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突然キレる「不気味な問題社員」どう扱えばいいか

   人事担当者は、各部署から「もう手に負えない」という問題社員への対応を依頼されることがあります。しかし、明らかな不正や犯罪行為をしたわけではない場合は、対応方法に頭を悩ませることがあります。「こんなときは、どう対応したらいいのでしょうか」という相談が来ました。

逆恨みを怖れて「腫れ物」にふれるような扱い

――金融会社の人事部門に勤めています。いま、行内でSEをしている30代前半の男性社員の処遇に頭を悩ませています。彼は入社当初は真面目で、仕事もできたのですが、入社5年目あたりから、パソコンに向かってブツブツひとりごとを言ったり、いきなり立ち上がって周囲の人に言いがかりをつけるなど、不気味な言動をするようになりました。
   日ごろから上司は、やんわりとたしなめていたようですが、にらみ付けたりニヤニヤしたりして、まったく聞き入れようとしません。そのうち「注意して逆恨みされてはたまらない」と誰も注意もしなくなり、腫れ物に触れるような扱いが続いていたようです。
   この男性社員は社外の取引先と接する機会もあるのですが、これまで何度かクレームを受けています。

   「人を見下したようなあの態度はなんだ。あんなヤツのいる会社とは取引しないぞ」

と激怒した取引先に、部門長が謝罪に出向き、なんとか事態を収めたこともありました。
   その際、部門長と直属の上司が、彼を呼んで注意しましたが、

   「私はきちんと仕事していますよ。説明しても理解できないあの人が悪いんです。あれで部長なんて信じられませんね。会社のレベルの低さがよく分かりますよ」

と、あくまで自分は悪くないと言い張っています。
   部門長もホトホト手を焼いており、「もう手に負えないから、人事で引き取ってくれ」と言われています。このような問題社員には、人事としてどう対処すればいいのでしょうか。このままでは、一緒に働くメンバーもおかしくなってしまいます――

臨床心理士・尾崎健一の視点
「カウンセラーとの面談を検討してみる」

   この社員は、単に人間関係を築くのが難しい人なのかもしれませんし、すでに何らかのメンタル系の病気にかかっているかもしれません。しかし、いきなり本人に「病院に行ってみたら」と言っても、反感を買うだけです。そんな場合には、仕事に直接関係する具体的な問題点を指摘して、解決を図る手段の中に、専門家との面談などを組み込んでおくことが考えられます。

   まずは「納期が守れていない」「顧客からクレームが来ている」などの問題点を指摘し、改善目標を設定します。そして、目標が達成できない場合の方策として「他のメンバーの協力を仰ぐ」「事前に資料を上司に確認してもらう」などとともに、「顧客やチームメンバーとの関係改善のためにカウンセラーに相談する」という項目を入れておくのです。

   このプロセスで大切なのは、本人の言い分を理解しようと努力することです。人間は誰しも、自分を理解しようとしない人の言うことは、耳に入れません。どんなに理不尽で社会性がないように思えても、本人にとっては正当な言い分なのです。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「できれば辞めてもらったほうがいい」

   このようなケースの大半は、問題社員を放置したり、誤った指導をして、問題が大きくなってから人事部に持ち込まれることが多いものです。各部署の所属長には、問題が大きくなる前に人事部と情報を共有するよう依頼し、早期の対応を図ることが重要です。

   ご相談のような社員を放置しておくと、他の社員のモチベーションや生産性が下がるので、できれば会社を辞めてもらったほうがいいでしょう。本人も、周囲から相手にされずに悶々としているより、新たな環境で心機一転した方がよいかもしれません。

   とはいえ、そう簡単に辞めさせることはできません。解雇で揉めた場合は、客観的な判断材料として「会社が改善努力をしたかどうか」が問題になります。適切な異動先があれば配置転換をして、本人に再起のチャンスを与えることも考えられますが、それができない場合には、注意・指導を繰り返し行うことが必要です。その際、注意・指導の内容を文書化し、証拠として残しておくことが大切です。

(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。