読むべき本、見逃していない?

日本の官僚は「四流」にすぎない

  • 書名 なぜ「官僚」は腐敗するのか
  • 監修・編集・著者名塩原 俊彦 著
  • 出版社名潮出版社
  • 出版年月日2018年10月 5日
  • 定価本体787円+税
  • 判型・ページ数新書・224ページ
  • ISBN9784267021510

 今ほど日本の官僚が堕落し、やりたい放題という時代は近年なかったのではないだろうか。森友問題では、官僚の頂点に鎮座する財務省が改竄の音頭を取る。文科省の局長は我が子を医大に裏口入学させる。厚労省は、「働き方改革」で裁量労働制についてデタラメデータを国会に出す。防衛省は南スーダンPKOで日報隠し。直近では、中央官庁が横並びで障害者雇用の水増し。

 官僚人事を官邸が握っていることもあって、「忖度」がはびこり、「腐敗」が日常化している。本書はそうした情けない官僚の姿を、歴史的、国際的な視点も交えながら指弾する。

「ニッポン不全」に陥っている

 著者の塩原俊彦さんはユニークな経歴の人だ。慶応大の経済学部を出て、一橋大の大学院で学び、いったん日経新聞に入った後、朝日新聞に移る。経済部やアエラ編集部を経てモスクワ特派員も経験、現在は高知大学人文社会科学学部大学院准教授だ。『「軍事大国」ロシアの虚実』(岩波書店)、『ビジネス・エシックス』(講談社現代新書)、『探求・インターネット社会――21世紀の経済を考える』(丸善ライブラリー)など多数の著作がある。英語の著書やロシア語の論文もあり、元マスコミ人間としては突出した勉強家と言える。ロシア関係を軸に経済やインターネットまでカバー範囲が広い。

 本書では「官僚」は公務員にとどまらないと注意を促す。日本の大企業にも一種の官僚病がはびこっている。その現状は「官」以上に深刻と指摘する。東芝の粉飾決算、東洋ゴムのデータねつ造、日産自動車やSUBARUの組織的無資格検査、神戸製鋼、三菱マテリアル、東レの子会社のデータ改ざんなどが恥ずかしげもなく続いている。長く経済記者をしていただけに、増え続ける「民」のインチキも気になるようだ。そういえば最近も免震不正が出たばかりだ。

 「日本の広義・狭義の官僚は目を覆いたくなるほどにまで腐敗しきっているようにみえます。平然と嘘をつき、バレなければ頬かむりしたまま」――まさに「ニッポン不全」、日本全体が機能不全に陥っていると警鐘を鳴らす。

「裏切り者」「唾棄すべき存在」

 日本では一般に官僚の能力が高いと信じられてきた。この通説にも著者は真っ向から疑問を呈す。かつて日経連の桜田武会長は、「官僚一流、政治家三流」と語ったが、著者は、政治家に頭が上がらない今の日本の官僚は「四流」にすぎないとバッサリ。もはや政治家の不当な要求に立ち向かう、かつてのような骨のある官僚はいないというわけだ。

 著者によれば、今や日本の官僚の仕事の半分以上は、経済協力開発機構や国連などの国際機関で決められた政策を翻訳し、日本に導入しているに過ぎない。しかもその中で、自分たちに不都合なことはやらないようにしている、と手厳しい。

 著者がとりわけ重視するのは経済協力開発機構だ。ここがいまや国際協調政策を決める「グローバル・ガバナンス」の砦となっている。日本からも有力官庁や日銀から約60人の職員が派遣されている。副事務総長や事務次長などの要職も占めるようになっているが、ポストにふさわしい実力があったのは、1939年生まれの重原久美春氏(日銀出身)だけと断言する。

 ところが、その活躍ぶりは、必ずしも歓迎されていないようだ。「日本という島国に閉じこもり、立身出世の仕組みのなかで面従腹背の処世術を身につけるだけで終わっている」官僚たちにとっては「目の上のたんこぶ」であり、「裏切り者」「唾棄すべき存在」として映っているはずだと見る。日本は「重原二世」を育てようともしていないし、現にそんな存在は見当たらないという。

「知らしめず」「寄らしめず」

 初めて知ったが、「国連腐敗防止条約」というのがあるそうだ。2017年7月に日本も受諾したが、G20の中で最後。まだ批准していない。腐敗防止に本気で取り組むつもりがあるならこの条約を批准して積極的に条約に沿った腐敗防止策に国をあげて取り組むべきなのに、動きは鈍いと著者はおかんむりだ。

 こんな重要なことがなぜほとんど報道されないのか。それは一つには日本のマスコミが不勉強で官僚と癒着しているからであり、その背後には、官僚に不都合なことは「知らしめず」「寄らしめず」という、日本の官僚支配の現実があると、分析する。

 本書はこのように「官僚」の抱える問題を、「民」にも広げ、さらに国際的視野で論じている点が興味深い。最終章では「新しい反腐敗政策に向けて」についても提言している。特に「内部告発者の保護強化」を力説している。このほか多方面にわたって切り込んでいるので、霞が関や永田町の人々、マスコミ関係者にとっては辛口の内容だが、それだけに参考になりそうだ。

 BOOKウォッチでは関連書として、『監視社会と公文書管理――森友問題とスノーデン・ショックを超えて』(花伝社)、『 「働き方改革」の嘘――誰が得をして、誰が苦しむのか』 (集英社新書)、『日報隠蔽』(集英社)、『面従腹背』(毎日新聞出版)、『文部省の研究』(文春新書)、『外交官の一生』(中央公論新社)などを紹介している。

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