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震災後の採用「人数に変更なし」92%は本当か

   就職情報会社のディスコが、東日本大震災が新卒採用に与える影響についてアンケートを実施したところ、2012年度の採用人数は「当初の計画通りで変更なし」と答えた会社が92.2%にのぼったという。

   全国の主要企業938社から回答があった。震災の影響で採用人数を「減らす」と答えた会社は5.4%、「採用を取りやめる」と答えた会社は1.4%にとどまった。

油断できない?「卒業後3年新卒扱い」の影響も

計画を変えずに選考時に絞り込むかも
計画を変えずに選考時に絞り込むかも

   ただでさえ就活環境が厳しいのに、震災でさらに悪化してはたまらない。就活生には朗報と言える結果だ。

   しかし、キャリア教育プロデューサーの新田龍氏は、「9割超が計画通り」という数字がひとり歩きし、就活生が楽観的になってしまうことを危惧する。

「震災の影響は連鎖的に広がっており、経済見通しが暗い中で、企業が採用戦略を見直さないはずがありません。選考段階での審査基準を厳しくし、最終的に当初予定より少ない人数で選考を終わらせる企業が増える可能性があります」

   人事情報サイトのHRプロによる別の調査では、採用者数が予定より「1~2割減少する」と予想した会社は14.6%。「3割以上減少する」という回答も5.4%あった。調査後の余震や原発の状況もあり、経営計画をさらに修正する企業が出るかもしれない。

   震災とは別に、新田氏は「卒業後3年新卒扱い」の影響も大きいと指摘する。

「厳しかった2011年度就活の影響で、就職浪人や就職留年、フリーターなどをしながら就活を続けている人もいます。これにより、本来は50万人程度のはずの新卒就活生が、60万人から70万人程度にまで膨れ上がっている可能性もあります」

選考期間の後ろ倒し、中小企業「困る」

   一方、震災を機に採用を強化する企業も。アイリスオーヤマは2012年卒予定の高校生30人を特別枠で採用。マツモトキヨシは内定取り消しにあった学生200人を追加採用するという。就活生としては期待したい動きだ。

   なお、震災に関連して中堅・中小企業が警戒しているのは、大手企業による「選考時期の変更」の動きだ。HRプロの調査でも36%の会社が被災地の状況を鑑み、「選考時期全体を遅らせることを検討」と回答している。

   被災地学生にとっては、選考期間の後ろ倒しや延長は歓迎できるが、大手以外の会社にとっては、選考期間が極端に限られるおそれもある。

   都内IT企業の人事担当者は「うちが内定を出しても、後から大手が出せばそちらに流れるので困る。辞退者が予想以上に増えるのでは。いつ内定を出せばよいのだろう」と浮かぬ顔だ。