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新入社員の教育はだれがやるのか?

   新年度を迎えて、真新しいスーツを着込んだ新入社員と思しき集団を見かけて、その初々しさに思わず笑みがこぼれる季節となった。みなさんの職場でも、研修を終えた新人の受け入れ準備が進んでいるのではないだろうか。今回は、新人を短期間に即戦力に育て上げる「ブラザー・シスター制」で効果を上げるコツを紹介したい。

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複数のブラザー・シスターを設けて「不公平感」を減らす

   「ブラザー・シスター制」とは、「OJTリーダー制」「新人指導者制」といった呼称も用いられるが、若手先輩社員が新人とペアになり、一対一で仕事のやり方や進め方について指導する制度である。いわゆる「メンター制度」の新人版だ。エンジニア、スタッフ業務、営業、コンサルタント等ほとんどの職種で効果が認められ、多くの企業で採用されている。

   しかし、新人側からも先輩社員側からも、この制度に対する不満は少なくない。新人側の不満は、何といっても「先輩社員の当たり外れ」である。自分のことで精一杯で、なにも構ってくれない先輩についてしまった新人は、仕事のできるスター的先輩についた同期社員を羨ましく思って、モチベーションを低下させてしまうのだ。

   そんな当たり外れを是正するには、先輩社員を複数にしたり、定期的にローテーションさせたりする方法がある。私の新人時代は前者で、男性(ブラザー)・女性(シスター)が2名ずついた。新人が職場に慣れてきたあたりで、「勝手にメンターシップ」的に自らがブラザー・シスターを選ぶ方法も効果を上げている。

   一方で、先輩社員側の不満もある。実はこの制度、会社としては新人育成もさることながら、指導を通じて先輩社員にも成長して欲しいという願望も強かったりする。しかし、アサインされた先輩社員には「ただでさえ忙殺されているのに、新人の世話なんて…」という本音がある。

   しかも新人は「何が分からないかも分からない」とか同じことを何度も尋ねるとか、話も長くて何を言いたいのか要領を得なかったりする。スパルタ式にやれば「パワハラ」と言われ、仕事の後にフィードバックしようとすれば「勤務時間内に」と言われ、それじゃ飲みながら、というと「アフターファイブはちょっと」と困惑される。

「1日5質問・5秒ルール」でコミュニケーションを活発に

   新人と先輩社員がそういう関係になってしまうと、話は簡単で、適当にあしらって済ますのがベストな選択だと気づく。「何かあったら遠慮なく声をかけてね」と優しく声を掛けて、ほったらかしを決め込んでしまえばいいのだ。その結果、ぜんぜん成長しない新人の増殖となる。

   見かねたマネージャーが「ちゃんと面倒見てくれよ」と指摘しても、「遠慮なく声をかけるように言ってますから」と反論されて終わり。新人が何かを尋ねようとしても、背中には「忙しい俺に聞くな」オーラが漂っており、顔には「そんなこと自分で考えろ」と書いてある。――こんなことが、毎年繰り返されているのだ。

   この問題に対して、もっとも効果的な対策は「1日5質問ルール」と言われている。これは「新人はブラザー・シスターに1日5つ質問しなければならない」「ブラザー・シスターは質問に答えなければならない」というルールだ。ルールなので、遠慮がちな新人も質問しやすくなるし、先輩社員も対応せざるを得ない。

   ただし、質問を義務付けると、同じ質問を繰り返したり、取るに足らない冗長な質問をしたりする新人も出てくる。そのときには「5秒ルール!」と付け加えるとよい。質問は5秒以内にしてもらうのだ。

   厳密に5秒で終わるかどうかは別にして、「5秒以内にまとめて尋ねる」というルールを設けるだけで、新人は考えてから質問するようになる。これで的外れな質問は激減する。若者の教育は大変だが、自分も先輩や上司にお世話になって一人前にしてもらったわけだから、せめて自分が育てられた借りは新人たちに返しておきたい。

大塚 寿

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