読むべき本、見逃していない?

新テスト導入で高スペックの後輩たちに追い抜かれないためには

  • 書名 未来のエリートのための最強の学び方
  • 監修・編集・著者名佐藤優 著
  • 出版社名集英社インターナショナル 発行、集英社 発売
  • 出版年月日2019年2月10日
  • 定価本体1300円+税
  • 判型・ページ数四六判・175ページ
  • ISBN9784797673692
BOOKウォッチ編集部コメント

 元外務省主任分析官で作家の佐藤優さんには、教養や読書、勉強法についての著作も多い。本書『未来のエリートのための最強の学び方』(集英社インターナショナル 発行、集英社 発売)は、佐藤さんが母校・同志社大学で行った講義などをもとにした本。内輪向けの本かと思ったら、さにあらず。教育改革によって出現する未来の人材に負けないために、どう学び直すかを説いた実践の書である。

 1979年の共通一次試験の導入以来、大学の偏差値による序列化が進んだ結果、文科系の質の低下が進んだという。偏差値を上げるために入試科目から数学を外す私立大学文科系学部が増えたからだ。高校でも数学は捨て、英語、国語、社会に特化した勉強をするようになった。だから「理科系の基礎がまったくない学生が生まれてしまった」と佐藤さんは嘆く。分数もできない大学生が社会に出てくるようになったのだ。

数学、論理学、哲学の勉強を

 一方、超難関大学を卒業し外務省に入ったエリートたちが、研修先のモスクワの大学を退学させられた話も紹介している。ロシア語は問題なかった。数学、論理学、哲学が分からず、ついていけなかったということだ。以後、佐藤さんは外務省の研修指導の際に、この三つを学ばせたといい、『大学への数学』(研文書院、現在は絶版)、『論理学』(東京大学出版会)、『論理トレーニング101題』(産業図書)、『もういちど読む山川倫理』(山川出版社)をテキストに使った。世界スタンダードの教養を身につける必要がある、と強調する。

 そこで、来年2020年から始まる新しい大学入試制度へと話が移る。「大学入学共通テスト」(新テスト)は、単なる記憶力ではなく、知識の運用能力が問われる問題が出てくる。文科省が目指しているのはアメリカモデルの「文理融合」型の教育だ。その後、高校、中学、小学校と教育内容が変わり、約20年後にはまったく違ったスペックを持った人たちが社会に出てくると予想する。

 そこで現役の学生に、不足していると思われるスペックを10年計画で自習するよう訴えている。「あと20年したら後輩に追い抜かれる時代になる」と。

とりあえず数学と英語の学び直しを

 実際に佐藤さんが同志社大学神学部で行っている授業を紹介している。なんと数学の抜き打ち試験をしたのだ。さいわい成績は良かったが、文系ならば、まず中学3年生レベルの数学検定3級の合格をめざそうと、書いている。

 そして入学後、数学を必要としている学生に勧めるのが、『大学基礎数学 キャンパス・ゼミ』(マセマ)。累計で数百万部出ている隠れたベストセラーだそうだ。英語についても『東京大学教養英語読本Ⅰ・Ⅱ』(東京大学出版会)などを使った勉強法を紹介している。

 佐藤さんは、沖縄の名桜大学という公立大学でも客員教授をしている。そこで数学検定や英語検定を活用した学生のレベルアップを図った。その結果急速に偏差値は上がり、就職率もよくなったという。

なぜ小保方さんは出世したのか

 第2部では、同志社大学生命医科学部に設けられた「サイエンス・コミュニケーター養成副専攻」について、野口範子学部長と対談している。「文理融合」の教養の底上げが論じられている。その中で面白いと思ったのは、小保方晴子さんの「STAP細胞」事件についての言及だ。

 佐藤さんは彼女が「(高校は分からないが)一度も普通に試験を受けないで進学や就職をしている点」に注目する。彼女の資質よりも、むしろなぜ理研で研究室を持てるまでに出世したのか、その構造的要因を解明しないと本質は見えない、と指摘している。

 最後にエリート教育とは別に、現在大学に入っている学生たちが教養の底上げを手っ取り早くできる方法を伝授している。地方公務員上級に合格するレベルを目指すこと、具体的には『地方上級教養試験過去問500』(実務教育出版)の利用を勧める。順番に解いて解説を読むだけで、教養の欠落部分を埋められるという。

 最近、高校の教科書や参考書が大学生や社会人によく売れるようになったことは、すでに学び直しをしている人たちが多くいることを示しているのかもしれない。

 早稲田大学は、現在の高校1年生が対象となる2021年度入試から、政治経済学部、国際教養学部、スポーツ科学部の一般入試で、数学を必須とすると発表し、衝撃を与えた。また今年(2019年)の私立中学入試では、大学附属校が軒並み志願者を増やした。新テスト導入による大学受験の変化を見越して、早目に大学を決めようとする親の意向の現れとみられる。

ともあれ、来年から大学入試のかたちが変わり、やがて新しいスペックを備えた「新人類」が社会に参入してくることは間違いない。日本の企業や社会にどんな変化が生まれるのか、注目したい。

 佐藤さんは前著『埼玉県立浦和高校』(講談社現代新書)でも、高スペック社会人の出現を予測している。  

オンライン書店で詳しく見る(購入もできます)

デイリーBOOKウォッチの一覧

一覧をみる

アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!

おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

出版社の皆様!

御社の書籍も、
BOOKウォッチに
掲載してみませんか?

sub