • 定価本体2200円+税
  • 判型・ページ数四六判・180ページ
  • ISBN9784562055562
BOOKウォッチ編集部コメント

 あなたがバーベキューと呼んで食べている料理は、バーベキューではない。すこし前、NHKが正しいバーベキューの作り方を番組で紹介していた。一晩かかっても完成せず、NHKのスタッフはいねむりする始末。半日がかりで焼き上がった肉はうまそうだったが、そうまでして作ることが出来る人は限られると思った。

 本書『バーベキューの歴史』(原書房)の定義によれば、バーベキューとは「煙で燻し(スモーク)ながら、ゆっくりと、あぶり焼き(ロースト)にすること」なのだ。鉄板や網の上で薄い肉を焼き、たれにつけて食べる日本流のバーベキューは、まったくの別物と言えよう。直火で肉を焼く(グリル)のをバーベキューと呼ぶのは誤用だとしている。

 著者のジョナサン・ドイッチュは、経験豊富なシェフであり、アメリカ・フィラデルフィアのドレクセル大学教授、もう一人のミーガン・J・イライアスはボストン大学准教授。さまざまな文献からバーベキューの起源や歴史を解きほぐしている。150万年前に南アフリカの原人が火で肉をあぶっていた痕跡があるという。さらに12万5000年前に北ヨーロッパのネアンデルタール人は、肉の塊をジャーキー(つまりバーベキュー)することによってかさを減らし、生活の場まで運び、より長く生き延びる知恵を持っていたと推測される。ホモ・サピエンスにもその技術は伝わったのだろう。

 その後、世界各地でバーベキューは男性の戦いと結びついて、さまざまな展開を見せてきたそうだ。古代ギリシアのホメロスの叙事詩「イーリアス」によれば、戦士たちは「たくさんの雄牛、羊やメーメー声をあげる山羊を殺して切りわけ、さらに十分えさを与えて肥えさせた牙のある猪は皮の毛を焼いて除き、火と鍛冶の神ウルカヌスの炎で焼いた」。

アメリカでは政治活動に利用

 アメリカでは1840年代にすべての白人男性に選挙権が与えられると、バーベキューは政治活動で大きな役割を果たし始める。運動員は募金ではなく、子牛や羊、豚の寄付を頼み、「バーベキュー前日の深夜に全ての肉を溝の火の上に置く。肉は長い緑の枝に刺してあり、完全に焼きあがるまでの約12時間、つねに誰かが見守っていた」そうだ。見張りは主に黒人男性の仕事とされた。

 政治家がバーベキュー・パーティーを好む風潮は最近まで続き、ケネディ大統領の跡を継いだジョンソン大統領の手法は「バーベキュー外交」とまで呼ばれたという。

 バーベキュー・パーティーを開くのが、金持ちの政治家だけの特権でなくなったのは、第二次世界大戦後のことだ。多くの復員兵が郊外の家の広い芝生の裏庭で客を招き、バーベキューをするようになった。1950年代、裏庭にレンガ造りのバーベキュー炉を備えるのはファッショナブルなことだった。さらにアメリカとカナダではバーベキューの競技会が開かれるようになり、競技は36時間以上も続くという。

 このほか世界各地のバーベキューを紹介しており、そのバラエティーの広さに圧倒される。日本のバーベキューと言えば、近隣での騒音トラブルが原因で起きた岐阜県の殺人事件や河川敷でのマナーの悪さからくる苦情など、あまりいいイメージがない。しかも、あれは単なる焼肉だ。正しいバーベキューが日本に根付くように活動している団体もあるようだ。しかし、時間や場所をどうするか。日本で正しいバーベキューをすることはきわめて難しそうだ。燻製用のウッドチップで薫りづけしてじっくりあぶり焼きすれば、ぎりぎり本書の定義を守ることができるかもしれない、と訳者の伊藤はるみさん。

 本書は原書房の「食」の図書館シリーズの一冊。パン、カレー、スパイス、サンドイッチ、モツ、ソースなどさまざまな食材、料理の歴史を取り上げている。  

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