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「ニート状態」の若者の就活を支援 リクルートが全国のNPOと連携

   文部科学省の「学校基本調査」(平成24年度、速報)によると、大学を卒業して進学も就職の準備もしていない「新卒ニート」状態の人が3万人規模にのぼるという。

   彼らの中には、社会人として働く力を持っているが、新卒時の「就活」に失敗したという意識が強く、なかなか次の一歩が踏み出せない人が存在する。しかし、働かない期間が延びれば延びるほど、さまざまな要因から就職が困難になっているのも事実だ。

   そんな「ニート状態」の若者を実際の就職につなげるプログラムを、リクルートがCSR活動の一環で日本全国のNPO法人と連携して展開している。

小さな成功体験を積み、応募に一歩踏み出す

NPOと連携したプログラムの様子。参加者同士の自主性を重んじた支援を行う
NPOと連携したプログラムの様子。参加者同士の自主性を重んじた支援を行う

   リクルートの既卒者支援策としては、すでに「ホンキの就職」というCSRプログラムが実績を上げているが、2012年7月からはこれをベースに「ニート状態」の若者向けに内容を一部調整し、NPO法人などの公益法人と連携して展開している。

   プログラム調整の前提として、参加者の現状を確認する必要がある。一番の特徴は、さまざまな理由で応募に踏み出せないこと。プログラム参加者の58%は、参加前の1か月に求人へ応募した件数は「0件」であった。

   その背景には、自己肯定感が低く、自分の「職務遂行能力」への自信が持てないことがある。過去の失敗経験や引きこもり期間の存在により、「自分は評価される点が何もない」と強く思い込んでいるケースが多いという。

   また、「対人恐怖心」が非常に強いこともある。もともと人とのコミュニケーションが苦手だったが、人間関係での失敗経験によって対人恐怖心が強くなった人もいた。

   プログラムでは、自分が得意なことを振り返ることで、最初に受講者の良い点を自覚させ、自信を持たせることがポイントとなる。さらに、グループワークを通した役割分担の中で、小さな成功体験を積める仕掛けを作り、自己肯定感を回復させる支援を行う。

   進め方は、同じ悩みを持つ多くの人たちと一緒に「仲間からの刺激」をお互いに与え合っていけることを心がける。この点は、連携するNPOからも高い評価を得ている。

「リクルートの独自の知見である『グループダイナミクス』を生かしたプログラムの効果を感じています。従来のキャリアカウンセリングは1対1のサポートが多かったのですが、受講者からも『支えあう仲間ができて心強かった』という声が聞かれています」(NPO法人「育て上げ」ネット理事長・工藤啓氏)

参加者の自主性を重んじる進め方に強み

   現在リクルートと提携してプログラムを展開する公益法人は、全国14都道府県の12団体。支援拠点は16か所に至っている。10月からは連携を拡大し、18都道府県の21団体、28か所となる予定だ。

   連携する際にはリクルートの独自の知見を活かした「ホンキの就職」プログラムを無償で提供し、NPO職員をプログラム運営ができるファシリテーターとして養成する支援まで行っている。

   プログラムの進め方は、教師のような「指導・介入型」ではなく、参加者同士の自主性を重んじて中立的なポジションから支援を行う「ファシリテート型」を採用している。

   リクルートのファシリテーターが実施した2012年4月から7月までの4か月で、135人が参加。受講後1か月以内に内定を獲得した人は34%となり、正社員採用された人も26%となった。

   この成果の背景には、「1件以上の応募ができるようになった」人が79%にまで増えたことがある。参加前の1か月間に求人へ応募した数が「0件」という人が58%だったことを考えると、成果は小さくないだろう。

   プログラム参加を通じて「自分も求人に応募できるかも」「自分も面接で発言していいんだ」と考えられるようになり、行動を変えることができる人が一人でも増えて欲しいものだ。