読むべき本、見逃していない?

兵士のいるところに女あり、バグダッドには日本人女性も

  • 書名 娼婦たちは見た
  • サブタイトルイラク、ネパール、中国、韓国
  • 監修・編集・著者名八木澤高明 著
  • 出版社名株式会社KADOKAWA
  • 出版年月日2019年1月10日
  • 定価本体880円+税
  • 判型・ページ数新書判・336ページ
  • ISBN9784040822891
BOOKウォッチ編集部コメント

 日本で売春や娼婦について書いた本と言えば、荻上チキさんの『彼女たちの売春(ワリキリ)』や鈴木大介さんの『最貧困女子』、高木瑞穂さんの『売春島』などが思い浮かぶ。荻上さんと鈴木さんの著書は、貧困やDVなど家庭環境の問題から売春しか収入の道がない若い女性の存在を指摘していた。また『売春島』は、三重県のある島全体が売春によって成り立ってきた歴史的な経緯を明らかにしていた。女性が生きるための最後の手段として売春があった、ということだ。

 世界はどうだ、ということなら本書『娼婦たちは見た』(角川新書)が詳しい。2016年に刊行された『娼婦たちから見た戦場』を改題、このたび文庫化された。

 著者の八木澤高明さんは、雑誌「フライデー」の元カメラマン。ネパールで反政府武装闘争を行っていた通称マオイスト(ネパール共産党毛沢東主義派)を取材するため、ネパール西部の山村に行って以来、15年以上各地で娼婦を取材してきた。

 インドの影響が強いネパールでもカースト制度があり、売春カーストも存在する。さらにネパール西部には「デウキ」という、考えられないような制度が残っていた。寺に捧げられる少女で、神として祀られる一方で、村の男たちの慰みものにもなる。ある村で58歳の「デウキ」に会った。彼女は10歳で寺に引き取られ、生理がくるようになると村の有力者たちがかわるがわる彼女の体を求めた。3人の男との間に3人の子どもが出来た。背は曲がり手は皺だらけで80歳にしか見えない彼女の人生とは何だったかと思うと、うなだれるしかなかった、と書いている。

 ネパールの次に訪れたイラクのバクダッドではロマの娼婦を取材した。かつて「ジプシー」と呼ばれた移動民の末裔で、フセイン政権下では少数民族保護の政策によって楽士などをやりながら生活できていた。しかし、政権崩壊とともに差別視され売春するようになったという。バグダッドは米軍進駐以来、風紀が乱れ、「アメリカがイラクにもたらしたのは、民主主義ではなくポルノだ」とささやかれていた。娼婦も日本人、南米や東南アジアの女性も多く、装甲車の中で米兵の相手をする娼婦もいるという。著者はその話を聞いて、戦後の日本で米兵の相手をした「パンパン」のことを思い出していた。

中国の「エイズ村」

 中国の河南省では売血が原因で住民の多くがエイズに感染した「エイズ村」を取材した。出稼ぎに来た「民工」が最底辺の娼婦を買い、さらに売血によってエイズが蔓延したのだ。中国の2014年末のHIV感染者とエイズ患者は50万人。夫が売血してエイズに感染し移ったという顔に赤い発疹のある女性に取材した。特許期間が過ぎたジェネリックの抗ウイルス治療薬を見て、疑問を感じた、と書いている。後日再び村を訪れ、纏足をした老婆を偶然見つけ撮影していると警察に連行され、フィルムを没収され省外に出ることを余儀なくされた。エイズと纏足という恥部を外国人に知られるのを忌避したのだ。

 それから著者の纏足へのこだわりが始まる。福建省で86歳の老婆を取材する。4歳の時から足に布を巻かれ纏足になったという話を聞いて、人の行いの奇怪さに著者は思いをはせている。

 韓国では、慰安婦問題や集会にふれながら、米軍基地の近くでかつて米兵を相手にした「洋公主」と呼ばれる元娼婦に取材した。1964年には米軍が基地村に落とす金は韓国の外貨獲得額の10%を占めていたというから、その規模がわかる。「戦後の売春史において、日本と韓国はほぼ同じような道を歩んできた」と書いている。

 戦場取材から始まった著者の旅は、最後は思いもよらないところまで行ってしまったようだ。「フライデー」の元カメラマンらしいフットワークの軽さが、常人には及ばない取材を可能にした。

 八木澤高明さんの本としては『ストリップの帝王』を紹介済みだ。  

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