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若者にチャンスを与えない日本企業 「イチローを見習え!」

   米大リーグ、イチローの電撃移籍は、各方面で大きな話題となった。特に、チームの世代交代のために自分が去る決断をしたことと、強豪の人気球団という厳しい環境を次のチームに選んだことに、賞賛の声があがっている。

   ネットには「自分も見習いたい」という決意とともに、日本の政界や企業において「後進に道を譲る」「先輩が自らリスクをとって挑戦する」という美徳が廃れていることに不満を持つ書き込みが見られる。

「若手の出場機会を増やして欲しいとはさすが」

オフィス街はイチローの話題で持ちきり
オフィス街はイチローの話題で持ちきり

   2012年7月24日、日本時間の午前8時台にイチローの記者会見の様子がテレビで放映された。彼は、20代前半の選手が多いマリナーズに自分がいるべきではない、と考えたという。後進に道を譲りチャンスを与えたい、迷惑をかけたくない、という意味のようだ。

   また、自分自身も環境を変え、刺激を求めたいという強い思いが出てきたことも語られた。強豪チームに移籍することは名誉だが、成績を上げられなければ風当たりも強くなる。安易な気持ちでは決断できなかっただろう。

   そして、同午前11時からの対マリナーズ戦に、ヤンキースのユニフォームを着てスタメン出場。初打席でヒットを放ち、盗塁までしてみせた。この様子を見たネットユーザーは、その決断に驚きつつ、自分も見習いたいという気持ちを投稿している。

「つくづくイチローってすごいよね」
「イチローの気持ちの切り替えはすごい。昨日まで同じユニフォームを着てプレーしていたチームを今日は敵に回しプレーするなんて」
「私もイチローを見習って頑張ろうかな!!」

   これにあわせて、イチローのような潔い身の振り方を、上の世代の人たちにも見習って欲しいという書き込みも少なからず見られた。

「若手の出場機会を増やして欲しいと球団を去ったのはさすがだなぁ」
「今の団塊の世代にない考えを持ってるんだな」
「政界のイチローさんも見習っていただきたい」
「うちの会社の高齢者ども、イチローを見習え!!」

「上の世代の雇用を守る」採用抑制に批判も

   中央大学理工学部の竹内健教授は7月25日のブログで、イチローのヤンキース移籍に爽やかさを感じるとしながら、「日本の年功序列は、組織の新陳代謝を邪魔してないか」と批判している。

「会社の調子が悪くなれば、人件費を削るために、若手の採用を控える。今年などは、本当に就職が厳しく、学生たちは苦労しています。でも、会社としても、それでいいのか? 傾いてきた会社が、上の世代の雇用を守るために、若者の採用をしなくなっている。きっと、弱ってきた会社が、更に弱ることになるでしょう」

   大リーグと日本企業の大きな違いは、「実力主義」か否か。スポーツで勝つためには、合理的な判断が必要になるが、それが人材の「適材適所」を促している。しかし、日本の組織の新陳代謝は、実力を反映しない年功序列によって阻害されているということだ。

   ツイッターにも「企業でも役職に安住して、若手の成長を阻んでいるという話を良く耳にする。そういう人達は本当にイチローを見習って欲しい」と指摘する人がいた。

   イチローが大リーグで活躍しはじめたとき、「イチローみたいな人材が欲しい」「お前もイチローみたいに頑張れ」とハッパをかける上役がいたものだ。今度は「あなたがイチローを見習って後進に道を譲っては」と言い返してあげるといいのではないか。