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明日クビになる営業マン、高く雇われる営業マン

   最近興味をそそられたレポートに、マンパワーグループの「人材不足調査」があります。それによると、先進国の中で人材不足を感じている企業の割合が最も高いのは日本で、実に8割。しかも最も「人材不足感のある職種」にあがったのが「営業職」だったのです。

   景気低迷が続く中でも、多くの企業が営業マンの採用を渇望しているという調査結果は、就職難の時代にあってちょっとした驚きでもあります。とはいえ「人材不足感」という言葉が表すように、単に頭数が足りないわけではないところが、頭の痛いところ。絶対数ではなく、雇用側のメガネに叶う営業マンが意外に少ないことを表わしていると理解しなくてはいけないでしょう。

「ネット通販と同じ営業マン」はいらない

企業側が人材不足感を感じている営業マンとは?
企業側が人材不足感を感じている営業マンとは?

   では、企業のメガネに叶う営業マンと、そうでない営業マンの違いは、どこにあるのでしょう。

   世はインターネット全盛時代で、販売チャネルとしての存在感も確立されて久しく、たいていのものはネット通販で手に入るのが現在の常識です。その事実をもって「今や人的営業は不要」と考える人も、一部にはいるようです。

   しかし、ネット販売の台頭ですべての営業マンが不要になる訳ではありません。購買者が自己のニーズに合わせて商品検索し、製品機能を知った上で価格比較をし、購入先を決めるインターネット通販。これに代替され不要になるのは「ネット通販と同じ営業マン」ということになります。

   すなわち、自社が売りたい商品を一方的にセールスするだけの「押し売り営業」や、「何かご用はありませんか?」とクライアントを訪問し、商品機能を説明して価格を提示するだけの「御用聞き営業」は、ネット販売への代替が可能な“企業のメガネに叶わない”営業マンであるのです。

   となると、企業側が人材不足感を感じている“メガネに叶う”営業マンは、ネット販売との代替が不可能な営業マンであるはずです。そんな営業マンの姿について、より具体的に考えてみましょう。

見えない購買意欲を開拓できる営業マンはモテる

   ネット販売を利用する購買者は、自分自身が何を欲しいのかある程度はっきりしている上に、購買意欲も高いという特徴があります。購買者のニーズありきでスタートするチャネルで、そもそも購買意欲のある人たちがメインターゲットとなります。

   逆に言えば、ニーズのない相手(正確にはニーズに気がついていない相手)には販売がしにくいのが、ネット販売の限界です。すなわち、購買意欲を開拓して販売実績につなげる部分は弱い訳です。

   しかしながら低成長時代の今、企業は営業活動以前から購買意欲を持っている人だけを相手にした「ニーズありきの商売」だけでは、とても成長戦略を描くことはできません。

   ですから、事前に購買意欲を持った相手にしか商売ができない営業マンは、次第にネット通販へ置き換わっていくのに対して、見えない購買意欲を開拓して実績を積み上げる営業マンは高い人件費を払ってでも欲しい、となるのです。

   では、いかにして見えない購買意欲を開拓するのか。これは優秀成績を収めた多くの営業マンが口を揃えるコツ、「とにかく聞き出すこと」に尽きるでしょう。

「ティーチング」ではなく「コーチング」を意識する

   彼らが事あるごとに話してくれる「聞き出す」ためのポイントは、売り手の論理でまくしたてたり、相手を誘導尋問的に取り込もうとするやり方では絶対にダメ、ということ。とりあえず、この点は押さえておきたいところです。

   この話は「コーチング」と「ティーチング」の関係にも似ています。営業におけるティーチング的やり方では、「あなたにはこういうニーズがあるんじゃない?」とか「あなたの欲しいモノはこれじゃない?」と相手に教える話の持っていき方となります。

   一方、コーチング的やり方では、教えることは一切せず、テーマに関して様々な質問を投げながら、相手に「自由に話をさせる」ことで、ニーズや欲しい商品の存在に気づかせるのです。

   「話をさせる」ことで購買意欲を開拓する、これこそがインターネット販売の限界を埋め合わせる存在として現在求められる「人的営業」であるのです。

   各業界とも不況対応下で一層のコスト削減、営業人員の大幅カットも予想されるところです。インターネットへの代替可能な営業マンとして切られるか、必要な営業マンとして渇望感をもって迎えられ、これまで以上に厚遇されるかは、あなたが見えない購買意欲を開拓できる営業マンになれるか否かにかかっているのではないかと思います。

※営業を中心としたお仕事の悩みについて、筆者がお答えします。

大関 暁夫

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