読むべき本、見逃していない?

この本が江戸時代に出版できなかった理由とは?

  • 書名 アイヌ人物誌
  • 監修・編集・著者名松浦 武四郎 著、更科 源蔵 翻訳、吉田 豊 翻訳
  • 出版社名青土社
  • 出版年月日2018年9月26日
  • 定価定価1800円+税
  • 判型・ページ数四六判・365ページ
  • ISBN9784791770960
BOOKウォッチ編集部コメント

 このところ幕末の探検家、松浦武四郎(1818~88)の名前をよく見るような気がする。なぜかと思ったら生誕200年だという。歴史の教科書では、幕末に蝦夷地を何度も探検した人物として登場するのでおなじみだ。NHKは来春、ドラマにして放送するそうだ。

6回にわたり蝦夷地など探検

 本書『アイヌ人物誌』(青土社)は、その松浦が生前書き残していた「近世蝦夷人物誌」をもとにしている。アイヌ文化研究家の更科源蔵さんらが訳している。1981年に農山漁村文化協会から出版され、その後絶版となっていたものを2002年、平凡社から平凡社ライブラリーとして復刊。再び絶版になっていたが、生誕200年、北海道という名を命名されて150年ということで、このほど青土社から新版として再刊された。

 何度も復刊されるのは、それだけ歴史的史料として価値の高い書物だからだろう。アイヌの人たちの誠実にして剛毅な生き方が丹念に記録されている。

 松浦武四郎は伊勢国の庄屋の4男として生まれた。幼少時からお伊勢参りの人たちに触れて諸国への関心を高め、16歳のころ江戸に出る。その後も全国あちこちを旅した。1845年から58年にかけて6回にわたり、東西蝦夷地(北海道)、北蝦夷地(サハリン)、国後、択捉を探検したことで知られる。

 69年(明治2年)に開拓判官となり、「北海道」という名づけや、道内の地域名等の選定に関わったが、新政府のアイヌ政策を批判して翌年辞任した。北海道出版企画センターからその足跡をまとめた『松浦武四郎選集』が刊行されている。

松本潤が主演

 本書がユニークなのは「人物誌」ということだ。それも「アイヌ」。幕末のころに蝦夷地に暮らしていた多数のアイヌ人たちの素顔や生き方が、松浦の筆と挿絵で浮かび上がる。「副酋長リクニンリキ」「オノワンク老人」「烈婦モレワシ」「豪傑カニクシアイノ」「正義の人ヤエケシユク」「孝子コトン」「義民レイシヤク」などといった形で、一人一人に小見出しが付いている。本書では99人が登場する。

 当時、蝦夷地を支配していた松前藩などの役人や和人に騙されたアイヌも多い。「憤死したトンクル」「縊死したフツチウ」など、そうした悲劇もきちんと記されている。

 松浦は本書の原本「近世蝦夷人物誌」を幕末に出版しようとした。しかし、函館の奉行所が許さなかったそうだ。幕府や和人の行動を批判する内容が多かったためだ。松浦の死後20年以上たった明治45(1912)年になってようやく、雑誌「世界」に全容が連載された。

 「解説」で、松浦武四郎記念館の主任学芸員・山本命さんは、「各地で暮らすアイヌの人々が置かれている状況に心を痛め、涙を流し・・・自分ではどうすることもできない無念さをにじませながら、どうすればこの状況を改善できるか・・・悩みながら筆をとる姿が浮かび上がってくる」と書いている。

 来春のNHKのドラマは松本潤、深田恭子のコンビで放送されるそうだ。松浦のイメージとちょっと違うような気もするが、期待することにしよう。

 BOOKウォッチではアイヌ関連で、『アイヌ語地名と日本列島人が来た道』(河出書房新社)、『つくられたエミシ』(同成社)などを、北海道開拓関係では、『鎖塚――自由民権と囚人労働の記録』(岩波現代文庫)などを紹介している。

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