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ヤフーに「待遇改善」の動き 人材獲得競争の激化が背景に

   ヤフーが、決算説明会で「社員の待遇改善」に言及して話題となっている。社員一人あたり営業利益の伸びに応じた「報酬増加」や、「社内カフェ、社員食堂」の創設、最長1年間の「サバティカル休暇」制度の新設など、社員にとってうれしい施策が並んでいる。

   ヤフーは「Yahoo!JAPAN」のサービス開始以来、16期連続の増収増益を果たす一方で、社員からは「会社の収益性の高さに反して報酬が低い」という不満の声があがっていた。

でも「自分の席がなくなる」のが怖くて休めない?

米ヤフーでは母親となる社員が16週の有給休暇が得られることに
米ヤフーでは母親となる社員が16週の有給休暇が得られることに

   ネットでは、充電休暇ともいえる「サバティカル休暇」に注目する人が多い。勤続年数が長い社員に限り、最長1年間の無給休暇を取得でき、過ごし方は自由。会社は「リフレッシュして発想力を高める機会にしてもらう」としている。

   ヤフー宮坂社長は「働く人が幸せな会社をつくる」と宣言しており、優秀な人材確保につなげる目的があるようだ。給与がいくら高くても、余裕のない働き方をさせられて消耗するような会社には入りたくないだろう。

   IT企業といえば、エネルギッシュな若者が低賃金で寝る間を惜しんで働くイメージを持つ人もいるだろうが、そんな時代はもう終わったのかもしれない。産業としての規模が大きくなり、成熟が進んでいる。

   一方で「サバティカル休暇」のような余裕のある制度は、よほど自分の能力に自信のある人しか申請できないのではないかと危惧する人もいる。

「帰ってきてもオメーの席ねぇから!!! ってなりそうで、使う人なんて居ないんじゃないか」

   福利厚生の充実は、米ヤフーでも発表されている。社員が入社5年を経過すると、最大8週間の無給休暇を付与。初めて親になった社員を対象に、日常生活に必要な費用を500ドルまで肩代わりする制度が新設された。

   母親となる社員には、妊娠後8週間の有給休暇を新たに付与。これまでは子どもの出生時に男女かかわらず最長8週間の有給休暇を与えているが、これに上乗せする形となる。ここまで充実している会社は、日本にはまだまだ見られない。

米ヤフーは「在宅勤務禁止」の引き締めも

   米ヤフーの福利厚生策について、赤ちゃんへのプレゼントだけでなく、新しく飼い始めたペットに対するプレゼント制度を設けたとする報道もある。子どもを持たない社員に対し、公平性を期するための細やかな気遣いなのかもしれない。

   その他、最近ではグーグルなどにならい、オフィスで無料の食事を提供しはじめたようだ。これで福利厚生策を他のIT大手の水準に近づいたが、母親に最大22週間の有給産休を与える太っ腹なグーグルには及ばない部分もある。

   ただし会社も、社員にアメばかり与えていては成り立たない。米ヤフーでは、在宅勤務者のあまりの多さに閉口した人事責任者が、「在宅勤務は往々にして仕事のスピードや質が犠牲にされがち」であり、「ヤフーとしてひとつになる」ために出社するよう要求し、引き締めを行っている。

   このような要求は、働き方に関する大きな流れに反すると批判もあがっているが、米不動産王のドナルド・トランプ氏などからは「ヤフーの要求は筋が通っている」として賛同と擁護の声があがっているのも事実だ。グローバル競争には「アメとムチ」の両方が必要ということだろう。