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自民党に見る「組織崩壊のプロセス」

   最近、自民党から腐臭が立ち上ってくる。「腐臭なんて昔からしてただろう」と言われそうだが、政治とカネ云々ではなくて、組織自体が末期的という意味だ。そういう意味では「死臭」と言うべきかもしれない。

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自民党も「年功序列」色の強い組織だった

   だいたい、以下のような現象が外から見ても目につくようになると、その組織は崩壊過程に入っているものだ。


1.若手~中堅が勝手に動き出す

   定年制厳守を求め、一部の若手議員を中心に署名活動が行われるなど、各自が派閥を離れて独自の動きを見せている。特に河野グループは公然と上層部を批判し、代表選でも善戦するなど鼻息は荒い。

2.ベテランの引退

   津島雄二、鈴木恒夫、笹川尭など、閣僚経験のあるベテラン議員の引退も続いている。

3.キーパーソンの流出

   渡辺喜美だけでなく、与謝野馨や舛添要一までが新党立ち上げを示唆するなど、もはや分裂状態といっていい。


   こういった現象は、すべて報酬システムで説明可能だ。党が拡大路線であれば、黙って上層部に従っていればポストも貰えたが、こういう状況では黙っていてもメリットなど何もない。もう十分元をとったと考えるベテランは、ここから挽回する苦労を考えれば引退した方がメリットが大きい。そして、こういった状況が見えている肉食系の人間は、座して待つより打って出る。

   もともと「当選5回で大臣ポスト」といった具合に、自民党はきわめて年功序列色の強い組織だった。具体的な人事の運用は派閥レベルで行われていたが、これは大企業も全く同じだ。

   「新事業部の事業部長ポストは営業部門から」「いやいや、ここは管理部門でしょう」なんて綱引きは、どこだってやっている。要するに派閥の論理というのは、本質的には年功序列の論理ということだ。

理念無き政党は猿山の猿だ

   もっとも、政治組織には民間企業と大きく異なる点もある。それは理念の有無だ。民間はあえて挙げれば営利目的なのだが、政治家は人によってさまざまに違うものを抱いている。

   面白いのは、彼ら自民党が「派閥の論理」以外は何も持っていなかったことだろう。同じ政党を組んでやってきた以上、なにか共有されている理念のようなものはあってしかるべきなのだが、驚くべきことに自民党にはそれがないのだ。

   「いや、本当はあるんだ」というセンセイもいるんだろうけど、今年に入って皆で相談して新綱領を作っているくらいだからやはり無かったのだろう。

   これは結構凄いことだと思う。だって、ずっと操縦桿を握ってきたパイロットが、よく見てみたらお猿さんだったようなものだから。よくこれまで墜落しなかったものだと思う。たぶん、自民党というのはいつからか「与党同好会」となっていたのだろう。与党でなくなった以上は解散するしか道はない。

   ところで、新たにコクピットに座った民主党も、実はお猿さんなのではないか。政権内に国民新党から社民党まで抱え、半年経っても日本をどこに向かわせたいのか分からない鳩山政権を見ていると、どうもそういう気がしてならない。

   たぶん、今度の参院選で自民党は名実ともに崩壊するだろう。それをきっかけに政界再編がスタートするはずだが、それが猿同士の縄張り争いではなく理念によってなされることを願うばかりだ。

城 繁幸

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