読むべき本、見逃していない?

イルカやクジラの尾びれがサメと違う理由

  • 書名 出動!イルカ・クジラ110番
  • サブタイトル海岸線3066kmから視えた寄鯨の科学
  • 監修・編集・著者名松石 隆 著
  • 出版社名海文堂出版
  • 出版年月日2018年11月 9日
  • 定価本体1800円+税
  • 判型・ページ数A5判・128ページ
  • ISBN9784303800024

 各地の海洋レジャー施設に行くと、アシカやオットセイなどが愛敬たっぷりのアクションで、イルカやシャチ、クジラが豪快なパフォーマンスで、観客を楽しませてくれる。このほど刊行された『出動!イルカ・クジラ110番』(海文堂出版)は、これら大型の海洋生物について、やさしく詳しく教えてくれる。写真や解説図も豊富で、見て読んで学べ、索引つきで事典としても使える一冊。高校生向けに仕立てられたもので、水族館からの注文が数多く寄せられているという。

「イルカ・クジラ110番」とは

 分かりやすく解説されている内容とは対照的に、サブタイトルと合わせても、表紙をひと目見てその内容を判断するのはちょっと難しいかもしれない。この「110番」は、北海道の「鯨類漂着通報電話」。北海道大学水産学部が中心となって2007年、寄鯨調査団体「ストランディングネットワーク北海道(SNH)」を立ち上げ、北海道の周りの沿岸で発生したイルカやクジラの漂着や座礁について、発見者らに通報してもらうよう呼びかけを行っており、その連絡先の通称が「イルカ・クジラ110番」だ。

 「ストランディング」は英語の「strand(座礁させる、立ち往生させる)」から。海生哺乳類が陸地に打ち上げられたり、浅瀬や湾に迷い込んで身動きがとれなくなったりする状態を表す用語として用いられている。

 通報を受けるとSNHでは、調査員らが現場に急行。その場で調査あるいは研究所へ搬送をするなどして、情報や標本を研究者に提供。「鯨類と人類の共存や希少生物の保護につながるような研究を進めるために調査研究活動を行っている」という。「110番」創設から昨年までの10年間で、発生した「寄鯨の情報」は600件以上。なかには「新鮮な個体の全身が観察されたのは世界で初めて」という「タイヘヨウアカボウモドキ」というクジラの例(2010年)もあった。

 それまでの図鑑では、体色や体型が不明だったので想像を交えた紹介図にならざるを得ず、全身は破線で描かれていたが、この発見をきっかけに大きく描きかえられることになったものだ。

「潮吹き」で潮は吹いてない

 観光やレジャーには「ホエールウオッチング」や「ドルフィンタッチ」があり、キラーホエールの異名があるシャチもみごとなパフォーマンスのショーを演じる。これらはいずれも「鯨類」なのだが、それぞれの違いや、鯨類とサメとの違いについて本書では「自信がない人が多いかもしれない」と、詳しい解説に紙数を割いている。

 クジラやイルカ、シャチの鯨類とサメにも共通しているのは流線型の体型と胸びれ。いずれも尾びれを持っているが、鯨類は水平なのに対して、サメのは垂直に付いている。そして、すべてのサメには背びれがあるが、一部の鯨類には背びれはない。また鯨類にあってサメにないのは「噴気孔」。これは呼吸するためのものだが、サメはエラで呼吸するからだ。だから、鯨類にエラはない。最も大きな違いは、サメは魚類に属し、鯨類は哺乳類に属すということだろう。

 鯨類とサメの尾びれの違いは、呼吸の違いと関係があり、噴気孔を水面上に出して呼吸する鯨類は「縦」に早く動く必要があり、そのために水平についているという。だからこそ、高いジャンプなどのパフォーマンスができる。ヒレのせいばかりではなかろうが、本書の違いを比較した図をみると、サメがそうした芸をできないことが良く分かる。

 鯨類の噴気孔をみてよく「潮吹き」というが、あれは「人が寒いときに息を吐くと白く見える現象と同じで、呼気に含まれる水蒸気が見えているのであって、海水を吹き上げているのではない」。ホエールウオッチングに出かけるときがあれば、同伴者らにこう説明すればウケるに違いない。

水産学は北大で生まれた

 四方を海に囲まれ、河川や湖沼も豊かな日本では当然といえば当然だが、水産学が盛んだ。実は、水産学は、自然科学のなかで唯一日本に起源がある学問という。創始の場となったのは、1907年開学の札幌農学校水産学科。北大水産学部の前身であり、つまり、同学部は水産学発祥の学府であり、その歴史は110余年に及ぶ。日本の旧帝大7校のうち、水産学部があるのは北大だけで、本書は、そのキャンパスがある函館は「一貫して日本最高水準の水産教育の場」と誇らしげだ。

 その系譜を重んじ今年、北大水産学部の研究者が中心となって水産科学の魅力を語る「北水ブックス」が創刊され、本書はその第2弾。著者の松石隆さんは、1964年東京生まれで、東京大学教養学部から東京大学海洋研究所(大学院)を経るなどして、93年、北大水産学部に赴任。専門は水産資源学および鯨類学で、SNH代表のほか、北大鯨類研究会顧問を務めている。

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