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がん患者とソーシャルメディア 広がる「励まし」の構造とは

   ここ数年におけるインターネットのトレンドといえば、ソーシャルメディアの普及だろう。これによりインターネットは、誰もが手軽に情報を発信できるツールとなった。

   ソーシャルメディアの普及は、がん領域においても大きな効果をもたらしている。それに伴ない、ひと昔前には実現しなかった新しい「励まし」の構造が生まれてきた。

ソーシャルメディアが可能にした、がん患者の情報交換

画像はCancerNetJapanのfacebookページ<br/>ソーシャルメディアによるつながりが孤独感を軽減する
画像はCancerNetJapanのfacebookページ
ソーシャルメディアによるつながりが孤独感を軽減する

   ソーシャルメディアの代表として挙げられるのが、フェイスブックやツイッターなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)。共通の趣味やプロフィールを元にコミュニティを作り、情報交換や親交を深めていく図式は、実はがん患者にとっても貴重なコミュニケーションの手段となっている。

   たとえば、「がん患者団体支援機構」 や「キャンサーネットジャパン」 などの団体が設けているフェイスブックのコミュニティページでは、頻繁に患者同士の情報交換が行われており、体験や知識が共有されている。

   その中でも、発症例の少ないがんを抱える患者にとって、同じ病状の人たちと交流できることの意味は計り知れない。たとえ同じ悩みを持つ患者が身近にいなくても、彼らにしか分からない不安や孤独感を癒やしたり、情報を与えあったりする存在をネットワーク上で探すことができる。

   もちろん、顔の見えないコミュニケーションにはリスクも存在するが、反面、自分の本音を言いやすいという声もある。患者同士が不安をケアする方法として、SNSは重要度を増しているといえるだろう。

がん患者向けソーシャルメディアサイトも登場

   フェイスブックなどの中でがん患者が交流する一方、がん患者向けに作られた独自のソーシャルメディアも海外を中心に増えてきている。

   アメリカで生まれたSNS「I Had Cancer 」は、がん患者や治療者、そして患者の家族・友人が登録できるサイトで、会員たちは入会時に作ったプロフィールを元に、自分の体験や情報を共有し合う。がんの種類や発病年齢などで検索可能なため、自分と似た経験のある患者を容易に見つけられる。

    さらに、世代というくくりを設けたサイトもあり、たとえば「Stupid Cancer」 は40代未満のがん患者を支援。また、女性特有のがん専門サイト「Breast Friends 」や、結腸がんに絞った「The Colon Club」 など、海外におけるがん患者向けのソーシャルメディアは多様な広がりを見せている。

   日本でもこの動きが出てきており、「ディペックス・ジャパン」では、おもに乳がんや前立腺がんを体験した人にインタビュー。その時の迷いや葛藤、苦しみなどを語ったインタビュー動画を公開している。このような“がん専門”のソーシャルメディアは、医療の専門家がサイト運営をバックアップしていることも多く、より信頼できる情報を得やすいメリットがある。

   また、近年、がん予防の啓発にもソーシャルメディアが利用されている。GEヘルスケアでは2011年、Twitterを使った「Get Fit」キャンペーン を実施。がんの発病リスクを減らすと思われる健康法を、世界各国から“つぶやき”で募集するなどして、人々のがん予防への意識を高めることを狙っている。

   今後も、ソーシャルメディアは様々な形でがんに関わっていくことが予想される。メディアを提供する側も、利用する側も上手に利用していけば、ソーシャルメディアは患者の孤独や不安を軽減する貴重なツールになるはずだ。(有井太郎)