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「尋常でない努力」で結果を出す人を、会社はホンネで評価していない

   休みを一切取らずに365日仕事をしている人に、皆さんはなりたいですか? 1日16時間の勤務を何年も続けている人を、素晴らしいと思いますか?

   尋常でない頑張りをする人は、確かに「結果を出す」確率が高いです。会社は出した業績に対して評価するので、高いボーナスを支給することもあるでしょう。

   それでも、こういった人は「なりたいロールモデル」と必ずしも見なされません。人並み外れた頑張りをすることで結果を出している人や、血のにじむ努力をし続けている人を、世のビジネスパーソンは「ヒーロー」とは言わないのです。

真のヒーローは「普通にできる努力で結果を出している人」

   リクルートに勤務していた当時、「寝ないで頑張ればいい」と言って会社の地下にあるカプセルホテルのような施設に泊まり、普通の人の何倍も働いている人がいました。

   しかし会社は、周囲から「そこまでしてあんな風になりたくない」と思われている人に増えて欲しいとは考えません。なぜなら、経営上のリスクがあるからです。

   普通の人間ができる範疇を超えた努力で結果を出している人は、一時は好調に見えますが、しばらくすると身体を壊して破綻するケースが多いものです。結局、会社や周りに迷惑をかけてしまいます。

   こういう人は総じて負けん気が強く、成果のためには手段を選ばない傾向にあります。他人の足を引っ張ってでも結果を出す人がいると、会社全体で見るとプラスマイナスがゼロになります。むしろ、周りの人のモチベーションを下げてマイナスになる恐れもあります。

   非常に高いテンションで人の3倍ぐらい会社を回り、高い業績を出しているトップセールスでも、3年くらいすると身体を壊すか、壊さないまでも営業という仕事がイヤになって辞めてしまいます。ワークライフバランスを崩し、限界を超えてまで働き続けると、結局は仕事が続けられなくなってしまうのです。

   では、会社や同僚は、どういう人を「理想」だと思うのか? それは、普通の人間ができる範囲内の努力をして結果を出している人です。ワークライフバランスが取れた状態で結果を出している人であれば、「頑張ればあの人になれる」と誰もが思えます。そういう人に、多くの人は憧れるものなのです。

   なぜこのようなことが起こるのか。それは「競争の前提条件を変えて勝っても尊敬されない」という理由があるからです。

前提条件を自分だけ変えて勝ってもしようがない

   組織の中の会社員は、同じ条件の中で戦って差が出るから、評価が公正になるわけです。しかし、一人だけ寝ないでやっている人がいたりすると、前提条件が違ってきてしまいます。こういう人は、結果が出ていても必ずしも尊敬されません。

   頑張りと逆方向、つまり尋常ではないラクな方法でも同じです。私の知人の男性で、実家がお金持ちで、父親が非常に人脈のある人がいます。その人は、同僚たちが見込み顧客を探して一生懸命アポイントを取っている時に、

「お父さん、今度、部品メーカーに行きたいんだけど」

と紹介を頼んで、仕事をバンバン取っていました。その彼が高い業績を上げてトップセールスで表彰されている時の周りの目は、何とも言えないものがあります。部署全体の士気も下がります。

   寝ないで仕事をする人も、ほかの人と前提条件を変えて勝つやり方をとっている点では、父親のコネを使う人と変わらず、反面教師になってしまいます。周りから「そこまでしてなりたくない」と思われるようなやり方をしないことが大事だと私は思います。

   理想は、他人と同じ前提条件の中で、よりよい方法を工夫して成果を上げることです。誰にも尊敬されない方法で勝ち得たものは、何の意味もありません。身体を壊し、自分の仕事が嫌いにならないためにも、せっかく頑張ったのに「会社からいつまでも評価されない人」にならないためにも、こういう視点は必要ではないでしょうか。(高城幸司)

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