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代々木第二体育館を貸し切り! ボヤージュグループの「社内運動会」

   2012年6月22日(金)、台風5号の大雨をよそに、東京・代々木第二体育館には朝から熱気があふれていた。ITベンチャーのボヤージュグループが、東京オリンピックも行われたこの会場を貸し切って「社内運動会」を開いていたのだ。

   朝10時の開会式から午後5時の閉会式まで、そして夜には会社で打ち上げと、グループ社員全員が仕事そっちのけで、平日を丸々1日使うイベントである。全6チームで競い、優勝チームには20万円が贈呈されるというから気合いも入るというものだ。

「キング」率いる赤チームが綱引き連覇

6チームに分かれて綱引きを競うボヤージュグループの社員たち
6チームに分かれて綱引きを競うボヤージュグループの社員たち

   2006年から毎年開催している社内運動会は、2011年のECナビからの社名変更を機に「ボヤージュ・カップ」と名称が改められた。チームは所属部署とは関係なく割り振られ、原則としてメンバーは毎年変わらない。

   取材に訪れた午後3時、フロアでは綱引きが始まろうとしていた。各チームから15人が選抜され、残りのメンバーは応援に回っている。優勝候補は、ポイント交換サイト「PeX」で営業を担当する溝口哲也さんが所属する赤チームだ。

「我が社の綱引きキング、溝口さんが所属するチームは、綱引きで毎年1位を取っていて、今年も優勝を期待されているんです」(広報・江頭令子さん)

   赤チームは、本番2週間前からメンバーが1日に数回集まり、実戦さながらの練習をしていた。1回30分ほどだが、練習用の綱を使い、統一したフォームで引けているかチェックするなど厳しい指導が行われる。

   溝口さんは、日本綱引選手権大会の動画を見て「最新の勝てるコツ」をつかむなどしてノウハウを蓄積し、練習方法も毎年進化させて運動会に望んでいる。彼が所属するチームは、過去7回のうち6回で優勝を飾っている。

「綱の引き方の基本は、天井を見て引くことですが、私たちは独自にバージョンアップをさせています。説明資料や参考動画のURLを共有するだけでなく、実際の引き方を見ながら細かく指導することが大事ですね」

   結局、綱引きは見事赤チームが優勝を飾ったが、10人11脚やリレーなどの競技で勝ったオレンジチームに総合優勝をさらわれてしまった。

「ナナメのコミュニケーション」が仕事にも生きる

男女混合の10人11脚で、ゴールに駆け込む
男女混合の10人11脚で、ゴールに駆け込む

   社員が一丸となって熱心に取り組む運動会だが、最初のころは忙しい仕事の時間を割くことを反対する声も多く、社員の賛同をなかなか得られなかった。

   一方、会社としては、集団行動よりも個人行動を好む若い社員が多い中で、社員同士のコミュニケーションを活発にしたいという思いがあった。いまでは回を重ねるごとに、社員からも運動会の効果を実感する声が出てきたという。

「練習から本番まで積み上げられた一体感は、大きいですね。仕事で突発的なトラブルが起きたとき、他部署のキーマンにためらいなく連絡して迅速に対応できるのも、普段からのコミュニケーションがあるからなのかなと」(あるエンジニアの社員)

   各チームには、社長や役員、部長クラスの幹部から、新卒社員や中途入社組、内定者までもが割り振られる。そこでは、組織の上下関係はあまり感じられない。仕事とは別の側面で、人と人との交流が生まれる。

「同期のヨコ、組織のタテではない、ナナメの社内コミュニケーションが活性化しています。グループ社員は約300人にもなるので、一人ひとりの社員と触れ合えるのを一番喜んでいるのは、もしかすると社長なのかもしれません(笑)」(江頭さん)

   いまでは取引先が協賛してくれたり、他社が視察に訪れるなど、社外でも認知度が高まっている。社員にとっては、日頃の運動不足の解消にもなるし、役員クラスに顔を知ってもらえるチャンスにもなる。

   いまの若い人たちは、良好な人間関係の中で「気持ちよく働くこと」を重視する人が多い。遊びのようなコミュニケーションが、実は仕事に対するモチベーションにも大きく影響してくるような気がした。(池田園子