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不況のいまこそ「熱い職場」を復活させよう!

   「百年に一度の大不況」と言われるが、職場活性化の問題は、今に始まったことではない。景気の良し悪しにかかわらず、まだまだやるべきことはあるのだ。今こそ「熱い職場」で知恵を絞って、状況を打開していこう。

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ユニークな「職場活性化法」をどんどん紹介していく

    日々ケタ違いの赤字額や人員削減の数が、経済ニュースを賑わせている。まさに急転直下の大不況が到来している。突然、暗黒時代が始まったかのように報道されているが、リーマン・ショックまで5年以上続いた景気拡大は、果たして私たちの職場を豊かにしていたのだろうか。

    新入社員の3人に1人が3年以内に会社を去り、うつ病で休職する社員が目立ち始め、同じフロアの人ともメールでやりとりする現象が顕在化したのは、この頃ではなかったか。

    『不機嫌な職場』と題する新書が、25万部を超えるベストセラーになった。こんなネガティブなタイトルの本が売れるなんて、私たちニッポン人は、いつからそんなに自虐的になったのか。不景気の要因を並べても、景気は回復しない。「職場がギスギスしている要因」「元気がでない原因」を100個並べてみても、職場は活性化するはずもないのだ。

    当コラム「熱い職場委員会」では、こんな傾向とは逆に「ご機嫌な職場」のみをテーマとする。「職場が活性化する方法」だけを具体的に紹介していく。目的はズバリ! みなさんの職場を明るく、元気にすることだ。もう景気頼みはやめて、知恵を絞って状況を打破しよう。

    私は、前職のリクルートおよび優良企業のコンサルティングを通じて、多くの会社の職場活性化策を見てきた。その数はざっと100以上となるが、そのうち48の手法を『職場活性化の「すごい!」手法』(PHPビジネス新書)にまとめた。当コラムでは本書に書いたユニークな方法のエッセンスや、掲載しきれなかった方法を紹介しようと思う。細かいエピソードも書いていきたい。

    具体的には、お金を使わずにインパクトを与える「インセンティブ」の設計や、能力はあるが成果が上がらずに悩んでいる人の「励まし方」、新たな視点を導入する「他流試合」の手法などを紹介しようと考えている。「飲ミュニケーション」や「ハチマキ」などは、今の若手には抵抗感があるだろうが、ここは経験者として効能を説いて導入を勧めるつもりだ。

マネジメントを機能させるには「熱い職場」が必要だ

    ところで、連載に当たり「職場活性化」の考え方を確認しておきたい。この不況下で誰もが途方に暮れているのは、これまで成果を上げてきた「開発」や「販売」の方法論では、全く太刀打ちできなくなっているからだ。売れるサービスをいかに開発するか、商品をいかに売っていくか、誰もが「方法論」に行き詰まりを感じている。

    私が考える「職場が活性化された状態」とは、職場のメンバーが活発にコミュニケーションを取り、知恵を出し合って、状況を打開する「方法論」について自由闊達に議論し、実行をトライし続けている状態を想定している。単にワイワイ盛り上がっているだけでは、もの足りない。

    めざとい大手企業は潮目の変化に敏感に対応し、社内研修のマネジメント講座の内容を、従来の「数量管理」から、「コーチング」「ファシリテーション」「メンターシップ」といった手法へとシフトしている。こういった研修プログラムは、実施した方がいいに決まっているのだが、そのベースのところで(特に秀才の幹部候補たちに)あまり知られていない現実がある。

    それは「部下との冷ややかな人間関係の中では、どんなに素晴らしいマネジメント手法を研修で学んでも、全く機能しない」ということだ。たとえば「仕事ができるから期待する」「仕事ができないから期待しない」というマネジメントの“常識”が、実は職場活性化のボトルネックになっていた、というようなことが起こりうる。

    職場を活性化するためには、仕事ができるか否かの前に、まずはメンバー一人ひとりの「人間としての価値」を認めることが不可欠である。もちろん業績が低ければ、人事考課は低い評価となる。しかし、評価は低くても、努力を怠らずに本気で取り組んでいる価値を認めた上で、言葉にしてその本人や周囲に返していくことが、活性化した職場の空気を醸成することを忘れてはならないのである。

大塚 寿

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