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改革派官僚をクビにする、たったひとつの方法

   経産省が、自省出身の官僚である古賀茂明氏に退職勧奨したという。古賀さんというのは、以前から政府の公務員制度改革案を批判したり、最近では東電の処理プランに異を唱えていた“反骨の官僚”である。

   氏の論点は、常に省庁ではなく国民の目線に立ったものだった。雑誌やテレビでたびたび鋭い論点を披露していたが、とうとう虎の尻尾を踏んでしまったらしい。

   ただ、経産省には悪いが、日本では現状「お前にふさわしい仕事はないから」という理由ではクビにできない。なので、経産省は頑張って、古賀さんの給料に相応しい仕事を作ってあげるしかない。文句があるなら厚労省に言いなさい。

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さっさと公務員制度改革を実現すべし

   これと同じシチュエーションは、実は日本中の企業、あらゆる職場で日常的に発生している。日本企業における職能給というのは、担当する仕事内容に応じて上がったり下がったりはしない属人給なので、会社は各従業員の給料にふさわしい生産性の仕事を作って彼に与えないといけない。

   たとえば、年収1200万円の担当部長が1人余っているとすると、それだけのコストに見合う業務を与えないといけないわけだ。

   でも、そんなのは昔の計画経済と同じで、いくら本社の偉い人が鉛筆を舐めてみたところで上手くいくわけがない。つまり、多かれ少なかれ給料ぼったくり状態の人が発生してしまうというのが、日本のホワイトカラーの生産性が低い理由である。

   だから、日本経済の地力を高めるには、

「おまえに相応しい仕事がないから、よそで探して」

と言えるような流動的な労働市場を作った方が望ましいのだ。

   「そんなことをしたら、気骨ある古賀さんみたいな良識官僚がクビにされてしまうじゃないか!」と危惧する人がいるかもしれない。でも、大丈夫。

   古賀さんが天下り禁止を含めた公務員制度改革を提唱したことが、彼と霞が関とのバトルの発端である。流動的な労働市場を作れば、仕事のなくなった官僚を天下らせる必要がなくなるわけで、そもそも彼と霞が関が争う必要もなくなるはずだ。

   国民も、いつまでたっても天下りがなくならない理由について、少しは真剣に考えた方がいい。

   終身雇用を辞めろと言った反骨官僚が、終身雇用のせいで救われるというのも、何とも皮肉な話である。彼をクビにするには、彼の言う通りの政策を実現するしかない。

   というわけで、古賀さんは「自己都合退職」の書類にサインなどせず、今後も霞が関の御意見番として大いにメディアでご活躍いただきたい。日本が終身雇用をやめるその日までね。

城 繁幸

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