J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「学年ビリの子を慶応に」 学習塾経営者の書き込みに書籍化オファー相次ぐ

   学習塾の経営者が生徒の頑張りを打ち明け話としてネットに書いたところ、多くのアクセスを集めて書籍化のオファーが相次いだ――。そんなエピソードが話題となっている。

   話のきっかけは、STORYS.JPというサイトに書き込まれた「学年でビリだったギャルが、1年で偏差値を40あげて日本でトップの私立大学、慶應大学に現役で合格した話」という書き込みだ。筆者は名古屋市で学習塾を経営している坪田信貴氏。

   塾のウェブサイトには「底辺にいる子をエリートに育てること」を目的としていると書かれており、「学年でビリだった…」は、まさにそれをなぞるようなストーリーである。

読者から大感動のコメント「素直って一番の才能」

   物語は、某私立女子高に通う金髪の女の子が、高校2年から勉強を始めて慶応義塾大学に合格するというもの。塾を訪れた当時の成績は、学年でビリ。偏差値は30以下だった。

   聖徳太子を「せいとくたこ」と読んだり、平安京を「人の名前」と思っていたり、日本地図を「一つの島」で書いたり。「strong」の意味が分からないばかりか、東西南北や九九も分からなかったという。にわかには信じがたいが、もし本当なら学力は中学生未満だ。

   しかし、学校の授業を無視して自分の勉強に専念し、「マンガ日本の歴史」を全巻読破するなどして、最終的には慶大と明大、関西学院大に合格したという。この話を読んだ人たちからは、感動の声が上がっている。

「読み入ってしまいました!諦めずにやり切り、その生徒の可能性を引き出すことができて素敵だなと思いました」
「素直って一番の才能だと思います(^o^)v」

   この記事には数日で20万ものアクセスが集まり、フェイスブックの「いいね!」が7000以上、ツイッター投稿も1000以上にのぼっており、大半のコメントは絶賛だ。

   一方で「塾の宣伝じゃん」「こんな子ホントに実在するの?」というツッコミもあり、NAVERまとめで「記事をアップしたら24時間以内に複数の出版社からオファーがきた舞台裏」を作る手際が良すぎると揶揄する人も。しかし、塾の実名を明かしてウソを書くのは危険すぎるだろう。

   「いつか自分の本を出したい」「本を出して自分の仕事をPRしたい」と考えている人には、原稿を出版社に持ち込んで売り込むよりも、ネット上のこういう流れを利用した方がいい条件で出版ができる時代のかもしれない。

塾講師「九九できなくても慶応に入れる」

   ただ、教育業界の関係者にこの物語を読んでもらうと、思いのほか冷ややかな反応が返ってきた。ある学習塾講師は、慶応合格という結果は素晴らしいが、本人が本気を出せば成績が1年程度で急上昇する生徒はよく見られるという。

「学年ビリといっても、私立中学受験で合格した実績があるのですから、公立高の底辺学生とはレベルが違いますよ。元々まったく勉強せずにビリなので、3か月程度勉強すれば偏差値は確実に上がります。正直言って『不可能』とか『限りなく難しい』を強調する記述が多すぎるという印象を受けました」

   彼女が通っていた高校は、実は中高一貫の地域トップ女子校のようであり、地頭はよかったようだ。彼女が合格した私大文系学部の試験は、英語と国語、日本史のみ。英語の得点が占める割合がかなり高く、数学はないので「英語さえやれば、九九ができなくても慶応入学には関係ない」らしい。

   書き込みの中にも記述模擬試験の結果が出ており、国語の偏差値は40台だが、英語は70を超えている。ただ、具体的にどのような勉強法で成績を上げたかについては書かれていない。

   今どきの学生の学力は、かなり低くなっているという指摘もある。「今でしょ」で有名な予備校講師の林修氏もインタビュー記事の中で「平均でいうと、明らかに落ちています」「東大でも、下のほうはかなり厳しく、大学側も危機感を持っている」と明かしている。

   少子化で学生数は減っているのに、大学の定員はそれほど減っていないためだが、もしかすると「こういう子でも少し勉強すれば慶応に入れる時代になった」というエピソードとして読んだ方がよいのだろうか。