読むべき本、見逃していない?

団地は移民のゲートウェイになるだろう

  • 書名 団地と移民
  • サブタイトル課題最先端「空間」の闘い
  • 監修・編集・著者名安田浩一 著
  • 出版社名株式会社KADOKAWA
  • 出版年月日2019年3月23日
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数四六判・253ページ
  • ISBN9784041013885

 本書『団地と移民』(株式会社KADOKAWA)を読み、久しぶりに骨太なルポルタージュを読んだ、という感想を持った。

 著者の安田浩一さんは、「週刊宝石」「サンデー毎日」記者を経てフリーに。ヘイトスピーチ問題を取り上げた『ネットと愛国』(講談社)で、第34回講談社ノンフィクション賞を受賞するなど事件、社会問題に実績あるライターだ。

 『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書)など、外国人労働者の問題を長期間取材し、多国籍化する団地に注目してきた。本書は、かつて「夢と希望」の象徴だった団地の歴史を追い、「限界集落化」する団地、外国人居住者との共存を迫られる団地の実像をあますところなく描いた力作だ。

 第1章「都会の限界集落――孤独死と闘う」の舞台は千葉県松戸市の常盤平団地。総戸数4839戸、4階建て中層公団住宅170棟からなる「東洋一」の団地といわれた。いま半数が65歳以上の高齢者。「孤独死110番」を作った自治会長の話を紹介している。

 第2章では日活ロマンポルノ『団地妻 昼下がりの情事』のロケに使われた東京都調布市・狛江市の神代団地を取り上げている。全戸が賃貸なので多くは違う場所に移り住んだ。本筋とは関係ないが、『団地妻』を撮った監督、西村昭五郎(2017年没)の晩年を取材したくだりが印象に残る。青森県八戸市の妻の実家で息を引き取った。身勝手に生きた西村を著者は団地に重ね合わせ、「輝きの中で生まれ、黄昏の中で老いていく」と書いている。

 こうした団地の歴史を押さえた上で、現在の団地のルポへと筆を進める。全世帯2500戸の半数が中国人という埼玉県川口市の芝園団地。排外運動の発火点となった団地だ。いま中国人との交流を進める若い世代が誕生、2018年度には自治会役員に社会学を専攻する中国人住民が選出されるなど、新しい動きが紹介されている。

 かつて「原爆スラム」と呼ばれたバラック街を一掃した「広島市営基町高層アパート」は、いま中国残留孤児が多く住み、「反中国」の空気が侵食しているという。一方、学生らを中心とした地域活性化「基町プロジェクト」も行われている。また愛知県豊田市の保見団地は全住民8000人の半数がブラジル人など日系南米人で占められている。かつて右翼や暴走族との抗争事件があったが、いま共生をさぐる動きがあるという。

団地を救うのは外国人労働者?!

 2019年4月から「特定技能」という在留資格が設けられ、最長10年間、単純労働における外国人の雇用が可能になる(もう来月のことだ!)。今後5年間で35万人の外国人労働者の受け入れが見込まれる、と著者は予測している。そしてこれらの外国人を政府は決して「移民」とは呼ばないが、実質的な「移民」として団地がその「ゲートウェイ」になるだろう、と指摘する。さらに、「限界集落化した団地を救うのは外国人の存在かもしれない」と大胆な予想も。

 団地の創生期を記述した第1、第2章とフランスの移民問題を取材した第4章「パリ、移民たちの郊外」が全体に厚みを加え、著者の見解に説得力を与えている。

 評者も転勤のたびに全国各地の団地にはお世話になってきた。今もまた郊外の団地に住んでいる。団地族には見逃せない一冊だ。

 安田さんの本として『「右翼」の戦後史』(講談社現代新書)、また外国人との共生について、『〈超・多国籍学校〉は今日もにぎやか!――多文化共生って何だろう』(岩波ジュニア新書)を、増える外国人については『コンビニ外国人』(新潮新書)を本欄で紹介している。   

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