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大好きな「クリスマス督促」の季節がやってきた!

「ふふ……。今年もこの季節――、クリスマスがやってきましたか」

   街がイルミネーションで彩られ始めた12月初め、私はカレンダーを見つめながら、ニヤリと口の端を上げました。

「24日は土曜、25日は日曜。おっと23日も祝日で3連休かぁ。これは張り切って督促しなきゃいけませんねぇ、ふふふ……」

ひとりぼっちのOLには「書き入れ時」

「お客さま~、待ってて下さいね!」(イラスト:N本)
「お客さま~、待ってて下さいね!」(イラスト:N本)

   毎年、私は12月24日と25日は朝から晩まで出社して、いつもよりも気合を入れて督促をしているのです。

   それは決して、クリスマスを過ごしている幸せなカップルのみなさんに督促をすることで、クリスマスを一緒に過ごす人のいない寂しさを紛らわせているとか、憂さを晴らしているとかではありません。ええ、決して。

   なぜかというと、多くの会社の給料日が集中する毎月25日前後は、督促する者にとって大変重要な時期だからです。

   私たちが督促をするお客さまの中には、他社の返済も滞っている方が少なくありません。クレジットカードやキャッシングの延滞だけでなく、税金、家賃、公共料金など、様々なライバルが同じお客さまに入金のお願いをしています。

   そんな接戦の中では、とにかく他社よりも早くお客さまとコンタクトを取り、お客さまに収入があったら即座に入金をしていただかなければなりません。もし他社に後れを取ってしまうと、やっと電話に出てくれたお客さまに、

「お給料出たけど、××カードさんに先に払っちゃったから、もう来月まで払えないんですよね~」

と、けんもほろろに断られ、また1か月支払いを待たなければならなくなってしまうのです。

   さらに12月はボーナスが出る企業が多いため、通常よりも回収率がかなり良い傾向にあります。逆に月の後半になってしまうと、クリスマスや年末年始で手元の資金を使ってしまい、一気に回収率は鈍化します。年明けの1月は、1年でもっとも回収に手こずる月でもあります。

   つまり我々の業界ではクリスマスを境に、天国と地獄がキッパリと分かれてしまうのです。まだお客さまの手元に資金がある12月25日前後に、何としてでもお客さまと連絡を取り、確実に入金をしていただかなければならないのです。

せっかく周到な計画を練っていたのに…

   しかも、今年の24日、25日は土日。普段は会社勤めで連絡が取れないお客さまも電話に出て下さるので、平日よりも多く入金のお約束を取ることができます。

   さらに同僚たちも、クリスマスは家族や恋人と過ごすために休みをとる人が多いので、出社人数は少なめです。あえてこの日に出社すれば、いつもより多くの債権を回収でき、効率よく回収成績を残すことができます。

「ははははは!!クリスマス督促すばらしい!!待っていて下さいね、お客さま。やはりここは20代30代の、彼氏彼女のいそうな層から攻めるべきですよね(早く電話しないとお手元のお金使われてしまうからであって、決してひがみとかねたみからではありませんよ!)」

   そんな周到な計画を立て、クリスマス督促のスケジュールを練っていたその時。上司がひょこひょこと歩いてきて私の肩を叩きました。

「あ、エヌモトさん、人事異動による人員不足と節電の関係で、12月から土日祝日はコールセンターをお休みにして、カレンダー通りに営業にすることになったから。クリスマス、休めてよかったね!」

   パタリと、私の持っていた卓上カレンダーが机の上に落ちました。「えええええー!?」。

   ぽっかりと予定の空いてしまったクリスマス3連休を前に、私は涙目になりながら、去っていく上司の背中に向かって心の中で叫ぶしかありませんでした。

「ひとりにしないで……、仕事を、督促をさせて下さい~!!」

N本(えぬもと)

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