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癒しは脳で起こっている 「セロトニン」の分泌を増やす6か条

   鬱陶しい気候と忙しい日々が続く中、「疲れたな・・・」なんて、ふと口走っていませんか。幼い頃、母親に頭をなでられた時を思い出してみて下さい。なんだかほんわかして、癒される感じがしたことでしょう。今回は、この「癒し」について考えてみましょう。

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癒しは「脳」で起こっている

セロトニンは「癒しのホルモン」
セロトニンは「癒しのホルモン」

   さて、「癒し」とは、どこから来るのでしょうか。お母さんの手から「癒しビーム」が出ている!…わけではありませんね(そのようなお母さんもいるのかもしれませんが)。変化が起きているのは、私たちの「こころ」の方なのです。

   こころは、実は脳の中にあります。脳細胞と脳細胞の間に、シナプスと呼ばれる狭いすきまがあり、ここで神経伝達物質が手渡されることで、さまざまな命令や情報がやり取りされて、私たちの感情にも影響を与えるのです。

   この神経伝達物質が、一般に「脳内ホルモン」と呼ばれるものの正体で、中でも癒しに深く関わっているのが「セロトニン」です。快楽を司るドーパミンや、興奮を司るノルアドレナリンといった他の神経系と連携して、ブレーキのような働きをすることで、安らぎや落ち着きを感じさせてくれます。

   セロトニンが減少すると抑うつ状態をきたすといわれ、母と子のスキンシップはセロトニンの分泌を増やすとの報告もあります。まさに「癒しのホルモン」といえそうです。

   それでは、セロトニンの分泌を増やすには、どんなライフスタイルを送ればよいのでしょうか。次に6つのポイントをまとめたので、ぜひ心がけてみてください。

セロトニンの分泌を増やす6か条

1.起きたらすぐに太陽の光を浴びること

   セロトニンは、日中の明るい時間帯に多く分泌されるホルモンですが、その切り替えのスイッチとなるのが、朝、起床時の日光です。

2.規則正しい睡眠リズムをつくること

   セロトニンは、以前の記事でも紹介した睡眠ホルモンであるメラトニンの材料にもなり、夜にはメラトニンが私たちを睡眠へといざないます。明るくなったら起きて活動し、暗くなったら眠るというのは、生理学的にも理にかなっていることです。

3.食事はバランスを考え、よく噛んで食べること

   セロトニンの材料は、肉や魚、大豆などのたんぱく質を構成する「トリプトファン」というアミノ酸です。私たちが体内では作ることのできない「必須アミノ酸」の1つで、食べ物から十分に摂取することがとても重要です。

   また、セロトニン合成のためには、ビタミンB6も必要不可欠。まぐろ、かつおなどの赤身魚、レバーや肉類などは、一石二鳥のおすすめ食品といえます。また、食べ物をよく噛むことで、次に説明する「リズム運動」に通じる効果があります。

4.リラックスして、ゆっくりとした呼吸を意識すること

   ウォーキングや自転車こぎなどの「リズム運動」のほか、リラックスしてへその下(丹田)を意識してゆっくり呼吸する「丹田呼吸法」は、セロトニンの分泌を増加させるという報告があります。定期的な運動習慣をこころがけましょう。

5.何事も頑張りすぎず、適度な休息を心がけること

   慢性的なストレス状況は、神経の活動を抑え、セロトニンの分泌を減らしてしまいます。何事も頑張り過ぎず、心と身体を休める時間を設けることが、セロトニンの合成効率を保つ鍵になりそうです。

6.家族との時間やスキンシップを大切にすること

   母親の癒し効果と同じく、家族や恋人、ペットとのスキンシップも、セロトニンの分泌を増加させます。


   こうして見てみると、どれも普段から大切といわれている「普通の生活」ばかりですね。生活のリズムや食生活が乱れがちですが、忙しい中にも「癒し」のあるライフスタイルを取り込むよう心がけてください。


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今回の筆者:大井 雄一(おおい・ゆういち) 筑波大学大学院 人間総合科学研究科産業精神医学・宇宙医学グループ所属。日本医師会認定産業医。労働者のメンタルヘルスと生活習慣を主な研究テーマとする。日本原子力研究開発機構(JAEA)などの産業医として労働者の健康管理に携わっている。