読むべき本、見逃していない?

「おサイフ拾った、ラッキー」・・・犯罪になりかねないよ

  • 書名 こども六法
  • 監修・編集・著者名山崎聡一郎 著
  • 出版社名弘文堂
  • 出版年月日2019年8月20日
  • 定価本体1200円+税
  • 判型・ページ数A5判・192ページ
  • ISBN9784335357923

 子ども向けの分かりやすい法律本がどうしてないのかと思っていた。日本国憲法の理念とか、憲法9条がどうだとかではなく、子どもワールドで起きる事件や犯罪がらみのことについて、法律面をベースにした解説書がどうしてないのかと。

 そう思っていたら『こども六法』(弘文堂)が出た。小学生でも読めるように漢字にはすべてルビをふり、法律のむずかしい用語もできるだけ分かりやすくして、イラスト付きで解説している。少なくとも評者にとっては待望の本である。

知っていたら役立つ

 「法律はみんなを守るためにある。知っていれば大人に悩みを伝えて解決してもらうのに役立つよ!」

 本書はそう呼びかけている。たしかに、いじめ、虐待、家庭内暴力。万引きや限度を越えたいたずら。子どもたちの身近なところでしばしば厄介なことが起きている。子どもは法律知識がないので、どう対処していいか分からない。

 あるいは学校で先生が「いじめはやめましょう」などと叫んでも、聞く耳を持たない子どももいる。いくら理念的なことを口走っても、「いじめ」が面白くて、「いじめ」にハマっている子どもには「うるせーなあ」。ピンとこない、真剣に受け止めない。中には「子どもだから罰せられない」と、タカをくくっているワルもいる。

 実際のところ、事件は大人の世界だけで起きるのではない。子どもワールドでも起きているのだが、「教育的指導」が優先される。よほどのことでないと事件にならない。「被害者」の側がひたすら我慢を強いられるケースが少なくない。

「法律を知らないことは言い訳にならない」

 本書は「第1章 刑法」「第2章 刑事訴訟法」「第3章 少年法」「第4章 民法」「第5章 民事訴訟法」「第6章 日本国憲法」「第7章 いじめ防止対策推進法」に分かれている。それぞれの章で、子どもたちが抱く疑問などをもとに、それが法律的にはどういうことになるのか、分かりやすく解説している。

 例えば「第1章」では、いくつかのありがちなケースについて教えてくれる。「法律を知らないことは言い訳にならないよ!」という項目では、「おサイフ拾った、ラッキー、ジュースを買おう」というのは、「遺失物横領罪」になるということ、「危険を招くいたずらは重い犯罪になるよ」の項目では、線路に石を置くなどのいたずらは重罪になると警告する。コンビニで使おうと思って、コピー機でお札をコピーした場合なども、笑い話では済まなくなる。

 「14歳になるまでは犯罪にならないの?」という疑問も取り上げられている。「詳しくは少年法を見てみよう」とある。そこで「第3章」に行くと、「子どもには罰だけではなく教育が与えられる」「子どもだからといって謝るだけではゆるされない」「14歳以上は大人と同じ罰を受けることもあるよ」と、子どもと処罰の関係がさらに詳しく書かれている。

次は各論編を

 子どもと縁遠いように思われる「民法」も取り上げられている。「大人のフリをして買い物をしてはダメ!」という項目では、「未成年者が、自分は成年であると嘘をついて契約を行った場合は、その行為を取り消すことはできない」という同法21条を紹介、ネットで大人しか買えないものを大人と偽って買った場合などのことに触れている。

 最終章では、子どもたちにもっとも関心が高いであろう「いじめ」について、大人にはいじめから子どもを救い、いじめをなくす義務があることを強調している。

 本書の著者の山崎聡一郎さんは1993年生まれ。小学生の時はいじめで手首を骨折するほどの暴力を受けたことがある。中学の時は逆にいじめっ子になっていた。慶應義塾大学総合政策学部卒業、一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。現在は教育研究者、写真家、俳優。合同会社Art&Arts代表。慶應義塾大学SFC研究所所員。いろいろな肩書がある。2013年から「法教育といじめ問題解決」をテーマに研究活動と情報発信をしているという。出版元のHPによれば、クラウドファンディングで書籍化資金を集めたようだ。

 劇団四季「ノートルダムの鐘」に出演するなど、ミュージカル俳優としての顔も持つ。学校での特別講師にはぴったりだろう。そのうち「こども六法」をネタにしたミュージカルなどもつくれそうだ。

 本書はいわば総論編。次は「いじめ」「虐待」など個別のテーマで、より具体的な事例をもとにした各論編を出してもらいたいとも思った。「いじめ」で被害者が自殺したりすると、巨額の損害賠償が起きかねない。「子どもの火遊び」は大惨事の可能性がある。SNSでは、事件の被害者だけでなく加害者のプライバシーもさらされる。親も子も知っておくべきことは多い。

 関連で本欄では『加害者家族の子どもたちの現状と支援――犯罪に巻き込まれた子どもたちへのアプローチ』(現代人文社)、『その子の「普通」は普通じゃない』(ポプラ社)なども紹介している。

オンライン書店で詳しく見る(購入もできます)

デイリーBOOKウォッチの一覧

一覧をみる

アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!

おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

出版社の皆様!

御社の書籍も、
BOOKウォッチに
掲載してみませんか?

sub